月響(げっきょう)15

月響(げっきょう)15

ナリタ君が第一志望の大学に合格を決め、しかも私大ではかなりの難関で 現役合格はむづかしいとされている学科だったので、新潟のおじいさんは とても喜んだらしい。 一方で舞子ちゃんは三学期に入ってから不登校になっていたそうで、 ナリタ君のお祝いと舞子ちゃんの気分転換を兼ねてナリタ一家の里帰りは 計画された。 私は舞子ちゃんが不登校になってたのを知らなかったから、それを聞いて 胸がキッと痛んだ。 ナリタ君やお父さんお母さんも心配だったのだろう、それで春休みを待たずに新潟に行くこ

ヨガと予知と中央線・17『明の二日目』

ヨガと予知と中央線・17『明の二日目』

ヨガスタジオを出て、朝食を取ることにした。とはいえ、まだ時間は九時ぐらいなので、開いている店が少ない。 「あ、松屋に入りません?」  ケイが松屋を見つけると嬉しそうに言った。 「いいよ。ケイさん、松屋好きなの?」 「気になっていたんですけど食べたことないんですよ」 「ほんま。じゃあ入ろうか」   毎日のように松屋に入っている明としては、何も考えずにメニューを選べたが、ケイは券販売機の前でけっこう悩んでいた。 「けっこうメニューあるんですね。へえ、牛丼だけじゃないんだ。うう

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ヨガと予知と中央線・16『明の二日目』

ヨガと予知と中央線・16『明の二日目』

『天間明の二日目』  明は目覚ましの音で起きたが、時間を見ると予定よりも三十分も遅い目覚めだった。どうやら音を聞きながらも寝続けていたようだ。 待ち合わせはケイのマンションの前で六時だが、もう五時半になっている。明は飛び起きると、シャワーを浴びて、身体を拭き、電気シェーバーで髭を剃った。髪をドライヤーで乾かしながら、今日の服を用意していないことに気がつく。   さすがに今日はデートなので少しはおしゃれをしようと思っていたが、服は五十鈴が片付けたので、乾燥機に入っている普

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ヨガと予知と中央線・15『景子の二日目』

ヨガと予知と中央線・15『景子の二日目』

私は部屋に入ると、まずシャワーを浴びた。やっぱり夏は帰ったらまずシャワーだよね。 うがいと手洗いと汗を流すのを同時に済ませて、さっぱりしてから部屋着に着替えた。 それから買ってきたバッグを箱から出して、明日の準備をする。何か入れ忘れたものはないかなと部屋を見回すと、テーブルの端に目が行く。昨日、暴漢に半分に切られたお守りが置いてあった。   お守りを見て、心にじわりと泥水が湧き出るのを感じた。弟の明人(あきと)のことを思い出す。楽しかった今日との差が激しく目が少し潤んで

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ヨガと予知と中央線・14『景子の二日目』

ヨガと予知と中央線・14『景子の二日目』

お腹も大満足したので私たちはお店を出ると、今度は明さんに私の買い物に付き合ってもらう。そう言えば当初の目的は私のバッグを買うことだったけど、すっかり忘れていた。明さんのおかげで九十万ほどのお金が手に入ったけど、迷いに迷って、前と同じバッグを買った。 良い水玉模様のバッグが他になかったからね。水玉のバッグは私のこだわりの一つ。私の憧れのナタリー・ポートマンが持っているのを見て、格好いいと思ったからってだけなんだけどね。  私たちはしたいことも終わったので帰ることにした。デー

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ヨガと予知と中央線・13『景子の二日目』

ヨガと予知と中央線・13『景子の二日目』

吉祥寺で一度降りてしまったけど、また同じ中央線に乗った。吉祥寺もいい店はたくさんあるけど、気分の問題で新宿へ行くことに。休日ぐらいは少し遠出をしたいものね。それに吉祥寺にいるとうっかり私を狙う犯人と出くわさないとも限らないし。  新宿に着くと、私はいいアイデアが閃いた。せっかく明さんと一緒にいるのだから、いつも通りの買い物だとつまらない。いま明さんはお金を持っていることだし、使ってもらおう。ふっふと私はほほを緩ませた。 「明さんは服を買わないんですか?」 「服? 服かあ。

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「姉妹で作る、心癒される空間」

「姉妹で作る、心癒される空間」

 中野駅南口を出てまっすぐ南に歩くと辿り着く、五差路になった交差点。  その一角にあるビルの前で、ふと良い香りに導かれて見上げた細く長い階段の先に見えるSapinの文字。  アロマオイルや手作りの雑貨が並ぶ店内から、笑顔で出迎えて下さった三川恵美さんにお話をお伺いしてきました。(以下敬称略) with you05 三川恵美さん 楽しいこと、そして余裕を持つこと―よろしくお願いします。  今日は中央線芸術祭2021のテーマでもある「with you」にまつわる質問からお話を

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ヨガと予知と中央線・12『景子の二日目』

ヨガと予知と中央線・12『景子の二日目』

私たちはぼんやり次のレースが始まるのを、窓際の席に座って待った。周りではおじさんたちが新聞を見ながら熱心に予想をしている。凄い集中力でまるで人生をこのレースに賭けているみたい。 それを見て、ふと明さんのこれまでの生活を思い出した。もちろん四六時中一緒にいたわけではないから断言は出来ないけど、明さんはこの予知の力を取り戻すために、人生のすべてを捧げていたように思う。遊びや恋愛に目もくれずね。 もちろんこんな凄い力を持てたらこうやってお金も稼げるけど、そのためだけに明さんはヨ

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ヨガと予知と中央線・11『景子の二日目』

ヨガと予知と中央線・11『景子の二日目』

「アシュタンガヨガはどうでした?」  私は起き上がった明さんにタオルを渡した。 「こんなハードなんもあるんやな。めっちゃ疲れたわ」  そう言いながら明さんはにこりと笑っていた。 「アシュタンガヨガはパワーヨガでアクティブに動くヨガですからね。慣れるまでけっこう疲れますよね」 「ほんまやなあ。ケイさんは女性にしては肩がごっついから何でかなって思ってたけど、このヨガのためなんやな」  アシュタンガヨガは腕立て伏せのような動きがポーズの合間に入るため、腕の筋肉も付く。肩が角ばって

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月響(げっきょう)14

月響(げっきょう)14

ジョナサンは駅からけっこう離れてるんだけど、土曜のティータイムだし 若者や家族連れでいっぱいだった。 でも窓際にちょうど良い席が空いていたので、私は持って来たメガネを 掛けるとぼんやり外を眺めながらミサキの到着を待った。 この店は私達のお気に入り、ナイスロケーションなのだ。 まずTSUTAYAの二階に在るのがよい。 受験生になる直前の去年の今頃なんかは、いつも必ず両方行って時間を 潰していたもんだ。 店内はほぼ半円形をしてて円周部分は全面大きな窓になっていてとても