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映画『ビッグフィッシュ』 物語は、人に永遠の生命を与える

映画『ビッグフィッシュ』 物語は、人に永遠の生命を与える

近所のGEOを時々覗いては、DVDのセル品を5枚1000円で購入している。昔見てもう一度見たいと思うものと見逃していたものを漁るのが楽しみ。

今回の掘り出し物は、ティム・バートン監督の『ビッグフィッシュ』

映画好きには、今さらな20年前の作品だけれど。私にとっては、初見。見逃さずに良かった。

生きれば生きるほど、現実の過酷さや全ての人に平等に優しいわけではない世界の現実に晒され、誰しもが少し

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映画「さざなみ」 人の心はやわらかくて壊れやすい。すべてを正直に話さなくても…。

映画「さざなみ」 人の心はやわらかくて壊れやすい。すべてを正直に話さなくても…。

『さざなみ』塩辛い映画だった。

人生の晩秋を迎えて、45年も寄り添ってくれた妻に全てをさらけ出さずとも良いのになあ。きっと話さないほうが良いこともあるのだろう。

ジェフよ、いくら愛する妻とはいえ、相手の全てを知ることは不可能だし、自分のすべてを同じように理解してもらうことは不可能に決まってるじゃあないか。

人は何らかの秘密を抱えて生きていくもの。そんな話は墓場まで持っていってくれ。

長年連

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映画『オペラ座の怪人』 彷徨える愛の行方

映画『オペラ座の怪人』 彷徨える愛の行方

『オペラ座の怪人』 4Kデジタルリマスター

目黒シネマで見て以来の鑑賞。確か、レ・ミゼラブルとの二本立て興行だった。それは贅沢なラインナップでしたわ。今回は109プレミアム新宿体験も兼ねてなので、またまた贅沢。

この物語に没入するために、精霊物語を補助線として置いておこ。

眠り猫さんのnoteで、いつも勉強させてもらっていたので、エロースとアガペーの違いというところに着眼しながら二度目の鑑賞

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映画『別れる決心』 ヘジュン、青と緑は似て非なるものだろ

映画『別れる決心』 ヘジュン、青と緑は似て非なるものだろ

恋は美しき誤解に始まり、悲しき理解に終わる。惨憺な状況に置かれても理解できないままに取り残されるヘジュン。

目を覚ませ! 緑は緑、青は青だろ。

直観で始まった恋は、言葉に輪郭を与えられると、砂でつくった山のように儚く、波にさらわれて跡形もなくなってしまう。

言葉には、いつも複数の意味が隠れていることを知っていたはずなのに…。

真実はひとつしかない、目を凝らせば、自分はその真実を掴める人間な

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映画『ジョーカー』 痛切なルサンチマン

映画『ジョーカー』 痛切なルサンチマン

meronagiさんの記事を読んだら、思いだした『ジョーカー』の続編が10月公開らしい。

meronagiさんは、eponaさんの記事から刺激を受けて書いてる。インスパイアの連鎖でマトリョーシカのようにしてしまったけれど、駄目なら言ってね。

『ジョーカー』2019年公開

映画ジョーカーの舞台は1981年のゴッサムシティ。つまり過去の出来事。『バットマン』製作者の意図としては、ゴッサムシティは

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映画『桐島、部活やめるってよ』見た 映画って時間が経つと刺さり方が変わるよね

映画『桐島、部活やめるってよ』見た 映画って時間が経つと刺さり方が変わるよね

『桐島、部活やめるってよ』を久しぶりに見た。一度目は、目黒シネマで見ているので二度目。

一度目は、最後まで桐島が出てこないという仕掛けに、テーマを忍びこませる凄技に唸らされたのを覚えていたけれど、そこまでは刺さらなかった。青春時代の人間模様を掬ったストーリーは好みの物語だけれど…。私自身は、いわゆるスクールカーストみたいなものを意識しないで生きてきた世代だからか、登場人物にあまりリアルを感じなか

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映画『生きる LIVING』を思い出したら、おひさまが優しく輝いた

映画『生きる LIVING』を思い出したら、おひさまが優しく輝いた

meronagiさんの記事を読んで、カズオ・イシグロが脚本を書いた『生きる LIVING』を思い出した。見たのは2年前。

生きる LIVING
   2022年 ‧ ドラマ ‧ 1時間 42分

その時の文章がこちら↓

そこそこの齢になり自分に残された時間を濃く深く生きるには?そんなことを考えさせられた。

誰もが思いつきそうだが、今一度これまでの人生を振り返り、やり残したことを整理し、残さ

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映画『怪物』ー普通ってなんだよー

映画『怪物』ー普通ってなんだよー

「普通ってなんだよ」と言う歌を思い出した。最近のロックは大人しい。優しい言葉で、柔らかい音で、世界の片隅に追いやられた人たちの気持ちを包もうとしている。

私のいつも出会う人たちは、自分の殻に閉じこもるか、わからないように隠れるか、逃げるかしている人が多い。多くの人の目に触れることを好まない人も多い。

そんな彼、彼女らは昔のロックのように、今ある世界に対してNOを突きつけ、戦いの狼煙を上げる音楽

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『ファイト・クラブ』読んだ。

『ファイト・クラブ』読んだ。

映画を見てからの読書だったので、物語の輪郭は把握した上で読み始めた。最初は、この原作を良く映画にできたなぁと感心していたけれど、読了したらまた違った感慨に襲われた。

とにかく、ヤバい小説なので軽い酩酊状態で少しずつ読むことにした。仕事帰りの安酒場で読んでた。

一旦その世界に入れば、勝手に映像が浮かび上がって来るので酔ってるくらいがちょうどいい。いやいや、私などは正気では読めない。

一人の人間

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映画『三島由紀夫VS東大全共闘50年目の真実』観た

映画『三島由紀夫VS東大全共闘50年目の真実』観た

私の大学時代にはまだ民青の立て看が残っていた。時代的には新人類などと呼ばれ、シラケ世代の更にあと。日本の青年期の強烈なエネルギーが放出されたあとのあとだった。

祝祭のあとの脱力感と虚無。なにかに真剣に向き合うことが軽んぜられる風潮があったように思う。あくまでもマスコミが作り上げた時代の空気だろうけれど。

そして、バブルが始まり、何だかカオスな時代だった。世の中にはキンキラキンな気分が蔓延しはじ

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映画『BLUE GIANT』観た JAZZは一期一会よ

映画『BLUE GIANT』観た JAZZは一期一会よ

前から気にはなってた『BLUE GAIANT』。アマゾンの配信で観た。料理作りながら「音、聴いとこう」と思ったけれど、引き込まれてしまった。

JAZZは、流行りの音楽ではなく一部の愛好家が好むもの。最近の映画の中では、そんな位置づけで語られることが多くなった。『ラ・ラ・ランド』でも好きなものは好き、と時代に背を向けるライアン・ゴズリングが演じる主人公はジャズピアニスト。現在のJAZZに与えられた

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世界のベストセラー『幸せなひとりぼっち』は、オーヴェという架空の中年偏屈男のキャラクター設定から始まった。

世界のベストセラー『幸せなひとりぼっち』は、オーヴェという架空の中年偏屈男のキャラクター設定から始まった。

『オットーという男』の原作が『幸せなひとりぼっち』だと知り、読んでみた。

著者は、1981年生まれのフレドリック・バックマン。彼が、偏屈で頑固な中年男のエピソードをオーヴェという架空のキャラクターを創造して人気ブロガーになり、またまたそれを長編小説に仕立てたのがこれ。

成り立ちから興味を惹くじゃありませんか。

訳者あとがきを読んで知ったのだけれど。(笑)

『オットーという男』は、良くできた

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『スター誕生/アリー』観た no one is at fault  

『スター誕生/アリー』観た no one is at fault  

ブラッドピット主演の『ファイト・クラブ』の原作を読み始めた。デビット・フィンチャーの映画が、原作の面白さを損なうことなく、ある種忠実にしかも複雑な構造を映像に閉じ込めた作品だったことがわかってきた。

焼き鳥を食べたくなって、赤提灯をくぐり、レモンサワー飲みながら頁をめくってたら、くらくらしてきたので家に帰ることにした。

死に近い者たちの話を聞いたり、人間の素手で殴られて痛みを感じることで生きる

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映画『すばらしき世界』は何処に

映画『すばらしき世界』は何処に

先日、昭和の名残がある極楽寺街道(勝手に命名)を通り、気儘に稲村ヶ崎までの散歩を堪能した。気に入った場所では、シャッターを押し記録を残した。潮風が吹いてくる細い路地のような道をくぐると眼前に現れたのは抜けるような青空と輝く海。すばらしき世界があった。

『すばらしき世界』と云えば、三上正男。未来の翼さんの書いたレビューを読んだ。

ヘッダーの写真の光景がまぶたに蘇った。これ三上と一緒の気持ちかも知

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