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会ったことのないあなたとの、10年越しの再会

一通のメールが届いた。差出人の名前を見て、一瞬時間が止まった気がした。


彼女と会ったことはない。かれこれ10年前、わたしが18歳から22歳頃に、ネットの中だけでやりとりをしていた人だ。

当時、わたしも彼女も、一次創作サイトを運営していた。(正確にいえば、わたしのサイトは開店休業状態で、まだ存在している)

創作サイトが登録するサイト経由だったのか、出会いのきっかけは忘れてしまったけれど、相互リンクをして、互いの作品を読んだり、ブログに書かれた近況にコメントをつけたりしていた。

同い年かひとつふたつ差か、同年代の同性で、くだけたやりとりもしていたと思う。

そんな彼女からのメールだった。(表現は少し変えています)

***


はじめまして、といったほうがいいのか悩みました。憶えていらっしゃいますか?

春がきて、唐突に若菜さんのことを思い出しました。わたしの中で春のイメージだったからかもしれません。

お元気にされているかなあと思い、どうにか記憶を掘り起こして探してみたら、まだサイトがあって嬉しかったです。

ご連絡をしたいと思ったのですが、サイトのメールフォームでは送れず、「そういえば当時メールのやりとりをしたな」と思い、掘り返してみた次第です。


***


メールには、そのあと、わたしが以前ブログに書いた近況(それも数年前)を見てくれたこと、当時好きだった作品について綴られ、「今も創作してらっしゃることが、とても嬉しい」と書かれていた。


ネットの中には、一体どれくらいの作品が溢れているだろう。

noteの中だけでも、創作コンテンツはたくさんある。もし読んでもらえたとして、読んだもののことを、果たしていつまで、どれくらい、憶えていられるだろうと思う。


彼女は、わたしが10年ほど前に書いた作品が、本当に好きだと書いてくれていた。その当時も嬉しかった感想を、10年経った今、再び「好きです」と伝えてくれた。

これは、すごいことだと思う。書き手として、ありがたいことだと思う。押し流されていく時間の中、増殖し続けるコンテンツの中、彼女の記憶の片隅に残り続けてくれたこと。そうして、ふと春に思い出してくれたこと。思わず、胸が熱くなった。


もちろん、わたしも彼女のことを憶えていた。作品はもちろん、サイトデザインが爽やかで、サイト名も好きだった。いつの間にか閉鎖されてしまい、読めなくなってしまったのがさみしかった。

けれど、わたしには、「以前したメールのやりとり」は思い出せなかった。だから、彼女がこうしてわざわざ過去のメールを引っ張り出してまで連絡をしてきてくれたことが、とても嬉しい。


彼女は、今は一次創作はお休みしているらしい。いつかまた、彼女の作品が読めることを楽しみにしている。

わたしも作品を書き続けよう。いつかまた、どこかの誰かに届くかもしれない、そんなことを願って。


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