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私のてしごと。

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私の作っている、ちょっと変わった竹工芸品。 製作と研究の記録。どなたでも、ごいっしょしませんか。
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流せ!竹 DE そうめん!!

流せ!竹 DE そうめん!!

春先、竹を割っているところを興味津々に覗きにきた子どもたちに、「じゃあ今年の夏はみんなで流しそうめん、する?」と言って約束したのが事の発端だった。

私が思った以上に子どもたちは楽しみにしてくれていたのを知ったのは夏の始め頃だった。

春の頃とちがいコロナの状況は悪化していたから、本当にやるかどうか悩んだが、幸いに子どもたちは3兄弟。同じ家族であれば危険は小さいだろう。

そして、やるならとことん

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おかえりじいちゃん、私の灯りが見えましたか。

おかえりじいちゃん、私の灯りが見えましたか。

じいちゃんの初盆が終わり、茄子の牛の背後に蝉時雨が響く。

やっぱり行くことはできなかったが、あきらめの悪い孫・遊布野はこの半年間、ひそかに頑張っていたことがあった。

話が変わるようで変わらないのだが、提灯は何でできていると思う?

そう、竹でできている。

はじめてこちらに帰ってくるじいちゃんのために灯す初盆の提灯を、作ろうと思ったのである。

泣き虫なじいちゃんを、さらに泣かせる気満々の孫の

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そろそろ梅干しを干さねばならぬ。

そろそろ梅干しを干さねばならぬ。

梅干しを干すのに必要なザルを、作ろうと思って竹を入手した。 
そろそろ作らないと、せっかく漬かった梅たちを天日に干してやれない。

よし、やろう。

竹は丸竹のままなので、パッカンと割るところからスタートである。

ちなみに六つ目編み以外の編み方で、いつもの籠以外のものを作るのは初めて。
私もドキドキしてる。

ちなみに今回はザルを作るという目的は達成するものの、ものづくりとしては失敗するので(先

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竹のような生き方と、竹と生きる生き方。

竹のような生き方と、竹と生きる生き方。

竹のように生きたいと思っている。

曲がっても割れても折れない。
濡れても滲みない。
傷ついても質が落ちない。

どれだけ割いても剥いでも、編んだり組んだりすれば強い。

見てもよし香りもよし食べてもよし、あの手この手で人を楽しませる。

そして、一本通った筋を通す。
その戦意に沿って、清々しい音を立てパキンと割れる。

竹のような人間でありたいと思う。

だから、そう言ってもらえたときは嬉しかっ

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はじめの形、に触れること。

はじめの形、に触れること。

さて、私の作る竹籠のひごはとても薄いために、節越え線引きという器具を使って厚みを減らしている。だいたい0.2ミリくらいまで薄くしなければならないのだが、ひごが乾燥しているのか、刃の切れ味が落ちてきているのか、ちょっとうまくいかないことが重なった。

薄くできないと作業を進めることができないため、少し焦る。

そんなときに思い出したのが、関連文書の史料の中にあった絵図だ。膝に置いたひごの上に刃物を当

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乾燥が大敵なのは竹も人間も変わらんねという。

乾燥が大敵なのは竹も人間も変わらんねという。

私の竹ひご作りは時間、もとい乾燥との勝負である。乾燥と勝負なのは竹も人間も変わらんのか…。
 
そこそこの厚みがあるひごならばそれほど心配はいらないが、0.2ミリという薄さの竹だ。
 
乾燥させてしまうと折れやすくなる。
 
なので、編む際も常に霧吹きで水をかけ続ける。こんなふうにして編む籠はほかにもあるのだろうか。
 
そして今、できあがりつつあるひごは水に含浸してある。これをもう少し厚みを減ら

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「私にしかできないこと」と「伝わり伝え、積み上げていくこと」について。

「私にしかできないこと」と「伝わり伝え、積み上げていくこと」について。

「自分にしかできないこと」はそのまま、自分の生まれた意味や、価値と呼ばれるものに直結させやすい。そして、お金に直結しやすいものでもある。

ここまでに世界が近く、誰が何をしているかを知ることが受動的なままでもできるようになった、あるいは嫌でも耳に入ってしまうようになった今の社会では、「ほかの人にはできないこと」に、自分の価値のようなものを見出そうとするのは当然のことなのかもしれない。

でも伝統工

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家の中で竹を編めるようにしようと思い立ってみた

家の中で竹を編めるようにしようと思い立ってみた

家の中で竹籠作りの作業ができたら、さぞいろいろと楽になるだろうなア、と思ったのがことの発端である。  

基本的に私の作業は、玄関出たとこのプチ庭みたいなところでやっている。 
奥まっているので通りからは見えないが、ご近所からは丸見えである。 

「それは何?」とか「またやってるね!」とかのお声をいただき、今では郵便配達のおっちゃんとも立ち話(私は座り話)をする仲に。 

そんな中で作っているのも

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ミッション・0.325mmに竹を割れ!

ミッション・0.325mmに竹を割れ!

さあ、いよいよあの三脚を使ってみよう。 

最終的につくりたい竹ひごはこちら。  

今は四つ又に割る前のものが必要数の半分できている状況だ。 

そちらはおいおい進めていくとして、ここでひごができるまでの過程を、とりたての写真でご紹介しようと思う。

まずは丸竹を半分にする工程。「花入れ」と呼ばれる。 
ナタの元を竹の手前に当てて、コンッと切り込みを入れる。 

そしてナタの末を竹の反対側に渡し

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竹籠作りの強力な助っ人参上

竹籠作りの強力な助っ人参上

今後の竹籠情報の発信に必要不可欠になる(であろうと確信したい)道具が我が家にやってきた。

その名も三脚。

よく写真撮影に使うあれである。
小さいくせにカメラにもスマホにも対応しているニクいやつである。

なぜこれが必要かと言うと、人の手を借りずに竹を割ったり編んだりしている手元が撮影できるからである。
涙が出るほどありがたい秘密道具。

今まで使ってなかったのかって?
いや自分でもそう思う。変

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この籠、なんの籠??

この籠、なんの籠??

秋の虫の鳴き声に耳を澄ませたのは、いつの時代の人々も変わらない。

今回は私の作っている竹籠が何に使われたのかをご紹介したいと思う。 

この丸い形状からは想像が難しいかもしれないけれど、この籠は「虫籠」である。

竹でできた虫籠はよく見られるが、おそらくほとんどが四角い形をしていて、木枠に縦に丸い竹ひごを嵌め込んだものがメジャーだと思う。
どちらかといえば、鳥籠を想像してもらった方がよいかもしれ

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竹を切る、と言うだけなら簡単なのに。

竹を切る、と言うだけなら簡単なのに。

竹屋さんに竹を買いに行ってきた。 

「この辺が太くて長いとこやから、この辺からいくつか取り。」 

と示されたのは、6.7メーターはあろうかという長ーい青竹。 
おそらく職人さんたちにとっては長くも、おそらく重くもない長さの竹だが、私にとってはラスボスサイズである。 

竹の節は根本は短く、先にゆくと長くなり、まただんだんと短くなっていく。 

竹の根本をモト、先をスエと呼ぶ。

私の籠に竹の太

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物を作る技術は、生きる技術である。

物を作る技術は、生きる技術である。

それを作っていたのはプロでも職人でもなかった。

昔の人々が持っていて、今の私たちにはないものは何だろう。
竹籠について思いを巡らすとき、いつもそう思う。

私の作っている竹籠は、京都のとある神社から朝廷に献上されていた品物だ。
作っていたのはその神社の社家の、女性や子供たちである。

この籠の大きな特徴が2つある。

ひとつは、籠を編む際の編み型に使っているのが、ほかの工芸品の道具を改造したもの

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新しい技法、アップデート

新しい技法、アップデート

今日は新しく、竹のもみ割りを教えていただいた。

竹の先端に細かく切り込みを入れて、手で左右に竹を折り曲げながら、揉みほぐすように割れを広げていく。
 
下の写真で言うと、右手のあたりまでが何本にも分かれて割れている。

この技法は茶筅などにも使われている。
 
縦に繊維が走っているからできることである。

私は今まで自分の籠を作る際に、竹ひごを一本ずつ測って割っていた。その方が幅をしっかりと測り

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