【詩集】自分探しの迷子

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ノート

家出飛行機

狭苦しい自分の部屋には無数の逃げ場所がある。
 ノートを開いても何ページ進めるかわからない。罫線の先を追っている内に僕は気がついてしまう。そこにリモコンがある。扉がある。スイッチがある。スナックがある。シャワーがある。何よりもあたたかい布団がすぐそこにある。もしも一瞬でも誘惑に負けてそこに手を触れてしまったら、もう永遠の夢に向けて一直線さようなら。自分の弱さがわかっているから、僕はここを出なくちゃ

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ファースト・ステップ

転げることを怖がることはない。
 転ぶ前に一歩前に踏み出せばいい。それは簡単なことだ。体が覚えてしまえば、もう考えることはない。何よりも自然に、空気に触れているようにできるのだ。
 不安は最初の数歩だけだ。
 一歩、一歩、先へ進んでいけばそれでいい。確信は余裕へと変わるだろう。
 僕はもう大丈夫。そう思った瞬間に、僕はつまずいてしまう。また3歳に戻ってやり直し。

(ふりだしに戻る)

 大丈夫よ

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どうもありがとう!
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アーモンドチョコレート

アーモンドとチョコレートを口の中で融合させて、僕はアーモンドチョコレートを作り出した。アーモンドはアーモンド、チョコレートはチョコレート。僕の口の中でそれは紛れもないアーモンドチョコレートになった。アーモンドが欲しい時、僕はアーモンドを食べる。チョコレートが欲しい時、僕はチョコレートを食べる。別々にやってきたアーモンドとチョコレートが私の口の中で出会い、私の歯によって噛み砕かれる時、アーモンドチョ

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励みになります!
5

千駄ヶ谷の駒台

長い旅路の果てに僕は盤上から消えた。千駄ヶ谷の魔神の駒台の上には、豊かな個性が揃っていた。中盤で激しい戦いが起こり、流れはもはや止まらない。至るところで歩がぶつかっている。次の接触でまた誰かが宙に舞い、こちら側の世界に移ってくるだろう。「大きな奴がやってくる」そんな噂が聞こえるが、ここから中央を俯瞰で見ることはできない。私は険しい旅路の果てに盤上から消えた。

 そして、今は千駄ヶ谷の魔神の駒台の

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みつけてくれてありがとう!
3

空友

とっくに中身を飲んでしまったカップを持って行くところが見当たらない。仕方なく僕は空っぽのカップを持ったまましばらくの間、歩くことになるのだ。しばらくの間……。3分でも20年でもそんな概念はどうにでもなる。僕はそれなりの忍耐力は持っている。行き場のないカップはずっと手にくっついている。どこかにゴミ箱はないかな。ゴミ箱はどこにもない。僕がそれを探し求めているからだ。僕の体を温めて少し甘くした後のカップ

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僕たちの恐怖

僕は5人の少年が怖かった。ずっとずっと前から。彼らは怖いものなしで、僕には怖いことだらけだったから。どこからやってきてどこへ帰って行くのか、まるで興味はないのに。彼らの話す大きな声が怖かった。高く響く笑い声が怖かった。
 でーんと構えた男が前にいるのが怖かった。開いた足の隙間が怖かった。
 おいお前! 突然飛んでくる声が怖かった。

「何か面白い話をしてくれよ」
 何でもいいという漠然としたものが

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みつけてくれてありがとう!
4

チャイルド・ルーム

散らかりすぎた部屋に
心を折られて
何も手がつけられない

優先順位?

理屈っぽい話はごめんだ

古いアルバムをみつけ
時が止まる

私はどこ?

本当にありがとう!
4

朝のルーティン

朝起きてまず最初にすることはスマホを充電することだ。
 僕が疲れて眠っている間に、彼はもっと疲れているのだろう。すっかり弱く今にも力尽きようとしている。急を告げるメッセージが僕が今からやろうとしていることを催促しているようだ。コードは眠っていても手の届くところにある。そうでなければすぐに彼を助けることはできない。僕はまだ半分眠っているからだ。眠りながら布団から抜け出して、何かを取りに行くような真似

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どうもありがとう!
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職質の嵐

「何してる人ですか?」

 今何をしているかよりも大事なのはこの先何をしようとしているかだ。なのにみんな今を問いつめることに必死だ。

「勿論、何もしていませんよ」

 まだ先がある。僕はずっと胸を張って未来を見ている。何をするでもなく、わしは死んでいたようだ。それでも死んでからしばらくの間は、誰もそのことに気がつかなかったようじゃ。わしは死んでもなお水を得た魚のように生き生きとしてプレーしたもん

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シングル・スクール

教えなければならないことが私の持ち時間を遙かに超えてしまったから。私に教えることは何もなくなった。そう言い残して先生は教室から出て行こうとしている。先生は逃げるんですね。僕たちを置いて。今までのことはどうしてくれるのです。何もなかったというのに何を教えていたのです。僕は逃げ出していく先生の肩にぶつかって先生を止めた。ファールだと窓にくっついていた虫が騒いだけれど、主審はファールを取らなかった。先生

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かたじけない!
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