マガジンのカバー画像

言語

50
運営しているクリエイター

記事一覧

自民党総裁選に関連する青野氏の夫婦別姓発言を検証してみた

自民党総裁選が近く、話題となっています。選択的夫婦別姓を推進するインフルエンサー達も、選択的夫婦別姓を争点にしようと活発に発信しています。

*厳密には、「夫婦の氏」が争点であると言った方が正確ですね。旧姓の通称使用という立場の人もいますから。「選択的夫婦別姓」が争点という言い方は、選択的夫婦別姓にすることが前提となった、偏った表現と言えると思います。

サイボウズの社長で、選択的夫婦別姓を目指し

もっとみる
【カルト問題の難しさ 反宗教なら問題ないのか?】

【カルト問題の難しさ 反宗教なら問題ないのか?】

*写真はレーニン廟

カルト問題について調べていると、「カルト」というレッテルを貼られやすい新興宗教だけでなく、伝統宗教にもカルト性があるという問題に突き当たります。このような事情から、そもそも宗教そのものが良くないのではないか、と考える人もいるでしょう。しかし、それも早計ではないでしょうか?

例えば、共産主義の思想は宗教に否定的ですが、カルト性を有しています。暴力革命や、日本や欧米における一般

もっとみる

ゼレンスキー夫妻が「夫婦別姓」に見える理由

 ウクライナ侵攻から約1ヶ月が経ちました。皮肉なことに、私がnoteで取り上げてきたロシアやウクライナがこれ程世界中で注目されたことはありません。ゼレンスキー(ウクライナ語読み:ゼレンシキー)大統領を知らない人も、もはや存在しないでしょう。

 ゼレンスキー大統領のみならず、その夫人であるオレナ・ゼレンスカ氏もウクライナ国民を勇気づけようと奮闘しています。

 記事を見て気になった人もいるかもしれ

もっとみる
北条政子の名前について

北条政子の名前について

 大河ドラマの中で、北条政子が自身を「政子」と名乗るシーンがありました。しかし、彼女が「政子」と名乗るようになったのは、晩年です。それまでなんと呼ばれていたかは、実ははっきりしていないのです。↓下の記事参照

 なお、彼女が「北条」という苗字を名乗っていたかどうかも不明です。当時、姓と苗字は別の物でした。姓が父方の血統を表し一生変わらないのに対し、苗字は家を表す名前で、夫婦やその子と共有することも

もっとみる

源の〜、平の〜、北条の…?

 NHKで、新しい大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が始まりましたが、見ていて気になることがありました。

 劇中で、北条氏の人を「源の〇〇」「平の〇〇」のように「北条の〇〇」と苗字と名前の間に「の」を入れて呼ばれることがあるのですが、これはどうも違うようです。

 当時、父方の血統を表し、一生変わることがなかった姓(本姓)と、家の名前を表した苗字は別概念でした。鎌倉時代頃には、源、平、藤原といった姓を

もっとみる

青野氏のお雑煮ツイートについて

 サイボウズの社長青野氏が選択的夫婦別姓に関して、Twitter上で次のような発言をしました。

 青野氏はこのようなことを言っていますが、本当のところはどうなのでしょうか?

 まず、夫婦同氏制度は文化を元にした制度です。何度も別の記事で解説してきましたが、明治から存在した、夫婦で同じ家の名前を名乗るという慣習により成立しました。

*詳しくは下の記事をご覧ください。

 また、司法も過去に

もっとみる

夫婦別姓可能だが、ファーストネームの命名に制限がある国

 世界の名前の仕組みについて調べていると、面白いことが分かりました。

 夫婦別姓可能な欧米の国の中には、下の名前(ファーストネーム)の付け方に決まりがある国も存在します。

 デンマークでは、デンマーク国民教会の教会省が作成した人名リストから子供の名前を選ぶことになっています。リストにない名前をつける場合は、役所を通じて申請するそうです。

 チェコでも原則、人名リストから子供の名前を選ぶことに

もっとみる

夫婦別姓と家族の絆 夫婦同姓とキリスト教は関係あるのか?

以前私は下のような記事を書きました。

 日本の夫婦同氏制度がキリスト教の影響を受けた西洋社会を模倣した物だとする説がありますが、違うでしょう。まず、聖書には夫婦の姓を直接規定するようなことは書かれていません。実際に、古代ローマではキリスト教の影響で姓が使われなくなり、姓が復活したビザンツ帝国は夫婦別姓で、現在のアイスランドには原則姓がなく、父称または母称を名乗ることになっています。同じキリスト教

もっとみる

海外では通称使用という考え方は通用しないのか?

 選択的夫婦別姓の話題になると、海外では通称使用は通用しないという意見が出てきます。

 しかし、本名以外に通称を公的な場で使える国は日本以外にも存在します。

 フランスは夫婦別姓ですが、配偶者の姓や複合姓、母の姓を通称として名乗れます。

*下の過去記事もご覧ください。

 ベルギーもフランスの影響を受けて夫婦別姓ですが、通称として夫の姓を名乗れるようです。↓下の記事参考
*ただし、現在では廃

もっとみる

夫婦別姓と共産主義あるいは社会主義は関係あるのか?

*最初に:共産主義と社会主義の使い分けについてはこちらを。この記事では、参考文献がある場合はそちらの記述に沿った表現をしています。

 選択的夫婦別姓の議論になると、夫婦別姓を共産主義(社会主義のことも)と関連づける意見が出てきます。

 井田氏のように関係を否定する人は少なくありませんが、歴史的な経緯を見ると、主に夫婦同姓文化圏において、夫婦別姓を認めようという動きと共産主義や社会主義は関係があ

もっとみる
中国はずっと夫婦別姓だったのか?

中国はずっと夫婦別姓だったのか?

*写真は台湾です。 

 先日、中国の夫婦の姓について調べていたところ、衝撃の事実が分かりました。

 中国では伝統的に「宗族制度」と呼ばれる考え方に基づいて夫婦別姓であり、子は父の姓を引き継ぎます。同じ姓の人は結婚してはいけないという伝統もありました。

 しかし、現在の中華人民共和国が成立する前の中華民国時代には、そうでない時期もあったそうです。

 なんと、女性は結婚すると、男性の姓を自身の

もっとみる
フランスの夫婦の姓の歴史

フランスの夫婦の姓の歴史

 先日、フランスでは一律夫婦別姓である一方、通称として夫や母、複合姓が使えるという話をしました。少なくともフランス革命後の18世紀末からフランスは夫婦別姓だったようです。↓参考

 しかし、これを聞いた当初、一瞬不思議に思ったことがありました。

 18世紀末以降、つまりフランス革命後のフランスを舞台にした作品には、夫婦同姓であるかのようなケースが登場するからです。

 例えば、19世紀のフランス

もっとみる

フランスは選択的夫婦別姓なのか?

 かつてフランスの夫婦の姓に調べていた時、不可解なことがありました。メディアによって、フランスでは夫婦別姓だと書かれていたり、同姓か別姓か複合姓か選択できると書かれていたりするからです。

 例えばこちらの記事では、夫婦別姓の国としてフランスが紹介されています。

 一方、こちらの記事では、

姓は「同姓」「別姓」「複合姓」という3つの選択肢があります。

(下のリンクより引用)とあたかも選択的夫

もっとみる

慣習は慣習、法律は法律と断言できるのか?

 選択的夫婦別姓について、以下のようなやりとりを発見しました。

確かに、選択的夫婦別姓など夫婦の氏の話は法律の話ではあるのですが、性質上慣習と無関係であると断言することもできません。

 実際に、過去の判例を見ると、

婚姻を始めとする身分関係の変動に伴う氏の変更を含む氏の在り方が,決して世界的に普遍的なものではなく,それぞれの国の多年にわたる歴史,伝統及び文化,国民の意識や価値観等を基礎と

もっとみる