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悠冴紀/小説家・詩人
2021年8月4日 12:04
作:悠冴紀答えなどはじめからどこにも存在しない誰かの導き出した明確な答えは他の誰かにとっての問いとなる私にも誰にも答えようがないその時どきに見出す小刻みの持論ならすでに幾度となく言葉にしてきた年月を経てそれら全てが問いに帰するだから朽ちない循環により生を得る終局を迎え 落ちた木の葉は残像だけをおいて土にかえる土を踏みしめる誰かが樹を見上げるときそこに
2022年4月8日 19:24
作:悠冴紀その戦場を生き抜いて帰還した後君は友をなくすだろう命からがら逃げ帰ってきた後君は家族をなくすだろう何かを護ろうと戦って何より護りたかったものまで壊してしまう現状に気がつくとき君は自分の何かを置き忘れてきたことを知る鏡を覗くとそれまで相手にしたこともない最強の敵君のその混乱を見て逃げ出さない者はいないだろう生き抜くことだけを考えて生き抜くためだけに強
2020年9月9日 21:52
作:悠冴紀私は人の子にあらずとうに自ら放棄した後悔はない今は常に満たされている家族はいない二度といらない母とは大地父とは大気私にはそれで充分だ帰るべき生家はないなくていいすべてを宿しながら何者をも囲わない 無限の宇宙里と呼ぶに相応しい 唯一の場皆はじめからそこにいたのだ影は智光は力思えばずっとそう生きてきた子にはならぬが親にもならず
2019年11月27日 08:06
作:悠冴紀蒼白い雪を被った鋭い針葉樹林を私は手探りで駆けていくどこから来たのかどこに向かっていたのか時折わからなくなる自分がいる今はそれでも走るほかない凍てついた樹海の奥から狼たちの遠吠えが聞こえてくるあれは血に飢えた冬の捕食者かつての私に 似た奴らだ目印もない雪原の中私には君だけが道標だった君の雪山に語りかけ木霊する声の反響で己の立ち位置を知ることが
2019年12月6日 09:08
作:悠冴紀深すぎる傷跡凍てつく大地に刻み込まれた底知れぬ裂け目こんなにも深部に達していながらもはや血も出ないほど時を刻んだのか……遠い記憶に実感はなくただただ知識として残るばかりだがそれが今ではコアを成す地中に食い込む 深いクレバス血は凍結して色素をなくしもはや涙も出てこない癒えたわけではない傷は今も大きく開いたまま雪解けを知らぬ冷徹さでむしろ克明に形を留