マガジンのカバー画像

小説『クリキャベ🥬』感想たち

48
創作大賞2023 朝日新聞出版賞受賞作、そして2024年4月5日に発売した書籍『クリームイエローの海と春キャベツのある家』にいただいた感想記事たちをまとめました。たくさんの感想あ…
運営しているクリエイター

#家事

「生活」への温かなまなざし〜クリームイエローの海と春キャベツのある家

「生活」への温かなまなざし〜クリームイエローの海と春キャベツのある家

あるとき、「暮らし」と「生活」の似て非なる響きについて考えたことがある。

暮らしは、憧れや理想のライフスタイルのニュアンスを多分に含んでいる。
雑誌や書籍、YouTubeで描かれているような、すっきりと整い余裕が感じられるさま。

一方、生活はもっと地に足のついた、それどころか時折田んぼに片足を突っ込んだような、何とももどかしく精一杯に気を張りつめている感じがする。

どちからというと、私は現実

もっとみる
『クリームイエローの海と春キャベツのある家』を読んで

『クリームイエローの海と春キャベツのある家』を読んで

自分で自分のことをうまく認めてあげられないと、なんでこうも苦しいのだろう。誰かに認めてほしい、自分の弱さも含めて受け止めてほしいと思うのに、それを曝け出すことはできなくて、また自分を責めてしまう。完璧に見える誰かのようにできないとダメに思えて、きっとその相手も完璧じゃないのに、比べてしまう。それは家事だけではなく、人生のいろいろな場所で「コンプレックス」として私たちが向き合い続けてきたものなのでは

もっとみる
『クリームイエローの海と春キャベツのある家』せやま 南天

『クリームイエローの海と春キャベツのある家』せやま 南天

創作大賞2023(note主催)朝日新聞出版賞受賞作で本作がデビュー作。

主人公は五年間勤めた大手商社を辞め、家事代行派遣会社に登録したばかりの永井津麦。

新しく担当する事になった織野家に出向き目にしたのは、床一面を覆いつくす洋服の山。
その光景は全体に薄っすら黄身がかったクリームイエローの海のよう。

5人の子どもを育てるシングルファーザーと津麦。
不協和音を奏でていた二人だったが、家事に対

もっとみる
キャベツの投稿とクリキャベと #書もつ

キャベツの投稿とクリキャベと #書もつ

先月発売された、創作大賞2023受賞作「クリームイエローの海と春キャベツのある家(せやま南天)」(以下、クリキャベ)を読みながら思い出した、せやまさんの投稿がある。

・・確か、あれはキャベツの話だった。

あらためて読み返してみると、なんとその投稿はクリキャベで描かれていた「家事」の話しで「母親」の話しだった。

小説家さんにも様々な方がいて、日常生活に近い視点で描く方もいれば、全く想像だにしな

もっとみる
それでいいよと私の元にやってきた本

それでいいよと私の元にやってきた本

こんにちは、めげないやつ子です。

久しぶりに小説を読みました。

note主宰、創作大賞2023のお仕事小説部門で朝日新聞出版賞を受賞された作品です。

昨年から色んな出来事があった我が家。
息子のことも自分も、家族のことも、一つの答えが出たところでした。

暮らしが大切なんだと気付いた途端に “そうそう、それでいいんだよ…” と言わんばかりに、私の元にやってきた本です。

読み終えてから、ふわ

もっとみる
息苦しさを感じている人は、救心でも、キャベジンでもなく、「クリキャベ」を読んでみるといい

息苦しさを感じている人は、救心でも、キャベジンでもなく、「クリキャベ」を読んでみるといい

「コレハワガヤノコトデスカ?」

小説を読んだ瞬間、それはもうカタコトになるくらいビックリした。読みすすめ、ちょっと怖くなり、どこかにカメラでもあるんじゃないかと我が家の四方を見渡した。

「クリームイエローの海と春キャベツのある家」 せやま南天さん

家事代行サービスを始めたばかりの津麦が、5人の子どもを育てるシングルファーザーの織野家と出会い、育児や家事、仕事や生活の本質に向きあい、成長を遂げ

もっとみる
クリキャベを読むと、回鍋肉を作りたくなる。

クリキャベを読むと、回鍋肉を作りたくなる。

発売日(4/5)に、せやま南天さんの『クリームイエローの海と春キャベツのある家』を書店へ買いに行き、先週、子供達の新学期バタバタ週間の隙を見ながらゆっくり読んだ。

オリジナル版のストーリー展開と雰囲気はそのままに、過去エピソードがふんだんに追加されたことで、主人公・津麦のキャラクターが、より人間味豊かになって、とっても満足な読み応えだった。

やって当たり前、地味で面倒、無償の労働――そうやって

もっとみる
クリームイエローの海と春キャベツのある家を探検する

クリームイエローの海と春キャベツのある家を探検する

 たまたま見たドラマの、たまたま聞いたセリフが、妙に頭に残ることがある。

 そのドラマの主人公である主婦は、目の前にいる夫にこう言った。

「私は毎日、マイナスをゼロに戻してるの」

 足の踏み場が確保されたフローリング。衣装ケースに畳んでしまわれている洋服や下着。温かいご飯。いつの間にか沸いているお風呂。

 快適な生活を送るためにある行動の前後には、必ず家事がついて回る。

 妻の悲痛な叫び

もっとみる
はじめまして

はじめまして

はじめまして、note。
誰かのためになる事も、目から鱗も、きっと書けません。
だけどちょこっと、お邪魔させてください。

週末にふらりと立ち寄った本屋さんで、
一冊の本を手に取りました。

今週からは新学期も始まり、自分だけで過ごす時間が増えるのもあって、一人時間のお供にと選んだ一冊、

クリームイエローの海と春キャベツのある家
(以下、クリキャベ)

です。

一年前の春、税務署の短期パートに

もっとみる
家事が苦手な私への応援歌みたいな小説だった。#創作大賞感想

家事が苦手な私への応援歌みたいな小説だった。#創作大賞感想

家事が苦手だ。子供の頃から身の回りのことをするのが苦手で、大人になった今でも、掃除も片付けも裁縫も人並みにできない。できるのは、猫の世話だけ。一人暮らしが長かったから、なんとか料理はする。でも、うまいわけじゃない。レトルト調味料に助けられ、冷凍食品に支えられ、何を出しても「おいしい」と言ってくれる夫に救われているだけだ。洗濯は唯一嫌いじゃない家事だけれど、得意なわけじゃない。アイロンなんかすれば余

もっとみる