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【二次創作小説】アンパンマン補完計画:序

「出たなお邪魔虫!」
「バイキンマン、悪いことはやめるんだ!」


 今日もアンパンマンはバイキンマン退治のために戦っていた。晴天の中、悪と正義の声が響き渡る。

「今日こそは倒してやる! アンパンマン!」

 そう宣言するバイキンマンはUFOの下から大量のカビルンルンを放出してくる。

「させるか!」

 アンパンマンはすぐさまカビルンルンを殺しにかかろうとした。しかし、カビるんるんが光を発しだし、アンパンマンはあまりの眩しさに目を背けた。

 その光は一点へと集中し、一つの異形を作り上げた。

「な、何?」

 その異形は人型で、表皮は黒く、頭はない。しかし体の上部には赤く光る点が2つ並んでいる。その異形は青空に咆哮を上げる。心臓が震え、街が戦慄する。異形はとにかく大きかった。

「見たか、アンパンマン! これが俺様の新兵器! 合体生物兵器・テリウムだ!」
「どんな奴が相手だろうと、僕は負けない!」
「どうかな、アンパンマン! 今日こそ俺の勝利になるぞ」

 バイキンマンがゲラゲラ笑うと、テリウムがアンパンマン目掛けて走り出す。アンパンマンも飛び出すと、テリウムを直接迎撃する。

「アーンパーンチッ!」

 アンパンマンの拳はテリウムの腹にヒット—するはずだった。彼の拳は空を切り、体が動かなくなる。そしれ尋常じゃない腹痛が彼を襲った。

 気がつけばアンパンマンはテリウムに握られていた。そして、もう片方の指の爪でアンパンマンの胸を一突き。

「うあああああああああっ!」

 彼の意識はそこでプツリと切れる。

 アンパンマンは死と共に、初めてバイキンマンに敗北した。


※  ※ ※


「生命体反応! テリウムです!」

 カバの青年が声を上げ、それを聞いた老女が指示を出す。

「迎撃準備。主砲天海。コード:Shushoku、Curryはいつもの装備だ」

 元パン工場、現ジャムズ本部。その管制室のモニターにテリウムがゆっくりと近づいて来ている映像が映し出される。姿は目が青いだけで二十年前の3号とそっくりだった。

「チーズ! コード:Meron! 主砲へ!」
「はい!」
「アン!」
「カバオ! あんたは私とここだ!」
「了解です!」
「ではテリウム殲滅を目標とし、A作戦を開始する! 本作戦の指揮は私! バタコが務める!」



「くたばれ!」

 コード:Curryの名を持つカレーパンマン、金髪の青年は二丁の小銃を手に空を待っていた。その銃をテリウム目掛けて発砲。両目を撃ち抜いた。

「しゃらあいっ!」
「よくやってくれました! 後は私に任せてください!」

 コード:Shushokuは食パンマンだ。黒髪で端正な顔立ちの彼はテリウムの背後に回り、腱や肩の筋肉を双剣で切り取った。すると、テリウムは膝から崩れ落ちた。

「ナイスだぜ! 食パンマン!」
「あなたが目を潰したおかげですよ」

 カレーパンマンは照れながら鼻を擦る。

 −−ドン!−−

 乾いた音と共に巨大な弾が飛んできて、テリウムの腹に大きな穴を穿った。

「今回は早く片付きそうだな」
「カレーパンマン、フィナーレはあなたに」
「はいよ!」

 空高く飛び上がるカレーパンマン。二丁の銃をホルダーにしまい、両手を頭上に掲げる。

 その手に炎の渦が巻かれ始め、やがてそれは球状になる。

「火炎球・辛!」

 カレーパンマンが両手を振り下ろすと、火球も手から離れ、テリウムに向かって落ちていく。食パンマンはすかさず、能力上昇効果を火球に付与。それによって炎の勢いが増す。そのまま見事テリウムに命中した。

 大爆発を目の前にカレーパンマンと食パンマンの二人はガッツポーズを決めた。


 ジャムズ本部。管制室。

 バタコはモニターを見ながら、独り言を漏らす。

「嫌な予感がするね」

 その刹那、カバオが驚きの声をあげた。

「爆心地に生命体反応!」
「やはりか」

 モニターに映る黒煙が晴れると、そこにはテリウムが立っていた。損傷した部位を再生させて。

「……シールドタイプ。それも高度な再生力も兼ね備えているようだね」



「何よ、あれ」

 コード:Meronと呼ばれる小柄な少女、メロンパンナは絶命していないテリウムを見て戦慄していた。

「倒れてよ!」
「アンアーン!」

 チーズとメロンパンナはそれでも発砲を続ける。

 しかしテリウムのシールド効果により、一発の被弾もない。



「チャキいんだよ! もう一発くれてやらあ!」

 と、カレーパンマンは再び火球を作り出す。

「火炎球・激辛!」
「能力上昇!」

 さらに大きな爆発が起こる。それでもテリウムは倒れなかった。

「これ以上は焦げちまう。ダメだ」

 カレーパンマンがぼやくと、

「次は私がやってみます」

 と食パンマンが前に出た。

「サンドウォール!」

 食パンマンがそう叫ぶと、二枚の巨大な岩の壁がテリウムの足元から飛び出し、テリウムに向かって倒れる。しかし体勢を崩しただけで大したダメージは入っていないようだった。

「なんて耐久力……」
「ったくどうしてこんな時にあいつはいないんだ!」

 その瞬間。テリウムのシールドが崩れる。

 二人が上空を見上げると、黒いマントを身に纏い、包帯で顔をぐるぐる巻きにしている少女がいた。包帯の隙間から覗く目はテリウムの姿をしっかりと捉えていた。

「早くしてくれない? すぐに回復されるよ」

 コード:Roll、ロールパンナだ。ジャムズの中でも突出した戦闘力を誇るパン戦士である。

「何してるの。早く。火球」

 カレーパンマンが慌てて、

「火炎球・激辛!」

 と火球を作り、食パンマンの上昇効果を受けた後にテリウム目掛けて放つ。

 再び大爆発が起こり、爆風で三人のマントが靡く。

『テリウム、完全に消滅しました』

 カバオの声がパン戦士らのイヤホンに響き渡った。


※  ※ ※


「全員集まったね」

 バタコが皆に向かって言う。皆というのは食パンマン、カレーパンマン、メロンパンナ、ロールパンナ、カバオ、チーズのジャムズメンバーのことである。

「今日集まってもらったのは他でもない。例のアンパンマン補完計画についてよ。まず、あなたたちパン戦士が今の姿になっている理由は今更説明するまでもないよね?」

 そのバタコの問いに食パンマンが答える。

「はい。“人間”がたくさんいた頃、謎の細菌を入れられたパンを食べた人間がパン戦士らになり、バイキンマン一世を滅した。その戦争の最中で人類は激減してしまい、私たちやバタコ指令はその生き残り。バイキンマン三世が今の敵。なお、私たちは本来の能力を失い、パンの姿になりながらも、平和に暮らしていた。けど、テリウムが出現してから今までの力では叶わなくなり、本来の姿で能力を再び使うことになった。つまり、私たちの姿はパン戦士本来の姿であり、完全体だと」
「その通り」

 バタコは頷く。

「あなたたちはその力を使って、テリウムを倒し、バイキンマンを倒し、来る四世に備えてアンパンマンを補完しなくてはならない。これがあなたたちの最後の任務よ。

 カレーパンマンは生唾をごくりと飲む。

「さあ、そろそろ出発よ」

 七人はアンパンマン号R型に乗り込む。アンパンマン号R型というのは、人型ロボットに変形可能に進化したアンパンマン号である。それに対テリウム戦に特化するように改装してある。

「アンアンアン アンアンアン アンアーン(アンパンマン号R型 起動)!」

 と、チーズは操縦席に着く。

 アンパンマン号の目に光が灯った。


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