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※若干ホラー、グロ要素あり注意

千葉県を走る東金道路はとても暗い。

それまで、僕たちの走る黒い路面と黒い木々、そしてオレンジ色の光しかなかった空間で、それは明らかに違う色合いをしていた。
なんだか色が多くて、上の方が白っぽくて、でもはっきりとは見えない。

車の速度もある程度出ていたので、左の路肩沿いにある「それ」はどんどん近づいてきて、友だちもその存在に気付き始めた。

うわああ人だ!

車内は一気にパニックに陥った。
休憩所なんて相当前に通り過ぎたっきりで歩ける距離ではない。
第一、なんの明かりもない高速道路の上に、人が立っていることなんてあり得ない。
もしかすると通りがかる車に何事かを仕掛けてくる犯罪者なのか、それとも幽霊のたぐいなのか、うら若き僕たちは命の危険を感じて悲鳴を上げた。

悲鳴を上げうずくまる友だちを横目に見つつ、不運なことに運転手の僕は目をそらすことができない。力いっぱいハンドルを握り事故を起こさないようにその「人」の脇を走り抜けた。

しばらくの間、僕たちはその人から逃げるようにして無言で車を飛ばし続けた。女の子は泣いていたかもしれない。
タイヤの音だけが響く車内で、先ほどの記憶が何度も再生されていた。
少しずつ話す余裕が出てきてた僕たちは、すぐに高速を降りることを決めた。

近くのコンビニに停車したことでやっと生きた心地になり、お互いに何が起こったのかを確認した。
人影はおそらく男性であったこと、特に何も起きずに走り去ったこと。
見たものは皆概ね同じだった。

僕たちは意気消沈して海どころではなくなり、そのまま家に帰ることになった。
高速を使わない長い帰り道の中で、時間が経つにつれてみんな少しずつ明るさを取り戻しつつあった。
しかし、僕の心には一つだけ引っかかっていることがあった。

あの人、体の何かがおかしかった気がする。

僕は、その不思議な姿勢を見たことがあった。
それは、上から吊るされた人がなるものだ。
まるで首がないかのように、頭が前方にガクンと下がってしまう恐ろしい姿勢。反対に手足はだらんとしていて直線的だった。

あの瞬間を一番しっかりと目撃してしまった僕は、心の中で思い返した。

走っていた道は高架で、道路の下は深い森だった。
時折高い木が頭を出していた。もしかするとその木の枝から?
あるいは外灯から?
しかしどうやってあの場所まで来たのか?

冷静に考えるとつじつまが合わない部分もあるが、どうしても不安がぬぐえない。
僕は、翌日になって管轄する東金警察署に電話をかけてみた。

「あの、もしかしたら気のせいかもしれないんですが、昨日夜中に東金道路を走っていて、道路に人が立っていたんですが、その姿勢がなんだかあの…」

応対した警察官も不審に思ったのか、僕の個人情報をしっかりと収集して確認すると言っていた。
それから何の連絡もなかったので、おそらく事件ではなかったのかと思っている。

しかし、ではなぜあの場所に人がいたのか、あるいは幽霊のたぐいだったのか。という不可解な謎は今も残ったままで、時折僕の心をゾワゾワさせる。

カーナビなどないオンボロの車に乗っていたので、詳しい場所は分からないが、以下に引用した動画のどこかに、その場所はあるんだと思う。
今見てもほとんど外灯がないようなので、郊外を走る高速では、毎晩深遠なる闇が広がっていることを想像していただき、安全運転に務めていただければと思う。

https://youtu.be/i6amyiXMTVM?si=32q3Q-MDzDtESkVD

youtubeより KY. Hori さんの動画を引用させていただきました。

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