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月星真夜(つきぼしまよ)
2024年9月2日 06:54
その夜、東京駅八重洲口のペデストリアンデッキに辿り着いたウサギとカメは、「光の帆」のような青い大屋根の下を、赤い燈籠に導かれるように歩いていた。「丸の内口は時を感じさせる赤レンガ造りなのに、ここはまるで雰囲気が違うのね」洗練された景色に目を奪われながら、ウサギは静かに呟いた。「見て!おみくじがあるわ」ウサギは瞳を輝かせながら、ひときわ光を放つ一角に向かって足早に駆け寄った。「このミス
2024年8月30日 06:21
図書館の予約棚に並んだ本の背表紙を、ウサギはさっきからじっと見つめていた。「今、こういう本が読まれているのね」ウサギの視線がふと止まった。その先には一冊の絵本があった。「『パンどろぼう』……なんだか、気になるわね」と、彼女は呟いた。どこか懐かしくて、不思議な温かさが、そのタイトルに漂っていた。その時、偶然カメがそばを通りかかった。「その絵本、面白いよ。これからその世界に行ってみようよ」
2024年8月25日 06:51
図書館の静けさの中、カメが書架の間を彷徨っていると、入り口の方から、突然、荒い息づかいが聞こえてきた。カメがそちらに目をやると、ウサギが膝に手を当て、肩で息をしているのが見えた。「毎日こんなに暑いのに、無理しないでね」と、カメは心配そうに声をかけた。ウサギは息を整えながら、少し微笑んだ。「走るのは大好き。でも、走り終わった後って…やっぱりきついわ」「頑張ってる君と一緒に行きたい場所がある
2024年8月18日 06:55
汗を拭きながら図書館に入ったカメは、ふとした違和感に目を留めた。よく見ると、検索機の前で深刻な顔をしたウサギが、ぎこちない動きで何かを一生懸命に探していた。カメに気づいたウサギは、しょんぼりした顔でトボトボと歩いてきた。「端末の操作って本当に苦手。やっと検索できたと思ったら、読みたい本は貸出中。ついてないわ」「こうなったら、展覧会に行くしかないわね」とウサギは言い、状況がよくわからないカメ
2024年8月2日 06:07
図書館の閲覧席でカメが静かに物語の世界に浸っていると、突然、フラフラとした足取りでウサギが現れた。彼女は言葉を失ったまま、カメの隣の椅子に力なく座り込んだ。図書館の涼しい空気の中に、ウサギの全身から放たれる暑さが、そっと忍び寄るように広がっていった。カメは「大丈夫?」と声をかけながら、彼女の目の前に、冷たいミネラルウォーターをそっと差し出した。「その様子だと、かなりの涼が必要だね」とカ
2024年8月1日 07:02
静かな図書館の閲覧席で、ウサギが夢中になってページをめくっていた。時折、手を止めては、うっとりとため息を漏らしている。「今読んでいるのはスイーツの本か、それとも涼しくなれる本だよね?」と、正面に座っていたカメが静かに声をかけた。ウサギはびっくりして顔を上げた。「どうしてそんなことが分かるの?当たりなんだけど…」彼女の手には水族館の本がしっかりと握られていた。カメはそっと彼女の手を取る
2024年7月31日 06:38
図書館に向かって、汗を拭いながらゆっくりと歩いているカメの背中に、元気いっぱいのウサギが追いついた。「ねえ、私、撮り鉄してみたいの!」ウサギは夢見るような瞳で、突然そう言った。「電車の写真なら、図書館の分類番号686.2の書架にあると思うけど、自分で撮るならやっぱり現場だね」カメはそっと彼女の手を取ると、来た道を引き返し駅へと向かった。電車を降りた二人は、味わい深いレトロなレンガ造りのマ
2024年7月24日 06:11
図書館の閲覧席で、ウサギとカメは肩を並べて本を読んでいた。「今日もとても暑いわ。こんな日はやっぱりかき氷が一番よね」とウサギが言うと、カメは優しく微笑み、そっと彼女の手を引いた。「ねえ、どこに行くの?」驚きながらもついていくウサギにカメは静かに答えた。「分類番号147.6の書架に幽霊がいるんだけど、もっと涼しくしてあげるよ」電車に飛び乗った二人は、立川の「オバケ?展」の会場の前に辿り着い