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外国語教育_at my desk

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外国語教育について考えた・考えてる・考えるために書いた こと
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#学校教育

英語学習はゲームなのだろうか?

英語学習はゲームなのだろうか?

平尾昌宏(2022)『人生はゲームなのだろうか?—<答えのなさそうな問題>に答える哲学』を読んだ。

この本をごく簡単に紹介した上で,「英語学習はゲームなのだろうか?」という問いに答えを出したい。

ゲームとは何か?ここでの「ゲーム」にはいわゆるスマホやゲーム機で遊ぶコンピュータゲームだけでなく,スポーツの試合やテーブルゲームも含む。

「目指すべき終わり」というのは,相手に勝利するとか,高いスコ

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現場で使える教育社会学

現場で使える教育社会学

今年度,初めての担任や初めての生徒指導部での経験から,(やはり初めて)生徒の「問題行動」の裏側にある様々な事情を真剣に考える機会を得た。
そして,これまで学校教育の中でも教科教育(特に英語教育)についてばかり考えてきた自分の教師としての「脆さ」を自覚し,教育社会学なる分野をより深く学ぶ必要性を痛感した。

そんな折にタイミングよく出版されたのが,中村・松岡(2021)『現場で使える教育社会学: 教

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『英語教師を変える楽しい学び直し』

『英語教師を変える楽しい学び直し』

登田龍彦(2021)『英語教師を変える楽しい学び直し 自律的学習を導く語彙・文法指導の原点』 を読んだ。

「ことば(母語そして外国語)への気づきを通して,自律的学習のできる子どもを育てる」(p. 279: 強調引用者)という筆者の目的の達成への道は決して楽ではなさそうだが,英語学を軽くかじってから英語教師になった自分としては総じて面白く読めた。

本記事では本書の中から特に英語教師全体に共有され

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松岡亮二(編著)『教育論の新常識 格差・学力・政策・未来』

松岡亮二(編著)『教育論の新常識 格差・学力・政策・未来』

学校教育における「格差」「学力」「政策」そして「未来」に関わる計20もの章があり,どの章が「必読」であるかは人によるところはあるでしょうが,私の雑な感想を一言で言えば,学校教育の話をする可能性のある人全員に読んでもらいたい本です。

GIGAスクール構想であれ,コロナ対応のオンライン授業であれ,大学入試であれ,21世紀型スキルの教育であれ,何を話題にするにしても本書の内容(またはそれに近いもの)を

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『第四次産業革命と教育の未来—ポストコロナ時代のICT教育』

『第四次産業革命と教育の未来—ポストコロナ時代のICT教育』

佐藤学(2021)『第四次産業革命と教育の未来—ポストコロナ時代のICT教育』を読んだ。

本書は手に取りやすい形で「第四次産業革命」(日本風に言えばSociety5.0)や新型コロナウイルスのパンデミックによる世界の劇的な変化を描写,近い未来への危惧を表明し,今後必要とされる教育の在り方を論じている。

「人材」概念の変容(pp. 33-40),日本式「個別最適化」の脆弱さ(pp. 44-46)

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『民主主義の育てかた』読書会 #5

『民主主義の育てかた』読書会 #5

神代(2021)『民主主義の育てかた』の読書会。前回の記事から時間が空いたが第4章・古里貴士「公害教育論—生存権・環境権からのアプローチ」を見ていく。

全体としては今流行りのESD(持続可能な開発のための教育)を捉え直すべく,戦後教育学における「公害と教育」問題を取り上げているが,やはり英語教育を中心として言語教育に関わる人間の集まる読書会というだけあり,言語教育の抱える課題に即して捉えられる部

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『なんで英語,勉強すんの?』

『なんで英語,勉強すんの?』

朝の小一時間でサラッと読んでとりあえず学級文庫に置くことを決定。

タイトルにある問いに直接的に理屈で答えるというよりは,「結局『なんで英語,勉強すんの?』ってことが知りたいわけじゃなくて,『英語,よく分からないし大変だから勉強したくない』って言いたいんでしょ」という雰囲気で,どうしたら楽しく英語が勉強できる(可能性がある)かを筆者の学生時代のエピソードや若者に流行りのアーティストなんかにも触れな

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『民主主義の育てかた』読書会 #4

『民主主義の育てかた』読書会 #4

毎週火曜夜に行うこちらの本の読書会。

今回も小学校教員・中高一貫校教員・大学院生(修士課程・博士課程・教職大学院)と多様なメンバーで。

今週は第3章 三谷高史「「地域と教育」論—コミュニティ・スクールは誰のために」

(本記事の引用元を表す頁数は,特にことわりのない場合,本章からの引用である。)

コミュニティ・スクールとは私立中高一貫校で働く私はコミュニティ・スクールという概念についてすらよ

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『民主主義の育てかた』読書会#3

『民主主義の育てかた』読書会#3

こちらの本の読書会。「はじめに」から毎週火曜日の夜に1章ずつ進めて今週は第2章,大日方真史「「私事の組織化」論—教師の仕事にとって保護者とは」

前回の第1章に比べると幾分か読みやすい文章で正直助かった。

とは言え,議論は毎度の如く深まり,特に保護者との関わりを日々意識する小中高の現職教員陣はその関わり方について(少なくとも私としては)普段意識しないレベルまで言語化する機会を得た。

また,今週

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『民主主義の育てかた』読書会 #2

『民主主義の育てかた』読書会 #2

神代健彦(編著)『民主主義の育てかた』の読書会

今回は第1章。

「はじめに」を読んだ前回についてはこちら▼

「国民教育権」論の限界改正前教育基本法(昭和22年)の第十条を参照すると,

教育は,不当な支配に服することなく,国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。

とある。

戦後直後(1947年)に制定されたこの法律に基づけば,教育は国民全体の意思に従って行われなければなら

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『民主主義の育てかた』読書会#1

『民主主義の育てかた』読書会#1

神代健彦(2021)『民主主義の育て方 現代の理論としての戦後教育学』をゆっくり読み進める読書会を始めた。

noteとして公開しながらも,読書会の記録としての機能も兼ね一つの記事の中で考えがコロコロ変わることもあり得る。

また,対話の中で生まれた言葉・アイデアも,個人のセリフではないような形で導入する部分がある。

そんなわけで,実際に行われた読書会を基にしたフィクションとも言える。

また,

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『ナラティブでひらく言語教育—理論と実践』 雑感

『ナラティブでひらく言語教育—理論と実践』 雑感

北出・嶋津・三代(編)『ナラティブでひらく言語教育—理論と実践』を読みました。

高校生の言語学習・言語教育実践から,言語教育研究・言語教師養成まで幅広く言語教育に関わる諸分野におけるナラティブ・アプローチの実践が紹介されています。また,前半は理論編ですので「ナラティブ(・アプローチ)って何?」という人もこの本から入門することも可能かと思います。

どうでもいいけど,表紙めっちゃかわいい。どうでも

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新谷奈津子先生のオンライン講座「ライティングにおけるフィードバックのありかた:第二言語習得研究の成果と課題」を聞きました

新谷奈津子先生のオンライン講座「ライティングにおけるフィードバックのありかた:第二言語習得研究の成果と課題」を聞きました

大阪大学マルチリンガル教育センター様主催の令和3年度大阪大学マルチリンガル教育センター公開講座「英語教育オンラインセミナー」第1弾
「ライティングにおけるフィードバックのありかた:第二言語習得研究の成果と課題」(新谷奈津子先生)
を拝聴しました。

今まであまり勉強してこず「なんとなく」でやってきた分野だったので,基礎的なことをしっかり整理して学べた良い機会でした。

振り返りも兼ねて,書きつつ考

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『デジタルで変わる子どもたちー学習・言語能力の現在と未来』 読了。

『デジタルで変わる子どもたちー学習・言語能力の現在と未来』バトラー後藤裕子

週末の保護者会で生徒たちのネット依存問題について少しだけ話をしなければいけないということもあって,何か知見を得られればと急ぎで読破。
途中までは(本来の目的通り)保護者会で話せそうな内容を探しながら読んでいたが,後半,特に第7章「デジタル時代の言語能力」は数年先に英語(国語)教師をしていることが予想される全人類に読まれた

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