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『ファイト・クラブ』読んだ。

『ファイト・クラブ』読んだ。

映画を見てからの読書だったので、物語の輪郭は把握した上で読み始めた。最初は、この原作を良く映画にできたなぁと感心していたけれど、読了したらまた違った感慨に襲われた。

とにかく、ヤバい小説なので軽い酩酊状態で少しずつ読むことにした。仕事帰りの安酒場で読んでた。

一旦その世界に入れば、勝手に映像が浮かび上がって来るので酔ってるくらいがちょうどいい。いやいや、私などは正気では読めない。

一人の人間

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映画『三島由紀夫VS東大全共闘50年目の真実』観た

映画『三島由紀夫VS東大全共闘50年目の真実』観た

私の大学時代にはまだ民青の立て看が残っていた。時代的には新人類などと呼ばれ、シラケ世代の更にあと。日本の青年期の強烈なエネルギーが放出されたあとのあとだった。

祝祭のあとの脱力感と虚無。なにかに真剣に向き合うことが軽んぜられる風潮があったように思う。あくまでもマスコミが作り上げた時代の空気だろうけれど。

そして、バブルが始まり、何だかカオスな時代だった。世の中にはキンキラキンな気分が蔓延しはじ

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映画『BLUE GIANT』観た

映画『BLUE GIANT』観た

前から気にはなってた『BLUE GAIANT』。アマゾンの配信で観た。料理作りながら「音、聴いとこう」と思ったけれど、引き込まれてしまった。

JAZZは、流行りの音楽ではなく一部の愛好家が好むもの。最近の映画の中では、そんな位置づけで語られることが多くなった。『ラ・ラ・ランド』でも好きなものは好き、と時代に背を向けるライアン・ゴズリングが演じる主人公はジャズピアニスト。現在のJAZZに与えられた

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世界のベストセラー『幸せなひとりぼっち』は、オーヴェという架空の中年偏屈男のキャラクター設定から始まった。

世界のベストセラー『幸せなひとりぼっち』は、オーヴェという架空の中年偏屈男のキャラクター設定から始まった。

『オットーという男』の原作が『幸せなひとりぼっち』だと知り、読んでみた。

著者は、1981年生まれのフレドリック・バックマン。彼が、偏屈で頑固な中年男のエピソードをオーヴェという架空のキャラクターを創造して人気ブロガーになり、またまたそれを長編小説に仕立てたのがこれ。

成り立ちから興味を惹くじゃありませんか。

訳者あとがきを読んで知ったのだけれど。(笑)

『オットーという男』は、良くできた

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『スター誕生/アリー』観た no one is at fault  

『スター誕生/アリー』観た no one is at fault  

ブラッドピット主演の『ファイト・クラブ』の原作を読み始めた。デビット・フィンチャーの映画が、原作の面白さを損なうことなく、ある種忠実にしかも複雑な構造を映像に閉じ込めた作品だったことがわかってきた。

焼き鳥を食べたくなって、赤提灯をくぐり、レモンサワー飲みながら頁をめくってたら、くらくらしてきたので家に帰ることにした。

死に近い者たちの話を聞いたり、人間の素手で殴られて痛みを感じることで生きる

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『すばらしき世界』は何処に

『すばらしき世界』は何処に

先日、昭和の名残がある極楽寺街道(勝手に命名)を通り、気儘に稲村ヶ崎までの散歩を堪能した。気に入った場所では、シャッターを押し記録を残した。潮風が吹いてくる細い路地のような道をくぐると眼前に現れたのは抜けるような青空と輝く海。すばらしき世界があった。

『すばらしき世界』と云えば、三上正男。未来の翼さんの書いたレビューを読んだ。

ヘッダーの写真の光景がまぶたに蘇った。これ三上と一緒の気持ちかも知

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『身分帳』から『すばらしき世界』

『身分帳』から『すばらしき世界』

自分の背丈よりも積みあがった「身分帳」は彼の言わば履歴書。それは他人が書いた矯正施設の管理上必要な事柄の記録。

その三上正夫の「身分帳」を読み解いて、ノンフィクション・ノベルにしたのが佐木隆三。

そして、三上正夫を現代に蘇らせてスクリーンに映し出したのが西川美和。

テレビでは、たちまちコンプライアンスに引っかかって放映できないと思われる人間像=三上正夫。ある意味、結晶した人間像は、リアル。

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『男と女 人生最良の日々』

『男と女 人生最良の日々』

『男と女 人生最良の日々』2019年公開

「最良の日々は、この先の人生に訪れる」というビクトル・ユーゴーの名言からとったタイトルが素敵。

あの「男と女」から53年後。しかも主演のお二人の体調を考えて撮影が10日間だったとは驚き。

ルイ曰く「死は納めなければならない税金だ」
アンヌは「ひとりでいると死ぬのが怖くなる。二人でいると相手が死ぬのが怖くなる」と語る。

自然な流れで、洒落ていて味わい

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トム・ハンクス『オットーという男』からウッディ・アレン『カメレオンマン』

トム・ハンクス『オットーという男』からウッディ・アレン『カメレオンマン』

トム・ハンクス制作主演の映画『オットーという男』を観た。アマゾンからのおすすめ。繰り返し言われると気になるわ。

これが、当たりだった。

衒いが無く、ど直球で心が暖かくなる作品。この手の映画は、時々見たくなる。

ソニー・ピクチャーズの作品紹介は、こんな感じ。

この紹介には、食いつけなかったのだけれど、ジャンルがコメディーだったので、金曜日だし、明るいもの見ようとチョイス。

人生を儚んだ時、

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『タクシー・ドライバー』トラヴィスのこと

『タクシー・ドライバー』トラヴィスのこと

特別展中尊寺金色堂を見に行き、平和を願いながらも滅ぼされてしまった藤原氏一族の栄華とその末路、そして900年後の展示の意味について、もやもや考えてた。

そしたらなんの連想か『タクシードライバー』を思い出したので書き留めておこう。

学生時代に『ミッドナイトエクスプレス』『レイジング・ブル』などと一緒にオールナイトで見たのが初見。それから何度か見ている。ロバート・デ・ニーロを『ディア・ハンター』で

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『おみおくりの作法』                                    ジョン・メイの墓碑に贈る言葉

『おみおくりの作法』                                    ジョン・メイの墓碑に贈る言葉

『おみおくりの作法』 2013年公開

その頃、自分は二十代だった。縁あって水上勉さんの若狭一滴文庫で講話を聴いた。その時の言葉がずっと心に留まってる。

「真実の僧侶は市井にいる」

水上氏の『越前竹人形』には船頭の格好をした僧侶が現れる。

この映画の主人公ジョン・メイも、まさしく市井に生きる真実の僧侶。

孤独のうちに死んでいった一人ひとりに敬意を払い、諦めずに故人の物語を探し出して弔う。

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『長いお別れ』を見て思い出した友人の手紙

『長いお別れ』を見て思い出した友人の手紙

『長いお別れ』2019年公開 

認知症のことを「Long Goodbye(長いお別れ)」と表現するらしい。認知症になった人を取り巻く家族や友人の目線からの言葉だろう、と想像する。大切な人が徐々に失われていく気持ちを、後から回想してできた言葉なのだろうか。

認知症になった旦那様を看取った友人から手紙をいただいたことを思い出した。

毎日毎日、世界中で認知症になった方とその周辺の人たちには、喜怒哀

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『ベルリン天使の詩』から『ドライブ・マイ・カー』

『ベルリン天使の詩』から『ドライブ・マイ・カー』

note探ってたら『ドライブ・マイ・カー』の記事が…。ちょっと思い出した。

2年前の4月に転職して、毎朝Y駅の中央改札から雑踏を横切ってS線まで歩く毎日になった。その度に思い出すのが「ベルリン天使の詩」のダミエルの眼。堕天使の彼は人間社会に興味を惹かれ、この世界に降りてくる。この世界に降り立った瞬間、モノクロームの世界に色がつくのが味わい深い。

妄想に浸れば私の頭もモノクロームの世界とカラフル

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「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみないと分からない」

「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみないと分からない」

『フォレスト・ガンプ』1994年公開

「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみないと分からない」

ガンプの母が遺した金言。映画を見たそれぞれの観客に届く言葉だろうと思う。

純真なガンプに「僕はチョコレートを150万個だって食べられるよ」と当たり前のような顔で言われると、希望が世界中に広がっていく。信じることは可能性を無限に広げる。

映画の中で繰り返し見せられるのは、
「誠実さ」「素直

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