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あなたと同じ名前になりました

友人が、あるときを境に自分と同じ名前になる。

そんな経験を、母がしたことがあった。「ごめんね、同じ名前になっちゃって」彼女はそう母に詫びたらしい。

その人が名前を変えたのは、厄祓いが理由だった。あまりにも悪いことばかりが起こっていて、相談したら「名前のせい」だと告げられたらしい。相談先がどこだったのかは知らないけれど、神社などだろう。

どんな名前なら運勢が良くなるかを尋ねた結果、その人は母と同じ名前になった。……と、こういう流れだった。

実際に戸籍名まで変えられたのかはしらない。改名はむずかしいと聞くから、通称名だったのかもしれない。それでも、今までの名前からガラリと変わる名前を名乗るって、一体どんな気持ちなのだろう。

子どもの名付けを考えていたときには、かなりの数の候補があった。けれども、いざ生まれてきて一旦付けてしまったら、不思議とその名前でしかありえない気持ちになる。本人の好き嫌いはさておき、名前はその人のアイデンティティのひとつなのだと思っている。

名は体を表すというように、その名前のイメージに中身が寄っていくのは、あり得る話だと思う。苗字はさほど関係ない。あくまでも名前だ。

今はアカウント名やペンネームなど、ひとりの人間が多くの名前(仮)を有することができる。わたし自身、いくつかの名前があるのだけれど、まったく別の名前をつけると、別の人格が生まれるような感覚になる。

先にペンネームなど別の名前で知り合った人は、その名前でないと違和感がある。本名の方がしっくりこない、何なら似合わないと感じることすらある。芸能人の場合、芸名の方がその人らしいと感じてしまうのと同じだろう。


名前って、おもしろいね。

なお、その後その人が幸に恵まれたのかどうかも、わたしは知らない。もう23年ほど前の話だ。


#エッセイ #コラム #雑記 #考えていること #思っていること #名前

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