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日本文化の「芯」を知る

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人間が築いてきた社会の中で人々はどの様な考えを持ち思考を重ねてきたのか、それは「思想史」と呼ばれ専門家によって日々紐解かれてきました。 日本思想史を考える事こそ日本の「芯」に迫…
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記事一覧

「現代版お茶会を考える」ワークショップを開催します!

「現代版お茶会を考える」ワークショップを開催します!

2日間に渡っての開催です。1日目はお茶会とは何かを皆で議論し、その結果を2日目で実際に現代版のお茶会として披露します。

ワークショップ「現代版お茶会を考える」日本の伝統文化となった茶道。その茶道は現代人の生活と馴染んでいるのだろうか。

そもそもお茶会が表現しているものとは?

◼️1日目 お茶会を解釈する
10/30 14:00~17:00
10/31 14:00~17:00

◼️2日目 お

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現代社会とも通じる【平安時代の息苦しさ】

現代社会とも通じる【平安時代の息苦しさ】

この記事では平安貴族を取り巻いていた思想を幅広い視点から眺めたいと思います。平安時代という時代を評価することは歴史家の間でも議論が分かれており、古代的な律令が崩壊する過程と捉えるか、律令という枠組みの中で時代の変化に柔軟に適応し次代である中世への準備の時代であると捉えるかでだいぶ開きがあります。ここではそうした政治史的な視点と距離をとって思想史的な現象にスポットライトを当てて平安時代の貴族層の思想

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平安京遷都で輸入された中国文化と日本文化の危機

平安京遷都で輸入された中国文化と日本文化の危機

第50代桓武天皇の延暦十三(794)年に律令国家日本は大和国平城京(現奈良県)から山城国平安京(現京都府)に遷都します。これを期に日本では唐風の中国文化がハイカルチャーを形成します。唐風文化の興隆期はこれを転じて「国風暗黒時代」とも呼ぶこともできます。この出来事は日本文化の形成史上に画期をもたらした意味において特筆すべき時代であると考えられています。この記事では桓武天皇の即位と平安京への遷都に焦点

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平安時代が始まりだった??日本の怪談

平安時代が始まりだった??日本の怪談

全国で梅雨明けが発表され、暑さが増してくる季節になりました。この記事では納涼の一環として、平安時代の初期に成立した御霊信仰について考察していきたいと思います。受験シーズンで多くの受験生がお世話になった天満宮もこの思想と深いかかわりがあります。平安時代は『源氏物語』など王朝女流文学のイメージで華やかな時代という印象があるかもしれませんが、実は種々の社会不安に悩まされ続けた側面もあります。保守的な貴族

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八幡信仰

八幡信仰

皆さんがお住まいの地域に八幡神社はありませんか?応神天皇=八幡神(はちまんしん)を祭る八幡信仰は日本の神道で最も勢力をもったもののひとつです。八幡神社は日本各地に無数に勧請され、その総数は把握することが難しいほどです。このようなメジャーな信仰である八幡信仰は意外にも古くは九州ローカルの神格でした。このローカルな神が皇室の守護神として、また軍神=幕府の守護神としての地位を獲得するまでの流れを簡単に概

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真言宗と空海の生涯

真言宗と空海の生涯

この記事では真言宗の開祖であり高野山金剛峰寺を開いた空海の生涯に焦点を当てて、奈良時代末期~平安時代の学問と文化について概観したいと思います。官僚養成機関で学んでいた空海を惹き付けたのは仏教であり、なかでも大日如来(釈迦を超えた宇宙的存在の仏)を重視し、即身成仏を目指す真言宗の密教でした。

1,空海の生い立ち
空海(くうかい:宝亀五(774)年~承和二(835)年)は平安初期に活躍した僧侶です。

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日本と中国の仏教思想~比叡山延暦寺~

日本と中国の仏教思想~比叡山延暦寺~

この記事では比叡山延暦寺で有名な日本天台宗の開祖である最澄の生涯に焦点を当てて、日本と中国の仏教思想の展開を概観したいと思います。インドから中国に入った大乗仏教は500年にもわたる蓄積を経て中国天台宗として総合されます。最澄が輸入して成立した日本天台宗には座禅もあり、密教的要素もあり、また『法華経』を根本とする哲学思想があります。日本天台宗は密教(深遠で、かつ大乗仏教が極限に達した秘密の教え)のひ

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鎮護国家思想と大仏

鎮護国家思想と大仏

この記事では修学旅行の定番として有名な東大寺の大仏の成立とその背景を考えていきます。律令国家(律令制度に基づいて支配を行った古代統一国家)が産声をあげた大宝元年に生まれた聖武天皇はその確立期と藤原氏の台頭にともなう動揺期をその生涯のうちに体験し苦悩します。彼の苦渋に満ちた人生を支えたのは仏教でした。仏教は日本という国を鎮護する教えとして位置づけられ、全国に国分寺が創建されました。都の奈良には東大寺

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日本仏教入門~日本仏教の成り立ち~

日本仏教入門~日本仏教の成り立ち~

この記事では日本仏教の成り立ちとその最初期に活躍した行基(ぎょうき)の思想について考えます。学問中心の仏教界が大乗仏教的な救済の思想に方向づけられるのはこの頃です。

1,行基の生涯と弾圧の歴史
行基(ぎょうき:668~749)は渡来系氏族にルーツをもつ奈良時代の僧侶でした。彼は河内国大鳥郡(現大阪府)に生まれ、682年で15歳にして出家したといいます。彼は著作を残しておらず、具体的な思想は不明な

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お稲荷さんの謎(稲荷信仰の古層)

お稲荷さんの謎(稲荷信仰の古層)

この記事では、千本鳥居で有名な京都の伏見稲荷大社に鎮座なさっている商売繁盛の神様である稲荷大明神(お稲荷さん)と眷属(神の使い)であるきつねさん、稲荷信仰について「聖地」をキーワードとして考察していきます。稲荷信仰には謎が多く、不明な点がまだまだ残っています。記事ではまず文化庁が示す神社の総数とそのうちの3分の1を占める5つの信仰に言及し、稲荷信仰がいかに地域に根付いているのかを考えていきます。

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地獄という概念(『日本霊異記』後篇)

地獄という概念(『日本霊異記』後篇)

この記事では古代の人々が考えた地獄の思想について考えます。「閻魔さま」という存在は私達が子供の頃に「うそをつくと閻魔さまに舌を抜かれる」と言った形でひろく親しまれ恐れられていますが、古代日本人にとっても閻魔大王は恐るべき存在でありかつ敬うべき存在でした。

日本霊異記については下記記事で説明しています。

1,日本人にとって地獄とは
本稿では、古代の他界(異界)としての地獄の思想に関する説話の記事

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人間×人外の結婚 日本では古典から存在した(『日本霊異記』 中編)

人間×人外の結婚 日本では古典から存在した(『日本霊異記』 中編)

この記事では『日本霊異記』上巻 第二話 「狐を妻として子をうましめし縁(狐を妻にして子を産ませた話)」を読み味わいます。その前に、人間が人間以外の者と婚姻する異類婚姻譚(いるいこんいんたん)について解説を加えることにします。

『日本霊異記』についての解説は下記記事をご覧下さい。

1, 異類婚姻譚とは 異類婚姻譚とは民俗学(民族学ではありません)の用語で、人間が人間以外のもの〈異類〉と婚姻の契

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都市での孤独感、日本人は昔から抱えていた?(『日本霊異記』前篇)

都市での孤独感、日本人は昔から抱えていた?(『日本霊異記』前篇)

この記事では日本最古の仏教説話集である『日本霊異記』について簡単な概説を行います。都という都市空間の出現によって、各地の地域の共同体から様々な背景を持つ人々が都市に流入します。彼らは共同体のつながりを失った孤立した「個人」でした。彼らの信仰心はこれまで共同体のマツリで発揮されていましたが、都市にはそうしたものはありません。そこで普遍宗教である仏教に出会い、自らの意思で仏教に帰依して弾圧のリスクも顧

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万葉集(萬葉集)【後篇】~和歌を味わう~

万葉集(萬葉集)【後篇】~和歌を味わう~

『萬葉集』所収の歌については前篇では雑歌、相聞、挽歌の三大部立てについて紹介しましたが、この記事では基本的な『萬葉集』の歌の形式「歌体」についてご説明いたします。そこから具体的に和歌を味わってみることにしましょう。

1,『萬葉集』の歌の形式
まず『萬葉集』には全四五七七首もの歌が収められています。そのうち比較的古い歌(巻一・一)雄略天皇の御製歌(天皇が御自ら御つくりになった歌)「籠(こ)もよ

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