浅草ノスタルジア 両親との幸福な記憶
山田太一の「異人たちとの夏」を読んだ。
初版発行は1987年とかなり昔に出た話である。
妻子と離婚したばかりの40過ぎのシナリオライターの男と異人たちとの交流を描いた物語である。
ここでいう異人とは、死者のことだ。
独り身になり孤独な日々を送る男は、ある日浅草で両親と再会する。両親は男が12歳の時に交通事故で若くして亡くなっていた。だが、両親は若い時の姿のまま現れる。男は死別した筈の両親の住む浅草の路地裏にあるアパートに通い、心温まる団欒の一時を過ごすようになる。少年の頃