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亜成虫の森で

26
彼らはまだその森で彷徨っていた。
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記事一覧

亜成虫の森 26 #h

「にの!」

待ち合わせ場所に行くと
にのが立っていた。

と思うと同時にガンガン近づいてきて抱きつかれた。

「うわっ、ちょっと!」

「遅えよ…待ちくたびれたわ」

「ごめんごめん。心配かけたね。ごめんね。」

「バカ!何死にそうになってんだよ!」

「しょうがないでしょ〜わざとじゃないし」

「死ぬかと思った。死んだらどうしようって」

「私も死ぬのかと思った。だけどさ、ほら」

「桜、一緒

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亜成虫の森で 25 #m

 

「お疲れ様」

翔くんが残業していたオレのところにふらりと来た時があった。フロアには誰もいなくて、ふたりきりだった。

「お疲れ様です。社長」

「残業なんてしなくたっていいんだよ」

「終わらせちゃいたいからさ。あ、はるは?どうですかね?」

「ふふ。潤の言う通りの子だよ。」

「うん。いいよね。」

「似てるよね。春菜ちゃんに。」

「…。」

「だから、推薦してきたのかと思った。」

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亜成虫の森で 24 #n

約束の場所についた。
時間になっても彼女は現れない。
おかしいなあ。いつも早めに来るのに。

ケータイの振動を感じて画面を見ると、彼女からだと思った連絡は松本さんからの電話だった。

え?今日会社休みだよな。

「はい、どうしました?」

「にの!はるが緊急搬送された!」

 

「はい?」

キンキュウハンソウ?

「とりあえず東京総合病院に向かって!こっちからは相葉くんが向かってる。オレもあと

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亜成虫の森で 23 #n

「おい」

「あ、…」

「お前どこ行ってたんだよ。なんでメッセージ返さないんだよ。」

「ああ、ごめん。地元に帰ってた」

「…昨日は?オレ、…ホテルに翔さんと入っていくのみたんだけど」

「ふふ。そんなこと聞いてどうすんの?…仕事してただけ。」

「あんな格好で?」

「パーティについてきてって、言われたの。」

「パーティ?」

「そう。お偉いさんが集まるパーティ。」

「…なんでお前が

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亜成虫の森で 22 #o

虚な顔で彼女が店に入ってきた。

「あら、いらっしゃい」

彼女の顔が少し青ざめていて、ふらついているように見える。

「どうした?なんか具合悪い?」

「…ちょっとふらついただけです。大丈夫。なんか最近、だるくて…貧血かなあ」

「とりあえずほら、座って。休んで。」

「ありがとうございます」

もはや定番だ。
いつも通りお茶を出して、最近はお茶菓子つきだ。

「久しぶりだね。どう?最近

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亜成虫の森で 21 #s

12時前に彼女を家に送り届けて
帰路に着く。

後部座席から
窓を流れる景色を見ていた。

本当に東京は眠らない街だ。
街中に煌々と明かりがついている。

いけないことを、したのかもしれない。

ずっとそう思ってる。
そう思ってしまう。

だけど、あんな悲しい顔されたら
普通放っておけないだろ。

12時過ぎなきゃセーフとか
自分は思っているんだろうか。
特定の相手がいないから
いいよね?

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亜成虫の森で 20 #h

有休消化明け、一発目に社長に呼び出された。
なんだろう。結局怒られるのかな?笑
誰にも会わずにエレベーターで直行した。

いつものたいそうな扉を開けると元気な社長が待っていた。

「おはよ〜!どう?休暇楽しめた?リフレッシュできた??」

「ええ、まあ…地元に帰ってました」

「そっかそっか。」

「…何か御用でしょうか?」

社長はずっとにこにここちらを見ている。
なんだろ。嫌な予感がする。

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亜成虫の森で 19 #n

例の結成されたチームで会議室に集まり、ミーティングがあった。やはり彼女の姿はない。

朝もいない。デスクを見てもいない。今の会議にもいない。たぶん昨日もいない。

翔さんと松本さんは早々に部屋を出て、たぶん社長室で詰めをやってる。

オレと相葉くんは取り残されたが、相葉くんは自前のパソコンで作業をしていた。

「なあ。なんではるか休んでんの?全然連絡もないし。なんか知ってる?」

「はるさんは有休

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亜成虫の森で 18 #h

小雨が降る中わざわざ傘を買って
ふたりでぎゅうぎゅうになりながら帰った。
ときどき雨の匂いに混じって
にのの匂いがして

安心した。

ゴールデンウィークも横浜に一緒に行って
楽しかった。

でも思い出すのは
あの雨の日の匂い。

数日後。

「今日からとなりの部署に来た宮田ももです!よろしくお願いしまあす♡」

となりの部署にかわいい子が入った。
うちの先輩方はやっぱりジロジロ見ていた。

でも

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亜成虫の森で 17 #n

翔さんに送ってもらい、いったん家に帰ってから、彼女と夜出かけた。

久々に一緒にごはんを食べる。

翔さんといるときは嫌な気分だったけど、彼女とふたりになると、彼女もいつも通りな気がして、オレもいつも通りになれた。どうやらオレは浦島太郎ではなかったらしい。

「オレいない間何してた?」

「えー?特に何も」

「…あのイタリアンの人に会ったりした?」

「なんで?」

「…なんで…、なんと

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亜成虫の森で 16 #n

「にの、こっち」

空港の混雑した中で、彼女が手を振って呼んでいた。

「おお!はる…、」

近づいていくと彼女も小走りでこちらに向かってきて、なんとそのまま抱きついてきた。

え?一体何が起こってる?

「ちょっと、え?はるか、どうした?てかみんな見てるんですけど」

「…」

「どうしたの?」

「…遅いんだわ、帰ってくんの」

「おう…」

「バカ」

「え〜…出張から帰ってきてバカはないだ

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亜成虫の森で 15 #h

私たちは北山崎に向かって
延々とドライブした。

あんなに、今までずっと話せてないと言っていたのがウソのように、いろんな話をした。

北山崎の断崖絶壁から見る風景は
今までにみたことのないくらい荘厳なものだった。

手すりにふたりでよりかかる。

風が気持ちいい。

「ねえ」

「ん?」

「オレたちはさあ…、なんでこうなったんだろうね」

「どういう意味で?」

「なんで、別れちゃったのかなって

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亜成虫の森で 14 #h

ベッドの上で目を閉じた。

もう15年くらい前の話だ。

中学1年の時、同じクラスの中にすごくかっこいい人がいた。カッコいいなあと思った。と同時に、住む世界が違う気がしていた。

違う小学校が4校も一緒になるような、小さな中学だ。集まっても学年で50人くらい。その人は違う小学校から来た人だったから知らない人だし、彼の出身小学校の人たちは何か派手だった。何かが。

だからたぶん何もかも合わないんだろ

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亜成虫の森で 13 #a

「はるさん?」

「…」

「はるさん?大丈夫ですか?」

「あ、…ごめん。ぼーっとしてたね。どうかした?」

「いやもう、終業時間とっくに過ぎてますよ?」

「え?!うそっ?!」

「珍しく残ってるから何か仕事あるのかと思って…手伝おうかなって思ったんですけど…」

「いや、大丈夫。終わってる。帰る。」

「なんか悩みでもありましたか?ずいぶん怖い顔してましたよ?」

「…怖い顔は生まれつきです

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