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聖書と信

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聖書はひとを生かすもの、という思いこみだけで、お薦めします。信仰というと引かれそうですが、信頼などの信として、ひとや世界を大切にする思いが、少しでも重なったらステキだな、と思いつ…
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#クリスマス

『イエスの降誕物語 クリスマス説教集』(及川信・教文館)

『イエスの降誕物語 クリスマス説教集』(及川信・教文館)

日本基督教団の牧師である。その説教集が何冊か出版されている。私は好きだ。
 
神の言葉を自分における出来事として聴く。それを語る。また、安易にキリスト教を弁護しない。むしろ、キリスト教世界や教会の中に、とんでもない罠が潜んでいることを感じており、それを告げるのに憚らない。
 
私がもし牧師だったら、きっとこの人のように語るだろう。考えるだろう。だから好きだ。非常に共感できる、ということだ。
 

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アドベントに思う

アドベントに思う

いわゆる「アドベント」の期間に入る。「待降節」と訳される。クリスマス前の4週間が基本である。12月がほぼすっぽり入ることになる。そもそもクリスマスは、「キリスト礼拝」というような意味で、神がこの世に救い主を送ったこと、その救い主が人間として誕生したことについての礼拝である。もちろん、聖書にこの時期がそうだと書かれているわけではなく、いわば便宜的に決めたということになる。
 
信仰の上では、このよう

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処女降誕について

処女降誕について

本当に処女降誕など、信じているのですか。キリスト者であれば、そう尋ねられたことがある人がいると思う。中には、それに耐えられないのか、それは事実ではない、と世間に与する発言を公にするような信徒もいるだろう。事実だと信じているわけではない。だからそれを、聖書に書いてあることは真実だなどという立場のグループは、どうかしている、そのように言い切る人もいる。引用したイザヤ書の言葉と新約聖書のギリシア語とでは

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『光を仰いで』(朝岡勝・いのちのことば社)

『光を仰いで』(朝岡勝・いのちのことば社)

コロナ禍の中で出版へと至ったことは間違いない。そのすべての願いが、コロナ禍に結びつけられる必要はないが、間違いなく半分は、コロナ禍における教会に注がれる神の力を思っている。残りの半分は、やはりその影響の中であることが多いであろう、個人の心に向けてである。「おわりに」で著者はそのような意味のことを記している。

 

2021年のクリスマス期に語られたメッセージが、本書の殆どを占めている。それぞれは

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欧米に学ぶクリスマス

欧米に学ぶクリスマス

ヨーロッパの新型コロナウイルス感染症の新規感染者の数が半端なく多い。だが初期の流行期と異なり、人類はそれなりに相手を知るようになってきた。知恵を以て、対処の仕方を心得てきたために、経済を回していくように動いているように見える。最初は、敵がどう出るか分からないので、とにかく閉鎖をするなど、大胆な措置をも取っていたのだった。
 
インフルエンザも、怖い感染症である。毎年日本国内でも千人単位で死者が出て

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キリストが

キリストが

一人ひとりの心の中に、生まれることを願っています。幸せになるために。

『ベツレヘムの星』(宮田光雄・新教出版社)

『ベツレヘムの星』(宮田光雄・新教出版社)

古書店で偶然に見つけ、宮田光雄さんの名を見て、これは知らなかったと思い、購入した。「聖書の信仰」の著作集は全部読ませて戴いたが、本書はエッセイによる辞典のようで、魅力に思えたのだ。サブタイトルは「聖書的象徴による黙想」とある。クリスマスの黙想と称した序章の中で、そのクリスマスの記事の中に出てくる星だの光だのが、聖書では何かを象徴しているに違いない、という辺りから、聖書を象徴として読み解いていくこと

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星になりうる

星になりうる

学者たちはその星を見て喜びにあふれた。(マタイ2:10)
 
クリスマスの名場面である。占星術と天文学とがいっしょになったような、当時の賢者が何人か、はるばるイエスの誕生を訪ねるという物語。いったいユダヤの王として生まれた方はどちらだろう。とりあえずエルサレムに来てみた。きっとヘロデ王の後継ぎだ。王宮を訪ねると、そんな子はいないという。ヘロデが、見つかったら教えてほしいと謙虚な言い方をするものだか

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アドベントを迎えて

アドベントを迎えて

伝統的に「待降節」という語が温かい。12月というよりも、クリスマスまでのひとときという意味で迎えてもよいかと思う。クリスマス礼拝までの四回の礼拝は、クリスマスを待つという意味を濃くしたプログラムや説教を、教会は用意するのが普通である。「アドベント」は「アドベンチャー」という語にも関係する語で、あるところに向かってやってくる、到着する、そうした意味合いをもつ言葉になる。「アドベンチャー」だと、未来の

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一切関係がありません

一切関係がありません

トイレの香りみたい。
いやいや、それは本物のキンモクセイだってば。
 
確かに、あるある。ぬいぐるみみたいに可愛い。
いや違う、本物があってこそのぬいぐるみのはず。
 
本当にあったのか、「教会でもクリスマスをするんですね」という逸話が語られることがある。これはどうやら、三遊亭円右の「クリスマス」という落語で広まったネタであるらしい。子どもたちが歩きながらそんな会話をする場面が最初のほうで出てくる

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たとえ知り尽くせなくても

たとえ知り尽くせなくても

ハンナ・アーレントの『人間の条件』を読書中である。まだこの本全体をどうなどと言うことはできない。ただ、前半のほうで、「私的」と「公的」の概念について詳しく紹介されているところで、教えられるものがあった。
 
と言っても、たんに私が無知だっただけなのだろうとは思うが、はっとしたのだ。その議論を全部ご紹介するつもりはないことをご了承願うが、いわゆる「プライバシー」なる語の原義が「うばわれたもの」から来

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