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かつて、彼女の描く大人の日常に憧れたことを思い出して~江國香織・森雪之丞『扉のかたちをした闇』を読む~
1番好きな作家は江國香織と答え続けて、そろそろ10年くらいが経とうとしている。最近になって「今全てを読み返したらどう感じるか?」みたいな疑問が沸々と湧いてきたので、「『泣く大人』とか『泣かない子供』あたりから読み返そうかな?それとも女性遍歴について思い返すヒントなら『思いわずらうことなく愉しく生きよ』あたりかな?」とか考えながらAmazonを検索してみると、最初に出てきたのは偶然にも読んだことの
もっとみる可能性の文学に魅せられて~池澤春菜『わたしは孤独な星のように』を読んで~
声優の池澤春菜さん、敬愛しております。幼少に『マリーのアトリエ』をやり、『キミキス』の摩央ねえちゃんを気に入り、ただKOFの麻宮アテナは「池澤さんだし、練習しようかな」と思い立ったはいいが、ちょっと扱いきれなくて…といった具合に、声優としての池澤春菜さんは、偶然にも、小さい頃からのお気に入りのキャラクターの声を演じられていた。
ただ、敬愛するというまでに魅せられるキッカケは学生の頃、BSフジで
愛を美しくするためには、愛はみにくいものと知ることが必要なんじゃないかという話~日日日『みにくいあひるの恋』を読み直す~
学生時代、狂った様にライトノベルを漁って読みまくった時期がある。名作と呼ばれるものから、毎月出る新刊まで、とにかく買って読みまくった。あの勢いに任せてただ読み続ける感覚は、読書というよりも摂取に近かったかもしれない。
(あの暴飲暴食のようなライトノベルへの没入は、やがて食傷気味になり、新作ライトノベル達を見限っていった。これはまた別のお話。)
ただ、狂った様に読む中で、だんだんと自分の中で、
友人曰く、幼稚園児がやるゲームじゃねぇよ!~PS版『最終電車』を友人とプレイ~
昔からの友人が、最近ノベルゲームに凝っているらしい。綾辻行人の館シリーズとかが好きだった影響で、ノベルゲームや推理アドベンチャーにもいつの間にか足を踏み入れていたとのことだ。
「なんかおもろいのない?」と聞かれて、幼稚園の頃にPSで何本かやった事を伝えると、今お手頃で、かつ、まあ内容もそこそこ面白かったものを選んだ結果、この『最終電車』になったというわけだ。
本当は『夕闇通り探検隊』を薦めた
夜桜は綺麗だった。~お参りはいつも越中詩郎のつもりで~
「ねえ、桜咲いているよ!もう春なんだね。」
桜が咲いているのを見て、春の訪れを実感するのは、とても女性的な感性だなと思ったのはつい最近のこと。
自分一人なら、「あー、咲いたんだなー。」と気づけばまだマシな方で、もしかしたら桜の花を見向きもせずに梅雨に突入してたかもしれない。
春は桜を見るもんだと言われ、半ば付き添う形で夜の神田明神に足を運ぶ。その日の予報は夕方から雨だったが、ここに来て晴れ男が効
それはいつだって旅の始まり~宇野常寛『チーム・オルタナティブの冒険』を読んで~
「逆シャア友の会知ってるか?ガノタなら読むべきだぜ?」
これは広島のとある料理屋での友達のセリフである。伝説の同人誌を紹介し出した友達の話を、ふんふんと、日本酒を煽りながら聞き入っていた。野郎3人で美味い酒と飯を求めて広島旅行をしてた時のことで、酒の席でガンダムや富野由悠季の話が出るのはいつものことなのだが、その日は間違いなく、これからのガノタバナシを変えていく新しい風が吹いた。
機動戦士ガンダ
SEED世代と呼ばれた僕ら~『SEED FREEDOM』について考える~
劇場版ガンダムSEEDが公開されると聞いて、僕は「いよいよか!」「何年待たせんだよ!」という胸の高鳴りよりも、「そういえばそんな話もありましたね。」くらいの熱量だったというのが正直な感想だ。2006年に制作が発表され、18年の時を経て公開された『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は、昔行方不明になった同級生が突然目の前に現れたみたいな、すこし神秘的な感覚すら覚える存在だった。
SEED