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小説

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カクヨムなどの小説投稿サイトに掲載しているものの中から掌編小説、または二次創作をnoteに掲載しています。
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#短編小説

【二次創作小説】アンパンマン補完計画:序

【二次創作小説】アンパンマン補完計画:序

「出たなお邪魔虫!」
「バイキンマン、悪いことはやめるんだ!」

 今日もアンパンマンはバイキンマン退治のために戦っていた。晴天の中、悪と正義の声が響き渡る。

「今日こそは倒してやる! アンパンマン!」

 そう宣言するバイキンマンはUFOの下から大量のカビルンルンを放出してくる。

「させるか!」

 アンパンマンはすぐさまカビルンルンを殺しにかかろうとした。しかし、カビるんるんが光を発しだし

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【二次創作小説】クロノスタシス

【二次創作小説】クロノスタシス

 あ、クロノスタシスだ。

 この言葉を知ってから、その現象を目にする度にそう思うようになった。

 クロノスタシスとは進んでいるはずの時計の一瞬止まって見える現象のことを言う。それは秒針だったり、デジタルなら秒数だったりするけれど、誰もが経験したことあると思う。

 たった今、俺も経験した。

 休日の昼下がり。ベッドから上半身を起こして、掛け時計を見た瞬間のことだ。

 せっかくの休日をまたも

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【小説】僕の敵

【小説】僕の敵

 三百六十度、荒野だった。草木は枯れ、茶色いゴツゴツとした地面、遠くには岩肌を見せた山々。空は晴天で、俺の目の前にはコンクリートで整備された一直線の道があった。

 俺はその道をひたすら走り続けていた。気づけば走っていた。そしてなぜか走りをやめようという思考には至らない。キツいなんてものは微塵も感じなかった。

 これは夢なのだろうかと考えたことがある。いささか子供らしい確かめ方だが、頬を抓ってみ

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【小説】Childhood

【小説】Childhood

 ボタンを押し、落ちて来た缶コーヒーを手に取ると、その自動販売機の横にあるベンチへ気だるそうに座った。気だるそう、というか実際気だるかった。

 この公園は、ここらではかなり大きい方で敷地面積はもちろん、遊具も充実している。滑り台、ブランコ、砂場、ジャングルジム、このご時世では珍しいシーソーもある。皆、それぞれ好きなところでガヤガヤはしゃいでおり、少し年齢が上がると鬼ごっこをしたり、ボールを持ち込

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【小説】火点し頃のワンショット

【小説】火点し頃のワンショット

 グラウンドからは部活生たちの健康的な奇声が聞こえ、青春アニメの放課後を思わせる。一方、淡い朱色の教室は対照的に静かだった。シャープペンシルの芯が紙の上を走る音だけが僕の耳に届く。なぜなら教室には僕しかいないからだ。放課後、女の子と駄弁るなんて行為は、チャラリラパラリラ運動系男子がやってればいいのだ。チャラリラパラリラって何だよと思いながら独り笑う。

 パキッとシャー芯が折れると同時に、教室の扉

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【小説】土に落ちた汗は光り消えた

【小説】土に落ちた汗は光り消えた

 太陽の明かりが黄色がかり始める午後四時。我が校の体育祭は紅団が勝利を収め、無事に終了した。

 湯木明里が教室に戻ると、既に半数以上のクラスメイトが帰ってきた。ハチマキが机の上に散らかってたり、写真を撮っているものもいたり。そして、汗とグランドの匂い。それらを感じることはこの先もうないのだと思うと、高校生活最後の体育祭が終わったことを痛感した。

「明里、私たちも写真撮ろ」

 そう呟きながら、

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【二次創作小説】眠り姫

【二次創作小説】眠り姫

 大きな翼をもつドラゴンが僕らの行く手を阻む。僕らの二倍以上ある巨体を有するドラゴンだが、なんてことはない。僕らは勇者の剣を見つけたんだ。これがあれば何も怖くない。しかし、僕はその剣を持っていない。持っているのは彼女だ。

「僕がドラゴンの気を引く! 君はその剣でとどめを刺して!」
「わかったわ!」

 僕は隙を作るためにそう言って、駆け出す。ドラゴンがボーっと火を吹いてきたが、ここまでの冒険で鍛

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【二次創作小説】Lemon

【二次創作小説】Lemon

 また、あの時の夢を見ていた。

 私はベッドから起き上がり、西日の差し込む窓のカーテンを開けた。私の顔が朱色に染められ、反射的に目を瞑る。

 お世辞にも広いとは言えないこの部屋は、女子大生の部屋にしてはいささか殺風景で、何か小物を買おうにも何を買えばよいのかわからず、いつも買い物はただの散歩になってしまう。

 その話を彼にしたら、笑って聞いてくれた。彼の笑顔が頭に浮かぶ。
 忘れられないあの

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【小説】夜明けの眠り姫

【小説】夜明けの眠り姫

君が眠ってから何度も太陽が昇っては沈みを繰り返した。

 この夜が明ければ四十万回目の日の出だ。

 僕は心の中でそう呟きながら、静かに眠る君の綺麗な頬を撫でた。潤いのある綺麗な肌だ。

「まったく、本当に子どものままでいるなんてね」

 魔法はもう解けたのに。
 おかげで僕はもうおじいちゃんだよ。

 でも君だけはまだ魔法にかかったまま。

 あの頃が懐かしいな。もうずっと前のことなのに、昨日の

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【小説】悪夢の朝

【小説】悪夢の朝

嫌な夢だった。

俺はよく家族と行くとあるショッピングモールにいた。基本いつも、そこに着いてからは家族とは別行動をして後で集合するといった感じだ。

その日もそうで、俺は本屋に向かった。
聞いたことのない作家の本が新刊コーナーにたくさんあった。見知った名前もあるが、村上春樹くらいだ。本当に聞いたことがない。日々、文学関係のニュースはチェックしているのだが見落としがあったのかもしれない。

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【小説】不純異星交遊

【小説】不純異星交遊

 今日の収益は……一万五千円か。まあ、二時間の路上ライブにしては上出来だろう。CDは二枚しか売れなかったが。

 シンガーソングライターを志して五年。二十歳を過ぎていつまでもこの状態じゃどうしようもないな、と最近感じてきていた。ありがたいことに事務所に拾われ、CD発売にもこぎつけたが全く売れない。しかし、CDが発売出来たということは少しは才能があるんじゃないかとも思ってしまい、きっぱり諦める気にも

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