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#エッセイ
「日記の練習」12月 くどうれいん
小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。そんなくどうさんの12月の「日記の練習」です。
12月1日
キコと安藤さんと平興へ。わたしははさみ将棋が強い、と豪語していたことを覚えていた名人が「やるか!」と言ってくれたがぼろ負け。一気にふたつの駒を取られたとき、我ながらあまりの愚かさに笑ってしまった。あらゆる「最後」が苦手なので、閉店する前の最後の来店だろう
みんなと違う ≠ 仲間外れ
眠れない夜。
薄暗い部屋の天井を見つめ、自分だけが世界から取り残されたような気持ちが芽を出す頃、ふと思い出すのは、保育園の「お昼寝の時間」のこと。
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お昼寝の時間が、とても苦手だった。
喘息持ちだったわたしは、ほこりっぽい保育園の床に寝そべると、コホコホと咳が出てしまうのだ。みんながすうすうと寝息を立てるなか、一人だけ目が冴え、わたしだけがこの世界に取り残されているような寂しい気持ちにな
#44 「愛してる」と言えたことはありますか【伊佐知美の頭の中】
飛行機は那覇空港を離陸して、私が10日間を精一杯過ごした那覇や、だいすきな読谷村をあっという間に飛び越えて、沖縄の空に浮かぶ雲に入って、いまは奄美を通りすぎるくらいの位置。
沖縄では、このnoteを一緒に運営するのちちゃんが私のマタニティフォトを撮りにきてくれた。嬉しい。
私はひとりしか子どもを産まないのだろうな、と思っている。それは私の体力や体の状態、あとはパートナーが今年44歳になった、と
#38 自信を失っていた時期、私をすくいあげてくれたのは【伊佐知美の頭の中】
今日の朝、目が覚めたらまだ5時半で、窓の向こうはまだ真っ暗。夜の世界で。
それでも、久しぶりに聞く、けれど聞き慣れた虫やカエルの鳴き声、バナナの葉が風に揺れてこすれる音、遠くから風に乗って運ばれる春と夏の間の波の音が、丘の上のこの2階の部屋まで届いていて。
沖縄の読谷村に戻ってこられて、眠って、目を覚まして、海が見える部屋にいる。その事実がどうしようもなく嬉しくって、本州よりも30分ほど遅い6
#028 「満ちたひとり」になれて初めて、「ふたり」が始まると知った夜のこと【伊佐知美の頭の中】
まずは昔の話になるけれど、30歳になった翌月に、離婚を決めたことがある。そして、離婚が成立したまた翌月には、世界一周の続きの旅へ。
季節は、これから日本が寒くなってゆく秋の暮れ。冬には出会いたくなかったから、旅先は季節が逆の南半球を選ぶことにした。
この世界を、改めてひとりで生き直すことにした新生活の始まりの日々。
その最初の数ヶ月間を、一緒に旅したひとがいた。
二度と行けない あのカフェの
2019年のハノイの旅は、ちょっと変わったものだった。
夫がベトナム北部のハノイで、とある長期プロジェクトに携わっていて、その滞在先に遊びに行ったのだった。
場所はハノイの中心部である旧市街地ではなく、西湖(テイホー)と呼ばれる大きな湖の東側、駐在員や外国人がたくさん暮らしているエリアだった。
昼間は夫は仕事なので、一人で湖を中心に毎日たくさん歩いた。外国人向けのオシャレなお店も多いけれど、少