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柿本慧こ
2020年5月6日 15:23
今日からはじまりました、新企画、New熟語譚でございます。私は以前から、「パブー」という本を作ったり売ったりできるサイトで、「指さし小説」というものを連載していました。それは、国語辞典を目をつぶって指さし、そこにあったことばをテーマに短編小説を作るというものです。今回は、その指さしシリーズ第2弾という感じで、今度は漢和辞典を目をつぶって何回か指さし、そこにあった漢字を順番に連ねて新たな熟語を作
2023年10月28日 07:16
縉峻「いらっしゃいませ」ということばは、いざという時にしか使ってはならぬ。私は、目の前に置かれた雑多なものをみつめる。これをどうしてくれようか。まずは、手近にある、縮んだセーターを、その雑多な物の中から引っ張り出す。引っ張り出す時に、びよーんと伸びたセーターは、昔のおもかげを映し出した。私は、目の前に広がっているブルーシートの、まだかろうじて残っている隙間に、そのセーターを伸ば
2023年3月28日 09:15
粧唐私は自分が嫌いだ。だから化粧して、外国に行くことにした。そしたら、生まれ変われる気がする。大きな国がいいな。そしたら自分の存在が小さく感じられそうだから。小さいまま生きていきたい。そしてプチっと消えるの。私は私じゃない別の人になりかわって、人の人生を生きるの。そうすれば、辛くないでしょう?私はコンビニに行って、化粧道具を買ってきた。これで、生まれ変われるかしらん。やり方は、
2022年3月21日 21:37
終馭(しゅうぎょ) をかしなことだ今、歩いているのは、平均台の上前を歩いているのは、コーギーだったコーギーは、上手に平均台を歩く私は今にも落ちそうに、フラフラ歩いている。私の手には、リボンが巻かさっている。そのリボンの先に、コーギーコーギーは上手に歩くもんだから、どんどん先に行ってしまう。私は歩く。でも進まない。気をつけて歩いているから。左に傾かないように。そして、右
2023年7月3日 04:27
無鍪あたしったら、なんてことしちゃったのかしら。こんな暑い日に、帽子を忘れてくるなんて。ちゃんと、玄関とこに、置いといたのよ。それなのに、なんてことかしら。こんな大事な日に。ジリジリと、髪が焼けてくわ。肌にシミができちゃう。大変ったら大変。それなのに、木陰もないなんて。あら、あたしの目の前に、大きな帽子をかぶっている人がいるわね。「おじいさん。良い帽子ね」「そうか」「
2021年12月8日 14:52
毛粒経(もうりゅうきょう)「私を、掃除機で吸ってください」 そんな声が聞こえた気がした。私は机に肘をつき、手に頭を乗せてぼーっとしていたので、その声にハッとした。 床には、ビーズ細工をしていて、こぼしてしまったビーズが、ばらばらと落ちていた。今の声は、ビーズたちの声だったのだろうか。私は床に耳を近づけた。 何も聞こえない。その代わりに、とても長い銀色の毛を見つけた。 私はショー
2021年10月10日 18:19
漢和辞典を目をつぶって指さし、そこにあった漢字で新たな熟語を作ります。これは、その熟語を元にした、短いおはなしです。席入臓 なんだか胃がポコンポコンする。痛いわけじゃない。ムカムカするのとも違うし、胃もたれもない。ただ、内側からつつかれるように、ポコンポコンするのだった。 僕は消化器内科に行った。こんな聞いたこともない症状、先生に説明したって、きっとわかってくれないだろう。そう思って行
2021年6月28日 22:23
漢和辞典を目をつぶって指さし、そこにあった漢字で新たな熟語を作ります。これは、その熟語を元にした、短いおはなしです。縮酌「あー、来た!こっち、こっち!」「もっとそっちつめて!」「きゃー!今度はこっちに来た!」「早く早く、そっちにずれて!」「あ!目が来た!」「フォーメーションゼロ!」「もとに戻って!早くー」 ピタッ「変だなぁ」 さっきから、瓶の中の味噌を、お玉で取ろ
2021年4月20日 21:24
漢和辞典を目をつぶって指さし、そこにあった漢字で新たな熟語を作ります。これは、その熟語を元にした、短いおはなしです。日作蓬 太陽は、毎日作り変えられているってこと、知っていますか? 毎日昇って、沈んでいく太陽。太陽が沈んでいった後、何をしてると思いますか?それはね、休憩しているんです!! 知らなかったでしょう〜!私も知らなかったんです!!てっきり、沈んだあとも、どこか知らない街を照
2021年4月13日 17:35
漢和辞典を目をつぶって指をさし、そこにあった漢字で新たな熟語を作ります。今回は、11〜20話に生み出された熟語たちを実際に使って、一つの物語を作ります。 まずは、New熟語のおさらいです。リンク貼ってますので、まだそれぞれのお話を読んでない方、忘れてしまった方は、ぜひ読んでみてね☆11.現主(げんしゅ)・・・急に運命の人が現れること12.舞半(ぶはん)・・・踊りを踊っている最中13.
2021年4月10日 00:47
漢和辞典を目をつぶって指さし、そこにあった漢字で新たな熟語を作ります。これは、その熟語を元にした、短いおはなしです。内酸 一人旅の途中で、私は突然、滝を見たくなった。どこの都道府県にも、滝の一つや二つあるだろう。そう思って、すぐに調べた。やっぱりあった。ここから、一番近い滝にしよう。滝なら、どこでも良いんだから。 観光客は、見たところいなかった。だって、シーズンじゃないものな。少し肌寒い。
2021年4月7日 08:19
漢和辞典を目をつぶって指をさし、そこにあった漢字で新たな熟語を作ります。これは、その熟語を元にした、短いおはなしです。石後 今日はなんにもない一日だった。良いことも、悪いことも特になく、平穏な一日だった。 それなのに。この心に渦巻く不満はなんだ。 ぼくは、足元にあった石ころを蹴飛ばした。「久しぶりの感覚」と、小さな声がした。 ぼくは振り向いた。だれもいない。「あの〜、ちょっ
2021年3月25日 21:19
漢和辞典を目をつぶって指をさし、そこにあった漢字で新たな熟語を作ります。これは、その熟語を元にした、短いおはなしです。微推「あれっ!久しぶり」 久々に帰った地元のスーパーで、ぼくは小学校の時の友人を見つけた。「おう、久しぶり。なにしてんの」友人も気づいて、こちらに近寄った。「ちょっとハム買いに来てさ〜」「ハム?何に使うの」「焼きそばだよ〜!焼きそばと言ったらハムだよ」「そうか
2020年11月10日 22:51
河輪婦 むかーしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おばあさんは川へ洗濯へ、おじいさんは庭へ選択物干しへ行く途中でした。おばあさんが川へ行くと、なぜかいつも聞こえてくる川のせせらぎが、一切聞こえてきません。変だなぁと思いながら川の前に来ると、ようやくその意味がわかりました。川が、流れていなかったのです。川は、まるで湖のように静かでした。こんなことは、長い人生の中で初めて