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自分で選んだ道を正解にするために
また一人、去っていった。
前々からわかっていたわけではない。それは突然やってくる。
当然だ。
イチ同僚に「辞めるんだよね」と言ったところで何の意味もない。
異変に気付いた上司が電話した時にはもう手遅れで、
普段はクールなその子からは想像できないほど、電話口で泣きじゃくっていたという。
人の内面なんて誰にも分らない。
心にもないことを、言う。
思っているけれど、言わない。
いつの間にか身に
【小説】不調和【超ショートショート】
彼女は噴水の前にしゃがんで、
手に持ったバラをゆっくりと水たまりに近づけた。
茎が水に触れると、
バラがふうっと息を吐くみたいに
まあるい波が広がって、消えた。
やっと落ち着ける場所に来た、とでも言っているかのように。
彼女は小さく息を吸うと、苦しそうにふうっと吐いた。
バラが呼吸に合わせて小さく上下し、
不規則な波を作る。
ここは落ち着かない場所だ、とでも言っているかのようだった。