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短編小説

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#恋愛小説

【短編小説】Cats and Dogs

【短編小説】Cats and Dogs

猫と犬が降る、というホストマザーの発した意味不明な言葉に思わず「猫と犬が降る…」とおうむ返しをした。2年前、ホームステイをしていたアメリカでのことだった。あの日見た大雨を今でも時々思い出す。日本語で言うところの、バケツをひっくり返したような大雨を意味するらしい。───寧ろバスタブをひっくり返しても足りないと思ったが。
とにかく、あの日はそんな大雨だった。

夜、ホストマザーはスーパーマーケットまで

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【短編小説】お姫様の鏡

【短編小説】お姫様の鏡

ガラスの器に移したヨーグルトに、砂糖をスプーン山盛り二杯分も加えてしまってから手を止めた。

「ヨーグルトにこのくらいたっぷり砂糖を加えるだろ」

「で、溶けるまでひたすら混ぜる」

久しく聞いていない声が蘇る。

目の前にマーマレードの瓶を置いたにも関わらず、あたしが器に入れたのは大量の砂糖である。
いつも、晴人のヨーグルトを作ってから自分の方にマーマレードを加えていた。

だからだ。もう一人分

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【短編小説】バルコニーも付けてね

【短編小説】バルコニーも付けてね

「好いた男から愛されなくなったら、二人で家でも建てて仲良く死んでく?」

あはは、とマリーは笑った。マリーは本当は鞠恵(まりえ)というのだけれど、いつもMARIEというクッキーを食べているから、あたしは彼女をマリーと呼ぶ。

「建てるならいっそ庭付きね」

話に乗ってくれたマリーに、”そう、バルコニーも付けてね”と、あたしはそう言いたかった。バルコニーさえあればガーデニングやらバーベキューやらプー

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【短編小説】オールドファッション

【短編小説】オールドファッション

静かに眠る彼の二の腕が冷え切っていたので、私はそっと毛布をかけた。寒いと感じたら、彼が無意識のうちに毛布の中に潜っていくことを私は知っている。それでも私はそうせずにはいられない。

こういう些細な衝動は愛からくるのだろうか。だとしたら、愛は押しつけがましいものだ。

目が覚めた時には彼はもう起きていて、ケータイを見ながらコーヒーを飲んでいた。7時15分。アラームが鳴ったのは15分も前のことだったら

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【短編小説】温かいガトー

【短編小説】温かいガトー

なんか、食べたくない?

と、ミオが唐突に言うものだから、私はほぼ反射的に良いね、と答えた。隣に横たわるミオ越しに見るカーテンから、僅かに漏れる光が眩しい。良いね、と勝手に答えた起きたての脳みそで考える。

あたたかいガトー

翠(みどり)が一番に思い浮かべたのはガトーショコラでもシェル型で焼かれたマドレーヌでもなく、ダックワーズだった。 大学でフランス語を専攻していたミオとの日常会話には聞

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【短編小説】ぬるいプリン

【短編小説】ぬるいプリン

落とした気分を拾ってもらって、冷めた身体を温めてもらって、私はどんどん彼にのめり込んでゆく。
この遣る瀬無い感覚にすら、恋は私を酔わせてゆく。

エレベーターの中は、いつも無言だ。

さっきコンビニで買ったプリンが入った袋が、微かに揺れている。その音が耳に障るくらいの静けさ。

だけど手を繋いでいるのだから、間を持たせる言葉は必要ないのだ。

部屋に入ると彼は、いつも通り先にお風呂を譲ってくれ

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【短編小説】冷たい人形

【短編小説】冷たい人形

「お願い、ドアは閉めて」

彼女がこれを言うのは多分100回目だし、僕がほんの数センチだけ残して寝室のドアを閉めるのも多分100回目だ。怖がりな彼女は隙間があると落ち着かないのだと言う。理由は誰かが簡単に入って来れそう、というものだ。実際寝室のドアに鍵はついていないのだから、少しくらい開いていても 誰 か が入って来るとしても大した違いはないと僕は思う。けれどもあの数センチを埋めるだけで彼女が安心

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【創作小説】小部屋 (透編)

【創作小説】小部屋 (透編)

昔行きつけだったバー『フラニー』にて詩史と企てたパリ旅行を、透が一人で決行したのは1年程前のことである。そこで偶然訪れた個展で出会ったのが、画家である深雪だ。

「絵なんてどこでも描けるわ」

パリには飽きてきたところだったの、と深雪はさぞ当たり前であるかのように、透の住む東京の部屋へ引っ越してきた。何でも、別れた恋人に会いに行く為に訪れたパリを気に入り、そのまま長々とパリ暮らしを続けていただけの

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