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ツキノジャーニー

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時系列ではなくふらっと立ち寄った過去や、ふと思い出した記憶を拾い集めたりして。 超短編小説のように綴っていけたら。 切り取った記憶をそのままに ノンフィクションを始めてみる。 …
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記事一覧

雨音

雨音

さらさらと雨の音が響く朝。
なんだか聴覚をくすぐられているみたい。

今日が日曜日であることに心底ホッとした。

まだ布団から出たくない。このままぬくぬくと雨音を聞いていたい。いつまでも。。独り言のようにワガママを言ってみる。

そういえば、あの人に会う日もよく雨が降っていた。買ったばかりのスニーカーを履いて会いに行く。白いコンバースは、さっそく汚されるのか?と憂うつそうに呟きながらも、わたしの足

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曇りガラスの記憶

曇りガラスの記憶

今日はふと、
父のことを考えていた。

長年、自動車業会で働いていた父。
三年前に定年退職し、
今は再婚した奥さんの実家の神戸で
タクシー運転手をしている。

言葉数は少なく、
いつも穏やかで優しい人。
怒られたことは一度もないし、
怒っているところを見たこともない。
とは言っても、
父とは生まれてから9年しか
一緒に暮らしていないから、
もっと長く一緒にいられたら…
もしかしたら、
怒られること

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魂のかたわれ

魂のかたわれ

窓を開けると、一気にもわりとした残暑の空気が流れ込む。湿度をたっぷりと含んでいてしっとりと身体に張りついてくる。

目をつぶってゆっくりと息を吸い込んだ。
忙しい日々に追われるとすぐに呼吸が浅くなってしまう。

時間の通り過ぎる早さに時々眩暈がした。

あの人と会えなくなってから、もう二年という月日が過ぎようとしている。

どうやら今日は午後から雨になるらしい。
空は、薄い青と灰色のグラデーション

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泣けないわたし

泣けないわたし

湿った薄灰色の空のにおい

ちょっとだけ強気な風が通りすぎる

午後はものすごーく、眠くて
ほんの少しだけうとうとした。。

色のない夢を見た

内容はあまり覚えてないけど、
小さなわたしが泣いている夢だった

.
.

わたしは、昔から
泣いちゃいけない。って思っていて
気づいたら、
泣くことができない人間になってた

嬉しくても
悲しくても
痛くても
怖くても

人前では絶対に泣かなかったから

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茜色の紅茶

茜色の紅茶

平日の午前中

院内の小さな喫茶店は、
付き添いの人達の待合室になる。

大学病院の診察は、
いつだって一日がかりだ。

神妙な顔つきの人
待たされてイライラしてる人
晴れやかな表情を浮かべた人

ここには様々な感情が散らばっている。

わたしは今、
どんな表情をしているんだろう?

混み合う喫茶店の
窓側の特等席に座れたわたしはツイている。

血液検査を終え、
診察まで少し時間があったので
病院

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