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6回目のパレスチナ

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2017年夏の旅。ヨーロッパに住むパレスチナ難民との出会い、本国でも出来事。一期一会の旅
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#旅行

さあ!ランチの時間だ

Nadimの家は幹線道路から少し入ったところにある。この幹線道路はベツレヘムからヘブロンにつながるもので道路沿いにはパレスチナ西岸地区最大の難民キャンプデヘイシェがある。

ママー、ただいま。帰って来たよ。

おかえり!Azusa, welcome!!よく来てくれたわね。さあ、お腹空いているでしょ?入って。Nadim、テーブルの上片付けて!

ママの大歓迎を受け静かな自宅に入っていった。幹線道路が

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ベツレヘムに行こう

ベツレヘムに行こう

Nadimからメッセージが届いていた。

ママがランチに招待するって張り切っているから昼過ぎに遊びにおいでよ!

Nadimはベツレヘムのランドマーク、生誕教会(イエスキリストが生まれた場所に建つ教会)の真横と言ってもいいくらいの場所にあるお土産屋さんの一人息子だ。もともとはNadimの従兄弟と先に友達になっていて知り合った。お土産屋さんという職業柄英語も堪能でいつの間にか仲良くなっていた。

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テルアビブに到着

テルアビブに到着

ミュンヘンから飛行機に乗り一路テルアビブに向かう。飛行機に乗り込む時には空は明るく日が昇ってきていた。
これが6回目のパレスチナ行き。
定刻通り飛行機は飛び立ち中東へ。美しい地中海の上を優雅に飛び越える。機上から地中海、そして面するテルアビブが見えてくる。きっとガザ地区も見えているはずなのだが未踏のその地がどこら辺なのかわたしにはわからなかった。

飛行機は着陸。そして機内では拍手。
毎回ドキドキ

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そろそろパレスチナに向かおうか

そろそろパレスチナに向かおうか

ガザ人ムハンマドが住むアントワープを後にミュンヘンに向かった。数日滞在した後ミュンヘン空港からテルアビブに向かう。朝というより深夜タクシーでSバンの駅に行きそこから列車に乗って空港へ行く。まだ外は暗い。空港駅で降り電光掲示板でテルアビブ行きを確認する。定刻通り。とはいえ、イスラエル・テルアビブ行き。前もってチェックインをして荷物を預けておこう。ターミナル1。色んな航空会社のチェックインカウンターを

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ガザのキドラ#2

ガザのキドラ#2

大きめの鍋に浸水させたお米を入れてさっき作ったスパイスも入れてこれを炊くのよ。

ソファでニコニコしていたムハンマドがおもむろに立ち上がる。
何かと思えば畳一畳ほどの絨毯を広げる。

お祈りが始まる

絨毯の前でフウ〜と深呼吸。小さな声で何か言っているけど聞き取れない。お祈りの時に言うセリフだろう。

見ていると、ヨガの太陽礼拝そっくりだ。イスラム教徒の友達は何人かいるが間近でお祈りをしている姿に

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ガザのキドラ#1

ガザのキドラ#1

さあ、準備開始よ!お米は洗って浸水させる。日本ではお米食べるでしょ?お米はこんな感じ?同じ??

ここで使うお米はバスマティライスだった。あの長細いお米。日本だとタイ米みたいな形というと多くの人にわかりやすいだろう。それこそ、わたしが子供の頃に米不足でタイ米が大量に輸入され学校給食で使われたそれとは厳密には違うのだが。

バスマティライスの良い香りがするー!日本のお米はもっと丸っこくてね、炊くとも

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同郷っていいね

同郷っていいね

今日はガザ料理の日だよ!いえーーーい!自分じゃ、お料理できないから君がガザ料理作りたいって言ってくれて、料理上手の友達に言ったら来てくれることになったから。家も遠くて中々会えないし、ガザの味も久々に食べられる。すっごい美味しいよ。

わたしたちは公園をぐるり散歩してそのガザ出身の女性を待つことにした。彼女は電車で1時間くらいかけてここアントワープまで遊びに来てくれた。

サラームアレイコム!ハビー

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湖畔のほとり

湖畔のほとり

もうお昼はゆうに過ぎているが、ムハンマドにとっては早めの1日の始まりとなる時間。わたしは散歩に誘った。

OK!じゃあ、僕のお気に入りの場所に行こう!きっと君も気に入るはずだからさ。

わたしたちは近くのスーパーマーケットで各々お菓子と飲み物を購入し近くの湖のある公園に向かった。空はまさにヨーロッパの夏。高い青い空が広がっている。

整備された緑が溢れる公園。その真ん中を歩いて湖に向かう。犬の散歩

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朝が来る

朝が来る

ムハンマドにとって朝は憂鬱なものだった。どんなに天気が良くても気候が最高でも朝は1日の始まりでだからと言ってすることもなく時間をただただやり過ごすだけ。できる限り寝て早く夜が来るように生活サイクルを変えている。

難民問題を考える時、衣食住や安全についてがまず頭に浮かぶだろう。もちろんその通りである。彼らは人であり人間の尊厳を持って生きていくのが当然の権利だとわたしは思う。難民として認定されても待

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孤独な夜

そろそろ帰ろうか。

外は優しい淡いオレンジ色した電灯と石畳み。そして8月末というのに少し肌寒い。

家に帰る前にモロッコカフェでミントティー飲んで帰ろうよ。

そう言ってカフェに歩いて向かう。店の外のテーブルに座りミントティーを注文する。一つは砂糖なしで。

まだ信じられないよ。ここで友達に会えるなんて。本当に嬉しい。信じられない。ここにも友達はいるよ。でも違うんだ。疑ってるってわけじゃないけど

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シリア難民夫婦の家に招かれる

シリア人難民ムハンマド夫妻のアパートメントに行く。ドアを開けるとまだあどけない少女のような奥様が待ち受けている。

ウェルカム!さっき電話で話は聞いたわ。ガザのムハンマドのお友達ね!よろしく。

奥様はにこやかに出迎えてくれた。美しい髪と透き通る目をした奥様とムハンマドは高校生カップルがじゃれ合うように今日の帰宅をお互い喜び合っている。見ててこっちが照れくさくなるくらい。でもよく考えてみると、二人

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シリア人ムハンマド

ガザ人ムハンマドの紹介で友達となったシリア人ムハンマド。彼らは難民であり母国語がアラビア語という共通点があり友人となった。シリア人ムハンマドから奥様を紹介したいからということでお宅にご招待される。

さあ、行こう!トラムですぐだから!

ガザ人ムハンマドはあとから合流すると言って、シリア人ムハンマドと2人で彼の住むアパートメントに向かう。

その前にもう一人紹介したい人がいるんだ。すぐ近くだからそ

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もう一人のムハンマド

ムハンマドの電話が鳴る。アラビア語で何やら喋っているけど、わたしにわかるのはインシャアッラーくらい。

さあ、行こう!友達を紹介する。語学学校で知り合ったんだ。君の話もずっとしてたから。

私たちはアントワープ駅の方に向かった。駅前で多く見かけるオーソドックスなユダヤ人たち。そして立ち並ぶダイヤモンド商店。そこをくぐり抜けて行く。

ワッサラームアレイコム ワアレイコムサラーム

見た所20代前半

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アントワープを歩く

ムハンマドの案内でアントワープ主要観光地を歩く。日本人なら絶対好きなこの場所にももちろん。アントワープ聖母大聖堂。そう!フランダースの犬の最後のシーンはここなのです。その大聖堂の前にはネロとパトラッシュの像がある。そこを一通り歩いたあと、

アントワープが一望出来る場所があるからそこへ行こう!

ムハンマドの提案によりバスに乗って移動する。そこは彼がアントワープで一番気に入っているところだ。それは

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