ピアニストの才能

ピアニストの才能ってなんだろう？幼い頃母に問うた事がある。

「何だと思う？」
「手が大きいとか？」
「うん、それもあるかもね。他には？」
「絶対音感？」
「それは余り関係ないかな」
「なに？」
「自分の演奏を好きと言ってくれる人を、好きでいられること。深く、深くね」

そんなの当たり前じゃん、俺はそう答えた。まあそもそも演奏家でない俺にその真偽を確かめる術は無い。ふと思い出して、兄にも聞いてみた。ピアニストの才能って何？

「え、わからん」
「お袋には聞いてない？」
「知らない。何か言ってた？」
「自分の演奏をー」
「いや、いいや。でもそれ確かに今後聞かれそう。考えとこ」

後日、兄はピアノ教室の生徒にこう伝えたらしい。

「自分の演奏を聴かせたい、そう思える人がいること」

結局実演家の言うことはよく分からない。ちなみに俺の考えるそれは「観客に『これは私のための演奏だ』と思わせる演奏が出来ること」だ。結局確かめようがなかった。