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メキシコ「死者の日」〜I Remember You〜

今回は、メキシコの「死者の日」の話。

メインの話に、『リメンバー・ミー』『007』『呪術廻戦』、隅田川花火大会、ハロウィーンなどを組合せて、解説していく。画像と動画をたくさん入れたので、飽きずに読んでもらえると思う。

Día de Muertos スペイン語で「死者の日」。11月2日と3日は、メキシコの人たちにとって、故人や先祖を讃える日だ。


主にメキシコで行われるが、他のラテン・アメリカのコミュニティーでも、独自の方法で祝われる。

たとえばカリフォルニア州サンタ・アナでは、11月2日に「祭壇の夜」が開かれる。これは、コミュニティー・ベースの死者の日の祭典だ。

サンタ・アナの街並みを見てみよう。

カリフォルニアらしいカリフォルニアに見える。

もっと近づいて見てみよう。

別の表情が見えてくる。街の一角だとしても、ずいぶんと、メキシコのような雰囲気が漂っている。

旅紹介のサイトから引用

地図を見るとわかりやすいだろう。

ここには、仕事を求めたりして国境をまたぎ、離れ離れになっている家族が存在する。

サンタ・アナで、メキシコの「死者の日」を模した祭りが行われる理由は、このあたりにあるのだろう。家族やコミュニティーを大切に想っていることが、うかがえる。

先にこの話をしたのには、理由がある。


メキシコの本家「死者の日」。

なんともカラフルで、フレンドリーなお顔。頭蓋骨(スカル)は、メキシコ人にとって、恐ろしいものではない。生命の循環を思い出すモチーフで、楽しい感じのものなのだ。


彼ら彼女らは、亡くなった大切な人をイメージして、仮装しているのだという。「あなたのことを忘れていないよ」というメッセージ。I Remember You. 

大きなスクリーンで観てキレイだった。

Monarch Butterfly モナーク・バタフライも、「死者の日」の重要な存在だ。夏が終わると、モナーク・バタフライは、北米からメキシコやカリフォルニアへ向かう。3500kmくらい飛ぶらしい。 昆虫界トップの渡り距離。

毎年11月1日頃にメキシコに到着することから、この蝶が、死者の魂を運ぶのだと。これで物語が1つ描けそうな、素敵な話だ。


遠い国の異なる文化に、自分たちと同じものを見つける時、学ぶことの楽しさを知る。

日本初の花火大会は、享保18年 (1733年)。両国大川の水神祭りにて。凶作による大飢饉と疫病で、多数の死者が出た頃。鎮魂の花火だったのだ。これが、現在の隅田川花火大会の起源である。

多くの人々に、大切な人や動物が亡くなった経験がある。私たちは、喪失体験を通じて共感しあう。たしかに、「生命は循環している」。


「死者の日」には、さまざまな花が飾りつけに使用される。代表的なのはマリーゴールド。フロール・デ・ムエルト=死者の花と呼ばれている。

死者の魂が生者の世界をおとずれる。故人や先祖が迷わず来れるように、祭りの開催場所をマリーゴールドで示す。なるほど、黄色は灯りの色と似ている。

2日間に、すさまじい数のマリーゴールドが使用される。足りない場合、造花のマリーゴールドも用いられる。とにかくたくさん。故人が道に迷わないように。とにかく盛大に。先祖が楽しめるように。

花屋と見まごう。
どうやらこれで1つの墓へのディスプレイらしい。

マリーゴールドの栽培は、大きな事業である。なにせ、どんなに生産量を増やしても、売れ残ることがないのだから。

これが花屋さんだ。

これはお菓子。食べれる頭蓋骨。

シュガー・スカルの起源は、アステカ帝国にある。かつて、アステカ帝国では、祭壇に頭蓋骨(本物)が並べらていた。スペインの探検家が影響し、その文化が少し変わった。

砂糖を使って、頭蓋骨の模倣を作るようになった。これは、実は、中東発祥の技法なのだが。砂糖・お湯・レモンを混ぜ、成形可能な状態にする。キャラメルのような感じか。

シュガー・スカルの詳しいレシピがあった。小さなお子さんがいる方など、一緒に作ったりしたら楽しいのではないかと思い。リンクを貼る。

日本のお供えものに近い感覚も、あるのだろうが。生者が食べても不適切や不謹慎ではないのだから、もしくは、先祖と一体になること?調べても答えが見つからなかったため、空想してみた。


「映画『007 スペクター』がきっかけでした。あのシーンに、現実の祭りには存在しないものが描かれたからです。パレードです」

工房「エル・ボラドール」は、2015年以降、仕事が一気に忙しくなった。

『El Volador』

映画が公開されると、メキシコ政府に、世界中から問合せが殺到。関心をもってくれた人たちをガッカリさせたくなかった政府は、この工房に相談。「やりましょう。そして映画を超えましょう」代表者は、こう答えたという。

2016年、メキシコのレフォルマ通りで、盛大なパレードが開催された。

普段の様子。広く長い直線はパレードにぴったり。
男性のガイコツ
女性のガイコツ
パレードに参加する馬もみんなとおそろいだ。

集まった16万人は大喜び。2017年には100万人、2018年には200万人と、観客は増え続けた。

地元民から文化を教わり、半年かけて準備をした「スペクター」の美術担当チーム。その様子がわかる動画。衣装は全員別々で、一から制作したそう。

こちらは完成した映像。


「死者の日」は、アステカ文明にルーツをもち、スペイン人との関わりからキリスト教文化と融合し、現代の映画の影響を受け、今の形にいたったということ。

それでも、その軸には常に、人の愛がある。与える精神がある。

ケルトの伝統であるハロウィーンの起源も、よく似ている。(今では「トリック・オア・トリート」となっているが。もてなさないとどうこうするぞというのでは、本来はない)

ハロウィーンの起源についてはまた別の機会に。

ケルト暦の1年:終わりは10月31日。始まりは11月1日。この時、死者が生者をおとずれる。
アイルランド神話:時の境目に、旧い時間は反転し、新しい時間として再生する。これには、死者の協力が必要とされる。


『呪術廻戦』
元ネタは南船北馬だという考察があるようだが
ハロウィーンの起源やアイルランド神話でも合う。
人間がたどり着く何か共通の解について考える。
『呪術廻戦 0』

私は、呪術廻戦のファンというよりも、『呪術廻戦 0』の原作からの大ファンなのだが。今回の話が、その理由のようなものだ。0は傑作。

リカの外見は、私に、メキシコのパレードの山車を連想させた。憂太をいじめるな!と敵意をむき出しにするリカには、「呪い」の恐ろしさよりも、死者による生者への庇護を感じた。

きっと、死者は、生者ほど細かい思考はできない。それでもキープされている概念は、生前の彼ら彼女らにとって、本当に大きな感情だったのだろう。

もしかしたら、自分自身よりも強く。故人や先祖は、私の幸せを願ってくれているかもしれない。

愛とは、生者間のものだけではないーー少し、映画『インターステラー』を思い出した。


“ Día de muertos un festejo donde dos mundos son uno solo. ”

「死者の日、2 つの世界が 1 つになるお祝い」

“ Día de Muertos es alegría... ¡pues ni la muerte nos separa de los que amamos. ”

「死者の日は喜びだ。死でさえ私たちを愛する人たちから引き離すことはできないからだ」


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