柳瀬涼

文章を書きます。 読書記録や日記がメインになります。

柳瀬涼

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記事一覧

かつて、彼女の描く大人の日常に憧れたことを思い出して~江國香織・森雪之丞『扉のかたちをした闇』を読む~

 1番好きな作家は江國香織と答え続けて、そろそろ10年くらいが経とうとしている。最近になって「今全てを読み返したらどう感じるか?」みたいな疑問が沸々と湧いてきたの…

柳瀬涼
5日前
5

可能性の文学に魅せられて~池澤春菜『わたしは孤独な星のように』を読んで~

 声優の池澤春菜さん、敬愛しております。幼少に『マリーのアトリエ』をやり、『キミキス』の摩央ねえちゃんを気に入り、ただKOFの麻宮アテナは「池澤さんだし、練習しよ…

柳瀬涼
13日前
8

原点 ~ZARD『永遠 君と僕との間に』に救われる

 この前、親友のaiko熱に触発されてaikoについて聴いて思ったことを書いてみた。  それからも友人からもらったプレイリストは、常に楽しく聴いている。聴いてて思った事…

柳瀬涼
1か月前
7

愛を美しくするためには、愛はみにくいものと知ることが必要なんじゃないかという話~日日日『みにくいあひるの恋』を読み直す~

 学生時代、狂った様にライトノベルを漁って読みまくった時期がある。名作と呼ばれるものから、毎月出る新刊まで、とにかく買って読みまくった。あの勢いに任せてただ読み…

柳瀬涼
2か月前
9

やっぱりaikoを激推ししてくる親友、あるいは、これからの心の指標のようなもの。

 昔似たような記事をnoteに書いた。記事自体は消してしまったが、どうにもあの時考えたことを更新して整理しときたい気分になった。初めに断っておくと、自分はaikoのファ…

柳瀬涼
2か月前
9

友人曰く、幼稚園児がやるゲームじゃねぇよ!~PS版『最終電車』を友人とプレイ~

 昔からの友人が、最近ノベルゲームに凝っているらしい。綾辻行人の館シリーズとかが好きだった影響で、ノベルゲームや推理アドベンチャーにもいつの間にか足を踏み入れて…

柳瀬涼
2か月前
5

大人になるって?~樋口直哉『大人ドロップ』を読み返して~

はじめに 5月に入り、暑さが徐々に身にまとわりつくようになってきた。夏の暑さとか冬の寒さというのは、どちらも自分にとって季節の変わり目を実感できるもので好きなも…

柳瀬涼
2か月前
6

日本人として、日本語をもう少し丁寧に扱おうと心に決める。 ~吉屋信子『花物語(上)』を読む~

はじまりは先輩からの独白だった。 「学生の頃、フランス人形みたいな先輩がいてね、洗顔の泡の上手な立て方を教えてくださったり、免許を取って初めてのドライブは助手席…

柳瀬涼
2か月前
5

センスを言葉で伝えるということをすなり~千葉雅也『センスの哲学』を読む~

 センスについて自分が考える時、まず初めに考えるのは「それが好きかどうか。」だ。自分はつまるところ、今まで“好きこそものの上手なれ”信仰なのだ。好きかどうかが最…

柳瀬涼
3か月前
21

恋愛を素晴らしいと思える日~鈴木涼美『YUKARI』を読む~

「日本人、結婚好き過ぎんのよ。」 そう喋っていた我が親友は、最近唐突に彼女が出来た。フリーである時は「恋人が途切れないのはむしろ悪いこと」「彼女がいないこの2年ほ…

柳瀬涼
3か月前
7

夜桜は綺麗だった。~お参りはいつも越中詩郎のつもりで~

「ねえ、桜咲いているよ!もう春なんだね。」 桜が咲いているのを見て、春の訪れを実感するのは、とても女性的な感性だなと思ったのはつい最近のこと。 自分一人なら、「あ…

柳瀬涼
3か月前
10

もう少しテキトーに振る舞いたい~高田純次『適当日記』を読む~

これからの人生を生きていく上で大事なものは楽しさであり、その楽しさのために欠かせないのは絶対“テキトーさ”だ。 それを最初に学んだのは大学生も半ばを過ぎての事。…

柳瀬涼
3か月前
8

それはいつだって旅の始まり~宇野常寛『チーム・オルタナティブの冒険』を読んで~

「逆シャア友の会知ってるか?ガノタなら読むべきだぜ?」 これは広島のとある料理屋での友達のセリフである。伝説の同人誌を紹介し出した友達の話を、ふんふんと、日本酒…

柳瀬涼
4か月前
3

SEED世代と呼ばれた僕ら~『SEED FREEDOM』について考える~

 劇場版ガンダムSEEDが公開されると聞いて、僕は「いよいよか!」「何年待たせんだよ!」という胸の高鳴りよりも、「そういえばそんな話もありましたね。」くらいの熱量だ…

柳瀬涼
5か月前
8
 かつて、彼女の描く大人の日常に憧れたことを思い出して~江國香織・森雪之丞『扉のかたちをした闇』を読む~

かつて、彼女の描く大人の日常に憧れたことを思い出して~江國香織・森雪之丞『扉のかたちをした闇』を読む~

 1番好きな作家は江國香織と答え続けて、そろそろ10年くらいが経とうとしている。最近になって「今全てを読み返したらどう感じるか?」みたいな疑問が沸々と湧いてきたので、「『泣く大人』とか『泣かない子供』あたりから読み返そうかな?それとも女性遍歴について思い返すヒントなら『思いわずらうことなく愉しく生きよ』あたりかな?」とか考えながらAmazonを検索してみると、最初に出てきたのは偶然にも読んだことの

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可能性の文学に魅せられて~池澤春菜『わたしは孤独な星のように』を読んで~

可能性の文学に魅せられて~池澤春菜『わたしは孤独な星のように』を読んで~

 声優の池澤春菜さん、敬愛しております。幼少に『マリーのアトリエ』をやり、『キミキス』の摩央ねえちゃんを気に入り、ただKOFの麻宮アテナは「池澤さんだし、練習しようかな」と思い立ったはいいが、ちょっと扱いきれなくて…といった具合に、声優としての池澤春菜さんは、偶然にも、小さい頃からのお気に入りのキャラクターの声を演じられていた。
 ただ、敬愛するというまでに魅せられるキッカケは学生の頃、BSフジで

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原点 ~ZARD『永遠 君と僕との間に』に救われる

原点 ~ZARD『永遠 君と僕との間に』に救われる

 この前、親友のaiko熱に触発されてaikoについて聴いて思ったことを書いてみた。

 それからも友人からもらったプレイリストは、常に楽しく聴いている。聴いてて思った事は、何故か「歌詞を必ず“文字”として見たい。」と感じている自分がいるということだ。昔から、アルバムを買ったら必ず歌詞カードを開いて、歌詞を詩集のように読む癖があった。その癖を自分に習慣づけたアーティストは2組いて、そのうちの1人は

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愛を美しくするためには、愛はみにくいものと知ることが必要なんじゃないかという話~日日日『みにくいあひるの恋』を読み直す~

愛を美しくするためには、愛はみにくいものと知ることが必要なんじゃないかという話~日日日『みにくいあひるの恋』を読み直す~

 学生時代、狂った様にライトノベルを漁って読みまくった時期がある。名作と呼ばれるものから、毎月出る新刊まで、とにかく買って読みまくった。あの勢いに任せてただ読み続ける感覚は、読書というよりも摂取に近かったかもしれない。
(あの暴飲暴食のようなライトノベルへの没入は、やがて食傷気味になり、新作ライトノベル達を見限っていった。これはまた別のお話。)

 ただ、狂った様に読む中で、だんだんと自分の中で、

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やっぱりaikoを激推ししてくる親友、あるいは、これからの心の指標のようなもの。

やっぱりaikoを激推ししてくる親友、あるいは、これからの心の指標のようなもの。

 昔似たような記事をnoteに書いた。記事自体は消してしまったが、どうにもあの時考えたことを更新して整理しときたい気分になった。初めに断っておくと、自分はaikoのファンではない。今は、まだ。
 数年前、詳しい経緯は聞いてないが、親友が気づいたらaikoの大ファンになっていた。僕らの年齢からすると、ちょっと珍しい気がした。それまでの人生で、aikoをカブトムシ以外まともに聴いたことがなかった自分は

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友人曰く、幼稚園児がやるゲームじゃねぇよ!~PS版『最終電車』を友人とプレイ~

友人曰く、幼稚園児がやるゲームじゃねぇよ!~PS版『最終電車』を友人とプレイ~

 昔からの友人が、最近ノベルゲームに凝っているらしい。綾辻行人の館シリーズとかが好きだった影響で、ノベルゲームや推理アドベンチャーにもいつの間にか足を踏み入れていたとのことだ。
「なんかおもろいのない?」と聞かれて、幼稚園の頃にPSで何本かやった事を伝えると、今お手頃で、かつ、まあ内容もそこそこ面白かったものを選んだ結果、この『最終電車』になったというわけだ。

 本当は『夕闇通り探検隊』を薦めた

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大人になるって?~樋口直哉『大人ドロップ』を読み返して~

大人になるって?~樋口直哉『大人ドロップ』を読み返して~

はじめに 5月に入り、暑さが徐々に身にまとわりつくようになってきた。夏の暑さとか冬の寒さというのは、どちらも自分にとって季節の変わり目を実感できるもので好きなものだが、それと同時過去の記憶を呼び起こすキッカケでもある。季節の変わり目だけでなく、例えば食べ物の味とかシャンプーの匂いとか、そのまま記憶をショックのように思い出させるものはたくさんあるだろう。
 今年も例に漏れず、なんとなく暑さを感じるよ

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日本人として、日本語をもう少し丁寧に扱おうと心に決める。 ~吉屋信子『花物語(上)』を読む~

日本人として、日本語をもう少し丁寧に扱おうと心に決める。 ~吉屋信子『花物語(上)』を読む~

はじまりは先輩からの独白だった。
「学生の頃、フランス人形みたいな先輩がいてね、洗顔の泡の上手な立て方を教えてくださったり、免許を取って初めてのドライブは助手席に乗せてくれたり。」
「それは恋愛だったりするの?」
「うーん、どうだろう。」
先輩は少し考える。
「恋愛感情は無かったかな。でも、その人に初めて彼氏が出来て、遊ばれて捨てられたとわかった時は心の底から相手が憎かったし、進学した後に車で学校

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センスを言葉で伝えるということをすなり~千葉雅也『センスの哲学』を読む~

センスを言葉で伝えるということをすなり~千葉雅也『センスの哲学』を読む~

 センスについて自分が考える時、まず初めに考えるのは「それが好きかどうか。」だ。自分はつまるところ、今まで“好きこそものの上手なれ”信仰なのだ。好きかどうかが最も重要な問題であり、好きでやっている、もしくは続けていることなら、なんらかの形でセンスがあると言えると思っているし、好きじゃないならそもそもセンスについてなんぞ考えなくてよろしい。そんな比較紋切り型寄りの考え方で今まで生きてきた。だから「セ

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恋愛を素晴らしいと思える日~鈴木涼美『YUKARI』を読む~

恋愛を素晴らしいと思える日~鈴木涼美『YUKARI』を読む~

「日本人、結婚好き過ぎんのよ。」
そう喋っていた我が親友は、最近唐突に彼女が出来た。フリーである時は「恋人が途切れないのはむしろ悪いこと」「彼女がいないこの2年ほど、自分はとても調子がいい」などと語っていた彼も、やはり唐突に目の前に現れた相性の良さそうな女性に知らぬ間に惹かれていたということだ。彼は「決して自分が惚れているわけではない」という点を強調しているが、彼自身が惚れた腫れたくらいの不合理か

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夜桜は綺麗だった。~お参りはいつも越中詩郎のつもりで~

夜桜は綺麗だった。~お参りはいつも越中詩郎のつもりで~

「ねえ、桜咲いているよ!もう春なんだね。」
桜が咲いているのを見て、春の訪れを実感するのは、とても女性的な感性だなと思ったのはつい最近のこと。
自分一人なら、「あー、咲いたんだなー。」と気づけばまだマシな方で、もしかしたら桜の花を見向きもせずに梅雨に突入してたかもしれない。

春は桜を見るもんだと言われ、半ば付き添う形で夜の神田明神に足を運ぶ。その日の予報は夕方から雨だったが、ここに来て晴れ男が効

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もう少しテキトーに振る舞いたい~高田純次『適当日記』を読む~

もう少しテキトーに振る舞いたい~高田純次『適当日記』を読む~

これからの人生を生きていく上で大事なものは楽しさであり、その楽しさのために欠かせないのは絶対“テキトーさ”だ。
それを最初に学んだのは大学生も半ばを過ぎての事。もうこの世にはいないが、かつて悪友だったヤツがたいそういい加減な野郎だった。
そいつは東京の割と大きい祭りで神輿を担いでいて、おそらくその場の昭和の男たちから、主に酒の席で色々学んできたんだろう。
飲み会での大先輩への接し方や、おばちゃん達

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それはいつだって旅の始まり~宇野常寛『チーム・オルタナティブの冒険』を読んで~

それはいつだって旅の始まり~宇野常寛『チーム・オルタナティブの冒険』を読んで~

「逆シャア友の会知ってるか?ガノタなら読むべきだぜ?」
これは広島のとある料理屋での友達のセリフである。伝説の同人誌を紹介し出した友達の話を、ふんふんと、日本酒を煽りながら聞き入っていた。野郎3人で美味い酒と飯を求めて広島旅行をしてた時のことで、酒の席でガンダムや富野由悠季の話が出るのはいつものことなのだが、その日は間違いなく、これからのガノタバナシを変えていく新しい風が吹いた。

機動戦士ガンダ

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SEED世代と呼ばれた僕ら~『SEED FREEDOM』について考える~

SEED世代と呼ばれた僕ら~『SEED FREEDOM』について考える~

 劇場版ガンダムSEEDが公開されると聞いて、僕は「いよいよか!」「何年待たせんだよ!」という胸の高鳴りよりも、「そういえばそんな話もありましたね。」くらいの熱量だったというのが正直な感想だ。2006年に制作が発表され、18年の時を経て公開された『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は、昔行方不明になった同級生が突然目の前に現れたみたいな、すこし神秘的な感覚すら覚える存在だった。

SEED

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