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世界の美味しい月

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世界の片隅であなたが味わう美味しい月の物語
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#新しいお月見

満月の夜は、"一千億人分の一"の孤独と奇跡をかみしめて

満月の夜は、"一千億人分の一"の孤独と奇跡をかみしめて

例えば、今朝読んだ新聞を思い出してみる。

それは、記者が「過去から現在に至る人類の総数」について読者から質問をされたが、答えがわからず頭を悩ませた結果、著名な本から引用した、という内容だった。

〈時のあけぼの以来、およそ一千億の人間が地球上に足跡を印した〉とある。数字の当否は見当もつかない。

勿論前後には色々書いてあったのだが、最近特にポンコツになった頭で明確に思い出せるのはこの一文くらい。

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祖母と見た月を今でも覚えている

祖母と見た月を今でも覚えている

祖母と見た月を今でも覚えている。

祖母は行事を大切にする人だった。
毎日仏さまを掃除してお花を生けていたし、神棚の榊もかえていた。
お盆になれば潜りに行ってサザエやアワビを採ってお供えしていたし、仏さまと無縁さまに供えられる御膳は手作りのお供物がきれいに並べられ、それは小さくて可愛いおままごとセットのようだった。
お正月、節分、雛祭り、端午の節句、夏越しの大祓、七夕、お彼岸、大晦日。

我が家の

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美味しい月が描けるまで

美味しい月が描けるまで

9/22(火)に発表された私設賞「お月見 コンテスト」
塩梅かもめさんの作品が大賞に相当する満月賞を受賞されました。この作品、グループ参加という変わったカタチなんですね。(詳しくはコチラ)

ぼくはグループ参加のエッセイ投稿とは別に、トップ画作りにも関わりました。今回はその制作過程を書こうと思います。



かもめさんからもらったオーダーは、「食」「月」「世界・宇宙の広がり」をイメージできるよう

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受賞&ZOOM&…え?!のお知らせ

受賞&ZOOM&…え?!のお知らせ

『世界の美味しい月』企画と称してグループ参加しました渥美まいこさんが提唱される新しいお月見プロジェクトに伴う、「新しいお月見コンテスト」の結果が発表されました。

そして気になる結果はというと……。

応募総数60作品以上あった中から見事、満月賞をいただきました。

みんなで受賞したみんなの満月賞です。
渥美さんからご連絡をいただき、zoomを使ってのオンライン発表でしたが、みなさんの写真コラージ

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応募総数60本以上🌕お月見コンテスト結果発表 🎉

応募総数60本以上🌕お月見コンテスト結果発表 🎉

2020年8/15〜9/16までnoteで開催させていただいた#新しいお月見プロジェクト 主催の「お月見コンテスト」の結果を発表させていただこうと思います!

お月見コンテストとは?募集する作品(エッセイ、写真、漫画、詩、考察、音楽‥何でも)は、お月見に関するものなら何でもOKです。お月見の思い出や、好きな小説の作品とか、お月見レシピとか、月の写真とか‥ぜひみなさんの「お月見」を教えてください。

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世界の片隅で見つけた美味しい月

世界の片隅で見つけた美味しい月

ずっと月を眺めている。

今、自分が見ている月は数時間前には地球上の別の場所にいて、そして数時間後には別の場所に、満ちたり欠けたりしながら姿を現す。

北半球と南半球で三日月の欠け方が違うことを今まで気づかなかったなんて言ったら笑われるだろうか。

それぞれが見上げる月の下では、全く異なる時空の『今』が流れている。月を眺めている『今』は自分の今日であり、誰かの昨日であり、さらに誰かの明日でもある。

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【掌握小説】おなじ月をみている

【掌握小説】おなじ月をみている

電車の座席に沈み込むと、仕事の疲れとともに力が抜けた。

ああもう、休日出勤なんてするもんじゃない。炎上鎮火に使った脳みそが、電車のリズムに合わせてぐらぐらとゆれる。窓の外を流れる景色はすでに夕方。それでも、空に浮かぶ白い三日月が、まだ夜があるよと私に教えてくれる。

こんな日は、ちゃんとグラスを用意して、お気に入りのビールを注ぎたい。重い気分をぐっと受け止めてくれるような、苦みのあるやつがいい。

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【小説】月が綺麗な夜もある

【小説】月が綺麗な夜もある

ヤマザキくんとは同じ塾だった。

母親がママ友から「厳しいけど成績を上げてくれるイイ塾よ」と聞いてわたしを送り込んだ英語の個人塾だ。会話なんかまったくやらないで千本ノックみたいにひたすら英語の長文を読むだけだった。成績が上がったかどうかはわからない。

ヤマザキくんは小太りでそんなに背は高くなく、ちょっと目にはいじめられるタイプに見えた。が、そうではない。よくしゃべる子で勉強はできた。少人数のこじ

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月のないお月見と、塩気のない月餅

月のないお月見と、塩気のない月餅

月を眺めてぼーっとするのは好きだ。脈絡なく空を見上げるのはいつものことだが「行事としてのお月見」の記憶をたどると子ども時代にまで遡ってしまう。

幼児期から10代前半まで香港で過ごした私にとってお月見といえば「中秋節」、香港中の公園が色とりどりのランタンや電飾で飾り付けられる華やかなお祭り。特に香港最大規模の公園であるヴィクトリアパークの賑やかさと言ったらテーマパークのようで、親に買ってもらった電

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満月のマフィン

満月のマフィン

ときどき、心が落ちつかずそわそわする夜がある

ああ、今日は満月…

原因かもしれないものを見つけたからか、少し大人になったからか、

調子がおかしい日も、今はだいぶ受け入れられるようになった

眠れない満月の夜には、よくお菓子を焼く

普段、家に甘いものを置いておくと食べてしまうので、わたしの家に甘いものは(ほとんど)ない

夜中にどうしても甘いものが食べたくなったら、試行錯誤して自分で作る

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いつもそこにあるお月見だんごと月

いつもそこにあるお月見だんごと月

仕事を終えてオフィスを出るといつも空を見上げる。
今夜は、いつもより明るい。
東の空に丸く黄色い満月がこちらを見ていた。
ああ、今日は中秋の名月、十五夜か。今朝、カーナビの音声案内が伝えていたのを思い出した。
横断歩道の赤信号で立ち止まる。
優しい月光が静かにあたりを明るく照らす。一瞬、街の喧騒が聞こえなくなった。

信号が青に変わる。横断歩道を足早に通り過ぎ、駐車場へ急ぐ。
車に乗り込み、西へ西

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欠ける、満ちる、食べる。

欠ける、満ちる、食べる。

中国や台湾では、どこも欠けていない満月を「円満・完璧」の象徴ととらえている。中秋節の満月の日に、家族が日本の正月のように集まり、食事をしながら満月に見立てた丸い月餅というお菓子や、文旦という果物を食べる習慣がある。
引用:https://www.gldaily.com/inbound/inbound2611/

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理由なき否定ほど、腹の立つものはない。

結婚前に勤めていた職場の上司は「な

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横浜でも食べる、関西の月見団子

横浜でも食べる、関西の月見団子

「そんなんは、月見団子ちゃう!」

母にそう言われたら、もう何を言うても無理。
私は諦めた。

テレビではサザエさんのエンディングテーマが流れていた。

日曜日夕方。その日のサザエさんは「お月見」の話があった。
木の台に積まれた丸いお団子。

美味しそうやなあ、食べてみたいなと思い、母にねだってみた。

あのお月見団子、食べてみたい。

母はサザエさんをチラリとみて、即答した。

あんなんは、月見

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寝転んでみる月

寝転んでみる月

 以前、働いていた事務所は、自然が豊かなところにありました。
裏に山があって、前には川が流れていて、今の季節、窓を開けて仕事をしていると、ギンヤンマが飛び込んできます。

 残業を終えて外に出ると真っ暗で、真夜中なのかと思うほど、静かです。
空を見上げると、大きな月がいつも見えました。

今日は、三日月。今日は、半分の月。
あ、満月。
とにかく月がよく見えて、車を運転していると、月と一緒に移動し

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