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【二次創作小説】眠り姫

 大きな翼をもつドラゴンが僕らの行く手を阻む。僕らの二倍以上ある巨体を有するドラゴンだが、なんてことはない。僕らは勇者の剣を見つけたんだ。これがあれば何も怖くない。しかし、僕はその剣を持っていない。持っているのは彼女だ。


「僕がドラゴンの気を引く! 君はその剣でとどめを刺して!」
「わかったわ!」


 僕は隙を作るためにそう言って、駆け出す。ドラゴンがボーっと火を吹いてきたが、ここまでの冒険で鍛えられた筋肉でジャンプし、軽々と躱す。すると、ドラゴンは自分の攻撃を避けられたのが悔しかったのか、僕に目を付け追いかけてきた。


 やった!


 心の中でそう叫び、彼女とアイコンタクトをとる。


 もう一度ドラゴンの炎の攻撃を躱して、続けてしっぽの攻撃も回転ジャンプで見事に避けて見せる。そして彼女に叫んだ。


「今だ!」


 僕の声を合図に、彼女はがら空きのドラゴンの背中に切りかかる。初めて使う勇者の剣。伝説通り、どんなものでも切れるのかわからないが、僕は切れると確信していた。ドラゴンを倒せると。なぜなら、その剣を使っているのが彼女だからだ。こんな青空の時でも、どんな嵐の時でも、こんなに嬉しい時も、どんなに悲しい時も、手を繋いできたからわかる。僕は彼女のことを一番知っているつもりだった。彼女もまた、僕のことを一番知っているだろう。


 背を反らせ、ドラゴンに切りかかる彼女の姿がスローモーションで見えた。ようやく、その剣の先がドラゴンの背に入り、彼女が地面に着地すると同時にドラゴンは砂煙を挙げながら倒れていた。


「やったな」
「やったね」


  ハイタッチを交わした僕らはドラゴンに奪われていた財宝を村人たちへ返しに行った。とても感謝され、晩御飯をごちそうになった。「夜も遅いから泊まっていきな」と言われたが、僕らはそれを丁重にお断りした。


 僕らが冒険しているこの世界は夜の星がとても綺麗に見える。僕らはその星空を見るのが大好きだった。だから外で星を眺めながら寝る方がいいのだ。


 僕らは、川の近くの草原でテントを張り、二人で並んで寝袋に入った。いつもに増して綺麗な星空だ。そういえば、今日はペルセウス座流星群が見える日だ。まだ、見えて居なのだが何時ごろからだろう。


「次はどこに行こうか」


 彼女が星を見ながら僕に尋ねる。僕も特に彼女の顔を見ることもなく、星を見ながら答えた。


「そうだな。でも、『まだ見ぬ宝』を君と見れるなら、僕はどこへでも行くよ」
「あ、流れ星! まただ!」


 彼女が指を指したのを始め、次々と流れ星が夜空を翔けた。


「流れ星って宇宙から落ちてきてるものなんだよね」
「確か、そうだったな」
「私、『落ちてる』っていう言い方あまりしたくないんだよね……。『降る』って言い方がいい」


 僕が何で? と訊くと、彼女はこちらを向き笑った。


「ロマンチックじゃん」


 こんな日々がずっと続くといいと思っていた。


 僕らの笑い声が夜空に響き、それが止むと、彼女は高々と声を上げ、次の目的地を発表した。 


 結局、どこへ行ったかはもう思い出せない。でも僕らはまだ見ぬ宝を探しに、星の降る夜船を出したのだ。


 いつの日だったろうか。君はいなくなった。冒険を止め、数十年たったある朝目を覚ますと君はいなくなっていた。起こそうとして揺さぶっても起きなかった。僕へのいたずらかと思ったから、こちらから隠れて驚かそうとしたけど君は来てくれなかった。


 このまま君が起きなかったらどうしよう。


 いつか深い眠りに落ちてしまうのはわかってた。そうしたらもう目を覚まさないことも知っていた。


「これからは一人で戦わないといけないんだね」 


 僕はそう言って、彼女の横に寝そべり、寝顔を見ながら目を閉じた。

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早くも二次創作小説シリーズ第二弾です。今回はSEKAI NO OWARIの「眠り姫」を元に書いています。二次創作は小説を書く練習になるのでオススメです。特に一次創作の方で詰まったときに書くと、リフレッシュにもなります。次はできればオリジナルの方を載せられたらと考えています。執筆意欲が戻り次第ですが。

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