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はる
2020年12月10日 23:24
「はーるちゃん」帰ってきてキッチンを覗くと彼女が料理をしていた。声をかけられた彼女は木べらを持ったまま何の表情もなくこちらを振り返る。「あ、おかえり」いつもの光景。「ただいま〜」「なんでニヤニヤしてんの?」「え?してる?」「うん。」「今日もはるちゃんがはるちゃんでよかったな〜って思ったの」「なあにそれ?」「褒めてんの〜」彼女は怪訝そうな顔をしていた
2020年11月15日 23:45
ビルの屋上は人がいない。風が吹いて心地よい。「志摩さんさあ」「なんだよ」「ほんとに、オレでよかったのかなあ。」「…」「志摩さんじゃなくて」「お前までそんなこと言ってんのか」「…はるちゃん、会社やめたじゃん?」「…」はるかさんはあの事件の後会社を辞めた。やはりネットに上げられてしまったのは痛かった。何も悪くないのに、怪しい危ない人になってしまった。それをオレ
2020年11月14日 22:47
「てめぇ!!!!!どういう神経してんだ?!死にてえか!!」伊吹は飛びかかってガンガン殴っていた。「伊吹伊吹!ちょっと待て!」制裁に入り、頑張ってふたりを引き剥がすとその人はニヤニヤ笑っていた。「はは…なんだこいつ、本当に殺す気かよ」「ええ、殺すつもりですよ」「はあ?」「こいつはね?自分の大事な人は何があっても守るんですよ。何があっても。何をしてもどうやっても。意味、わ
2020年11月12日 23:55
「はるちゃん!」伊吹が部屋に飛び込んできた。「…」伊吹は目を丸くして辺りを見渡している。「何これ…」「…どうやって入ってきたの?」「え?どうやって?」「鍵」「ああ、フロントで。ちょっと揉めちゃったけど。プライバシーがうんたらって」「…そう」「でもそんなこと言ってる場合じゃないって言ったら貸してくれたよ」「…」「はるちゃん」「…」「あの人でしょ
2020年11月11日 00:00
残業していて遅くなってしまった。誰もいないオフィスを早足で歩く。暗いとやっぱり怖いなあ。エントランスを出ると背後から声がした。「お疲れ様〜」振り返ると会ってはいけない人が立っていた。「…!どうしてここに…」「んー?また会いたくなったからさ」マズい。「…結構です」走ろうとしたその瞬間、「いやいや、そういうわけにはいかないんだな」どっかから出てきた複数人に捕
2020年11月8日 00:11
今日も夢の国は夢で溢れていた。真ん中の海がよく見えるベンチに座って私は夢であってほしいあの人のことを思い出していた。全てはもう終わったこと。今日からは。新しい自分で。「でもさ、はるちゃんからお誘いなんて珍しいね〜!ま、オレはいつでもOKだけどさ!」「伊吹はディズニー嫌いじゃなかった?人混みとか並ぶ〜とか、男の人あんまり好きじゃないイメージだったけど」「え?超楽しくない?
2020年11月5日 21:32
インターホンを鳴らしても応答がない。ドアノブを下げるとカギは空いていた。「…お邪魔しまーす」「いらっしゃーい」暗闇から声だけが聞こえた。夕暮れに、少しだけ人影が見える。どう考えても寝る場所ではないところで彼女は大の字になって横になっていた。「そんなところに寝そべって。こんなに暗くして。そのうちキノコ生えますよ」「…うん」「鍵も閉めないで。不用心ですよ」「志摩
2020年11月4日 23:18
目を開けると次の日になっていた。部屋が明るい。会話が聞こえる。「…ああ、うん。ちょろかったわ〜。マジで。ちょろすぎて笑える。こんなにすぐヤレるって思ってなかった笑 さすがストーカーだけある。うん笑 でも次はないかな。うん。別にって感じだったし。うん。そうそう笑 まだこっちいるから飯食おうぜ。うん。はいはーい、あ、キャッチ入ったから切るわ。うん。…もしもし?え?今?ホテル。うん。今週い
2020年11月3日 00:08
ごめん伊吹。わかってる。だけど。ここで彼と会わなかったら何も終わらない。待ち合わせのお店に入った。「久しぶりだね」そういう顔は穏やかなものだった。あの頃とあまり変わってない。「…本当に離婚したの?」「第一声がそれなの?」「だって…」「ほら。指輪ないでしょ?」「…どういうこと?なんで今さら私と会うの?」「…はるかも思ってたでしょ?別れ方が悪かったよね
2020年11月2日 01:12
誰もいないはずのフロアで足音がした。こっちに向かって誰かが歩いてくる。「まーだ仕事するんすかあ?」「伊吹…まだ帰ってなかったの?」いつも通りニコニコした伊吹が立っている。「ねえねえ」「んー?」「顔色悪いよねえ?」「そう?普通でしょ」「どうして嘘つくの?」「嘘はつかない主義だけど」椅子ごとぐるっと回された。「こっち見て」「ちょっと、」「…辛い
2020年11月1日 00:05
「いいの?ご馳走になっちゃって」「いーのいーの!先輩とか後輩とか気にしないから〜」「それ言うの、私の前だけにしてよ?みんなは先輩後輩気にしてるんだから。怒られるよ?」「がってんしょうちのすけ〜って、ほら。はるちゃん、バッグ持ってあげる。重たいでしょ?」「いいよ、誰かに見られたらどうすんの」「見せつけてくスタンス?」「あいちゃんさすがだわ…」「あいちゃん!今あいちゃん
2020年10月31日 00:10
「志摩」「はい」「この前は…ごめん。なんか卑屈になっちゃったよね。せっかくタクシー呼んでくれたのに…ごめん。志摩のことが嫌とかそういうのではないから。ほんとに…ただちょっと、感情的になっちゃって。ごめん」「いえ。オレも勝手にいろいろ言って。すみませんでした。」「ふふ。大丈夫。」「あ、これ。約束してたやつ。お誕生日プレゼントです」「ありがとう。開けていい?」「もちろん」
2020年10月29日 22:55
「しーまーさ、」「あぁ?」「うわっ、ご機嫌斜めだ」「うるせえ」「どうしたの?」「ムカついてんだよ…」「誰に?」「…言ってただろ。15年前奴だよ。あの人があんな風になったのは奴のせいだ。」「証拠もないのに〜?偉く断定的だねえ。志摩さんらしくない」「あんなんじゃ自滅するだろ…」「それはオレもわかる。あれは自殺行為だよ。外傷はないけど、心が。」「何言っても、仕
2020年10月28日 23:53
「すみませんお待たせしました」「彼女さん?痴話喧嘩?」「上司です。痴話喧嘩する相手にまで至っていません。」「そう。頑固そうだもんね。彼女」「…そうなんですよね〜」「まあ、お兄さん頑張って。濡れちゃったけど」「ははっ笑 まあ、そうですね。はい。」こればかりはタクシーのおじさんの言う通りだ。本当に頑固。少しは近づけるかなと思ったのに逆にシャッターを下ろされた。