記事一覧
懐かしくなったので友について記す 5
芋坂跨線橋は夕暮れだった。無数に敷かれた線路の上を数分おきに電車が通過して、そのたびに鉄輪がきしむ音が辺りに響く。僕たちはその音が聞こえなくなるほど、互いの話に集中していた。
りょうは浪人して大学に行くことを告白してくれた。僕は無名の職業学校に進学して、早く就職するつもりだった。
思えば、僕は受験に失敗したおかげでこの愛すべき友人と出会えた訳だが、僕は受験の失敗によって自分の行き先が分からくな
懐かしくなったので友について記す 4
ある夜、僕たちは新宿のバスターミナルにいた。今でも思うことだが、新宿の夜空はきっと日本で一番明るい。
僕たちは、街で見かけるスキーツアーのパンフレットの中で一番安いツアーに申し込み、誰一人板やブーツなど持たずに、眠らない街に集合したのだった。
最初に行ったのは斑尾、木島平あたりだったと思う。初心者の僕たちは、散々雪山で転んだあとに深夜まで賭けトランプをして、今度は笑い転げていた。
これと関連
懐かしくなったので友について記す 3
よくよく考えると、四角関係であったのは一年あまりだったと思う。漫画のようなシチュエーションは、実はそれほど長い時間ではなかった。
気づけば、「りょうとみか」はいくつかの大きなケンカを経て(この情報ももちろん筒抜けである)、4人で誕生日を祝うことはできなくなった。しかし、僕は今でも、この一時期のことを恥ずかしげもなく「奇跡」だと思っている。
もしかすると、僕から見て異世界の主人公であったりょうと
懐かしくなったので友について記す 2
彼と出会った時、僕は15歳だった。
とある年の4月、芸術系の高校受験を失敗し、普通すぎる学校にひっかかった僕は、元々暗い顔をさらに暗くして学生証の撮影に臨んでいた。
そこで初めて話した人間がりょうだった。
全員が初対面という空間で、多くの人がそうであるように、いや多くの人よりもかなり高めに警戒レベルを上げていた僕に、隣に立つりょうは笑顔で話しかけてきた。
みんなに見られてると緊張するよね。