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深井龍之介『世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する 歴史思考』ダイヤモンド社

著者は、ポッドキャスト「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」を配信しているから知っている人もいると思う。本書では、歴史上の人物を取り上げることにより、「当たり前」と思っていることについて疑うことを勧める。

歴史を通して、自分を取り巻く状況を一歩引いて、客観的に考えることにより、自分を苦しめている「当たり前」が当たり前でないことに気づき、目の前の悩みから解放される。著者は、これを「歴史思考」と呼ぶ。

「当たり前」から外れることからくる悩みは、社会にある常識や価値観が原因であり、それが当たり前でないと分かると、苦しめる悩みの前提が崩れて楽になる。同性愛も、ユダヤ教とキリスト教の影響で否定的となった。「稼ぐ人が偉い」は近現代の資本主義社会の中だけで通じる価値観であり、日本の戦国時代は命の価値は非常に低かった。

歴史から価値観に絶対はないことが分かるが、価値観は、人にモチベーションを授けてくれるものでもある。悩みの直面したときは、「古典を学ぶ」ことがオススメと言う。大半の悩みは古代の人が考え尽くしている。自分が考えるようなことは、ほかの人もすでに思いついている。

古典を読めば、過去の天才たちの頭を借りて、自分の課題や悩みに向き合うことができる。過去の偉人と社会が違っていても、比較対象を提供してくれる。悩みの解決策だけでなく、悩みそのものが消えていく。特定の価値観から自由になる「メタ認知」を推奨するが、それは特定の「私」から自由になるゴーダマ(釈迦)の「悟り」とも通じると言う。

中国は中央集権国家であったから強かった。中国唯一の女帝皇帝である武則天が唐を強くした。世襲貴族を追放して実力主義的な人材登用システム「科挙」を採用した。しかし、個人が経済活動をする余地がほとんどなく資本主義が生れず、技術革新も遅れて欧米列強にやられてしまった。未来のことは誰にも分からない。

生き方を選ばないといけない時代は、特定の価値観に依存しないことで楽になる。自分の価値観だけででなく、ほかの価値観もあることを認めることが、現代において生きるヒントになると思った。


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