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気ままな読書日記

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ジャンル関係なく、気ままに本の感想を書いていきます。
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2022年5月の記事一覧

山本康正、ジェリー・チー『お金の未来』講談社現代新書

山本康正、ジェリー・チー『お金の未来』講談社現代新書

ビットコイン、暗号資産という言葉を知っている人は多いものの、実際にそれに触れたことがない人が多いと思われる。詳しい説明をできる人はさらに少ないと思われる。本書は、ビットコインを始めとする暗号資産や、NFTなどについて対話形式でわかりやすく解説した本である。

暗号資産のメリットは数秒で決済ができ、また匿名でできることにあるという。でもいったん成立した取引は犯罪に関係していても絶対に取消できない。

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風間直樹、井艸恵美、辻麻梨子『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』東洋経済新報社

風間直樹、井艸恵美、辻麻梨子『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』東洋経済新報社

精神疾患の患者数は日本中で400万人を超えているという。その中で入院患者数は28万人、精神病床は34万床あり、驚くことに世界の5分の1を占める。

精神病院の実態に調査報道部の記者3名で取り組んだ現実のレポートであり、労作である。日本の精神医療の深い闇を明らかにする。

精神保健福祉法が定める強制入院に「医療保護入院」がある。本人が同意しなくても、家族など1人の同意に加え、1人の精神保健指定医の診

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山根節、牟田陽子『なぜ日本からGAFAは生まれないのか』光文社新書

山根節、牟田陽子『なぜ日本からGAFAは生まれないのか』光文社新書

ナイキは、1964年の東京オリンピックの年、アシックスの米国輸入総代理店として誕生した。しかし、2021年の東京オリンピックの陸上競技全般のメダリスト114人のうちナイキの靴を履いていた選手は73人、アシックスの靴を履いていた選手はたった3人であった。

アシックスの鬼塚氏は「ナイキは商社、アシックスはメーカー」と言った。だが、アシックスは製品を作っているとすれば、ナイキは精神世界を作った。「自分

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佐藤綾子『10秒で好かれるひとこと 嫌われるひとこと』ディスカヴァー・トウエンティワン

佐藤綾子『10秒で好かれるひとこと 嫌われるひとこと』ディスカヴァー・トウエンティワン

最初の10秒のひとこと、フレーズで、自分の魅力を伝え、相手を動かすことができると聞けば、是非ともそのようなスキルを磨きたいと思う。ちょっとしたひとことで、相手に誤解を与えたり、関係がうまくいかなくなることを経験したことがあれば、なおさらである。

様々のシーンについて、わるい言い方と、よい言い方の両方を掲げて説明しているので、大変わかりやすい。また、各章ごとにルールを上げている。このルールはいわば

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Graham Pullin『デザインと障害が出会うとき』オライリー・ジャパン(オーム社)

Graham Pullin『デザインと障害が出会うとき』オライリー・ジャパン(オーム社)

本書は、2009年に出版された『Design Meets Disability』を翻訳したもので、デザイナーが義肢の制作に取り組んだらどうなるかという、当時としては挑戦的なプロジェクトにおける試行錯誤の思考記録とも言える。また、本書の後半は、著名なプロダクトデザイナーたちが障害のプロダクトに出会うまたは出会ったらということで書かれている。

なお、著者は、人を第一に考えるため「障害者」(disab

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深井龍之介『世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する 歴史思考』ダイヤモンド社

深井龍之介『世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する 歴史思考』ダイヤモンド社

著者は、ポッドキャスト「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」を配信しているから知っている人もいると思う。本書では、歴史上の人物を取り上げることにより、「当たり前」と思っていることについて疑うことを勧める。

歴史を通して、自分を取り巻く状況を一歩引いて、客観的に考えることにより、自分を苦しめている「当たり前」が当たり前でないことに気づき、目の前の悩みから解放される。著者は、これを「歴史思考」と呼ぶ。

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田原総一朗『堂々と老いる』毎日新聞出版

田原総一朗『堂々と老いる』毎日新聞出版

テレビでおなじみの田原総一朗氏が、「老い」について真っ正面から取り組んだエッセイである。今まで「老い」について取り組んだことがなかった。87歳にして初挑戦とのことである。

心身とも健康でいられることが絶対条件であると言う。田原氏は、何度も病気を経験しているので、こんなに生きられるとは思っていなかったそうだ。大学時代に十二指腸潰瘍、42歳でフリーランスになったとき、文字が読めなくなるという謎の症状

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武井勇樹『60分でわかる!メタバース超入門』技術評論社

武井勇樹『60分でわかる!メタバース超入門』技術評論社

フェイスブックが社名をメタに変更するとの報道により、初めてメタバースという言葉を聞いたように思われる。メタバースという言葉が注目されるようになったのは2021年後半からだという。

ではメタバースとは何だろうか。バーチャルリアリティと、どう違うのだろうか。仮想空間でアバターになって活動することなのだろうか。識者の中には、今あるゲームや「セカンドライフ」という仮想空間の世界を引き合いに出して、あまり

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山竹伸二『共感の正体 つながりを生むのか、苦しみをもたらすのか』河出書房新社

世界は共感であふれているかもしれない。共感があってこそ、相手とつながっているという安心感がある。苦しいことに共感されるだけで、その苦しみが緩和する。また、相手に共感することで、相手のことがわかる感じがする。今、共感ブームがやってきている。ビジネスの領域でも共感力が重視されている。

現代社会は共感力を求めている。共感できない人間は批判の対象となりやすい。しかし、すべてに共感ができない以上、無理をし

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