マガジンのカバー画像

宛先のない手紙 vol.2

389
ほぼわたしの考えを垂れ流すエッセイのようなもの。その2。
運営しているクリエイター

2018年4月の記事一覧

“似ている”と“わかる”は別のもの

“似ている”と“わかる”は別のもの

「つまり、こういうことでしょ?」
「わたしもそうだったからわかる。〜なんだよね」
「〜って思っちゃうんだよね。わかるわかる」

誰でも、一度くらいは誰かに言われたことがあるのではないかと思う発言だ。そして、誰かにしたことがある人も少なくはないと思う。かくいうわたしだって、こうした発言を何度かしてきていると思う。特に妹に言いがちだったことを自覚している。

言われる側は言う側よりも年齢が下であったり

もっとみる
思考の濾過装置

思考の濾過装置

旅先の夜が好きだ。ひとりでも、他の誰かとでも、いつもと違う場所で過ごす夜が好きだ。

「どうしようもなくなったときには環境を変えればいい」というのは、半分正解だ。環境さえ変えれば自分自身が丸っきり素敵に変われるわけではないけれど、環境の変化で変わる思考回路というものは、存在していると思う。

ぼうっとひとり思索に耽る。ぽつぽつと、ふだんとは違うトーンで会話する。特別ハイテンションでもないけれど、特

もっとみる
張りつめた時間がゆるむとき

張りつめた時間がゆるむとき

自然が欠乏すると、人はイライラしたりストレスが溜まったりするらしい。

そんなことを思い出しながら、今これを書いている。長野県松本市。駅前こそ賑やかな観光地だけれど、ここはわたしの住むさいたまより田舎で、どこかのどかだ。

いつもよりも、少しだけ息が深く吸える気がするのは、きっと気のせいではない。キリキリして、脳内の血流が津波を起こしそうな状態も、今は感じない。わたしが本来心地いいと感じるテンポと

もっとみる
察した感情の真偽

察した感情の真偽

生粋のネガティブだったんだなあ、と思った日から、わたしは何も変われていない。

人には“察する力”がある。人の雰囲気や言葉の端々や表情から、相手の想いや感情を読み取る力だ。人によって持ち得る度合いは違うけれど、大多数の人に大なり小なり備わっているものだと思う。大半が持ち得ているからこそ、持ち得ない人は人間関係でわかりやすくトラブルになってしまう。

ただ、いくら察することができるといったって、それ

もっとみる
あなたと同じ名前になりました

あなたと同じ名前になりました

友人が、あるときを境に自分と同じ名前になる。

そんな経験を、母がしたことがあった。「ごめんね、同じ名前になっちゃって」彼女はそう母に詫びたらしい。

その人が名前を変えたのは、厄祓いが理由だった。あまりにも悪いことばかりが起こっていて、相談したら「名前のせい」だと告げられたらしい。相談先がどこだったのかは知らないけれど、神社などだろう。

どんな名前なら運勢が良くなるかを尋ねた結果、その人は母と

もっとみる
おなかの底に穴が開く

おなかの底に穴が開く

ばくん、とおなかの底に穴が空く。

——ああ、やばい。

なんとかしようと、息を吸う。とにかく深く、深く吸う。吸い込んだ空気の冷たさを感じはするけれど、うまく呼吸できている気はしなくて、何度も、何度も息を吸う。

大きく息を吐き出して、穴に抵抗できなかったことに嘆く。暗闇はそこにまだあって、わたしを飲み込もうと構えている。……ブラックホールみたいに。

もやもやすることが重なると、穴は開きやすく、

もっとみる
動く拡声器にはならない

動く拡声器にはならない

わたしはお喋りだ。親からは「口から生まれた」と言われ続けてきた。生後半年くらいから、まだ言葉にならないお喋りを熱心に始め、一歳頃からはよく歌っていたらしい。

「若菜の体調不良はすぐわかる。明らかに話さなくなるから」と妹にまで言われていたし、今も実家に帰ると「ひとり増えただけで一気に賑やかになるわあ」と呆れ気味に言われる。

わたしのママ友に、自分からはあまり話さない人がいる。おとなしいわけではな

もっとみる
「気の持ちよう」が「気」を潰す

「気の持ちよう」が「気」を潰す

「おねえちゃんは、いやなことがあると、すぐに熱が出たりおなかいたくなったりしてズルい」

小学生の頃、妹に言われた。四年生の頃のわたしは、下がらない微熱で頻繁に休んでいたのだけれど、あるとき、かかりつけだった小児科医に「精神的なものからきてるんですよ。病気じゃないですね」と言われていた。それから、微熱を出しても母は風邪をひいたときのようにはやさしくならなかったし、むしろ発破をかけるようになった。冒

もっとみる
主語のサイズとベクトル

主語のサイズとベクトル

遊具のない公園で鬼ごっこをしている息子たちを眺めながら、子どもの主語は、いつだって自分自身だなあと思う。

主語が広がっていくのは、一体いつからなんだろう。

幼稚園児でも、「男の子は」とか「年長さんは」といったくくりの中にいる気はするけれど、それが自分の中から出てくるには、まだ少し早い気がしている。出てきて性別かなあ。自分の意思決定が、「男の子だから〜」と性別由来になっていることは、長男も次男も

もっとみる
淀まず、濁らず。

淀まず、濁らず。

動くことのない水は淀む。動きがない分、清と濁に上下で分かれ、一見上澄みはきれいに見えるのだけれど、その水は淀んでいる。

実家近くには池があって、水面は鈍く光り、きれいだとは感じなかった。魚がいたのかどうかは知らない。でも、生きている感じはしない、そんな池だった。

勢いが良すぎる場所は、時に濁る。場所によっては、流れの勢いのままにきれいを保っているけれど、下の土やゴミを巻き上げて、濁ってしまって

もっとみる
団地が好き

団地が好き

団地が好き。

以前に本で見た、絵本作家の酒井駒子さんの言葉。「わかる」と思った。その当時、わたしはしょっちゅう団地に入り浸っていた。彼氏の家だ。

「ニュータウン」と名づけられた団地は、すでにオールドで、徐々に外壁の塗装工事が行われている最中だったから、見た目には新旧が入り混じっているように思えた。

5階建ての急な階段。彼の家は5階だった。わたしの実家は2階建ての戸建だったから、3階頃からヒイ

もっとみる
会ったことのないあなたとの、10年越しの再会

会ったことのないあなたとの、10年越しの再会

一通のメールが届いた。差出人の名前を見て、一瞬時間が止まった気がした。

彼女と会ったことはない。かれこれ10年前、わたしが18歳から22歳頃に、ネットの中だけでやりとりをしていた人だ。

当時、わたしも彼女も、一次創作サイトを運営していた。(正確にいえば、わたしのサイトは開店休業状態で、まだ存在している)

創作サイトが登録するサイト経由だったのか、出会いのきっかけは忘れてしまったけれど、相互リ

もっとみる
誰かに思考を委ねない

誰かに思考を委ねない

「日本人は、トップについていく気質の人が多いんだよ」

昔、そんな言葉を耳にした。この発言をしたのが父だったのか、はたまた先生だったのか、記憶は定かではない。

日本人は殿様の下に付き従ってきた時代が長いわけだけれど、そうした「絶対君主の言うことを聞く」方が、自分の頭で考えて主体的に政治に関わるよりも向いている人が多い、とこんな内容だった。

わかりやすくリーダーシップ感を醸し出す政治家が現れると

もっとみる
あなたとわたしの“同じ”一日

あなたとわたしの“同じ”一日

昨日から一週間が始まった。また今週も怒涛のように過ぎるのだろうな、と思う。

昨日は、さっそく朝から長男を何度も起こすことから始まった。また一週間、こんな日が続くのだろう。

大人になり、主婦かつ母になってからというもの、「わあい、土日だー!」といった感覚はなくなった。いつでも休みだし、いつでも仕事。主婦や母とは、そういうものだと思う。

さらに、わたしの仕事には決まった休みがない。いつでも休める

もっとみる