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ショートステイ

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クリエイター・リンク集「バスを待つ間に触れられるものを探しています」
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#詩

詩「ワンルーム•パパ」

先日あなたは
遠くに行きました
戻る気配はないようです

買ったことない
野菜の調理法
誤って
歯に挟まったり

そんな僕のような
あやまちを
母さんと出会う前
あなたもしたでしょ

"ひとり"と"ひとり"になれたから
話をしたい
「エヴァ、終わりましたね。」

やり切れない思いを
見せ合いながら 笑いながら

眉毛の太い
足の短い
僕によく似た男の子

始まりで終わる

始まりで終わる



朝夢から覚めた瞬間に
今までありありと体感してた夢の中が
一気に袋とじに圧縮されて
銀河のどっかに投げ捨てされる。

夢はいつも
夢を見つけた途端
闇の彼方へ回収される。

僕はそれは
君といる時間となんか似てるなと思ってる。

君をやっと感じると、
闇が彼方から僕を飲み込んで
僕の全感覚を回収しにくる。

夢との違いは、
闇に投げ捨てられるか
闇に投げ入れられるかの、
それくらい。

【詩】CROW

【詩】CROW

深淵はもう飽きました
表層に憧れてます
うらぶれた地質学に小さな納屋を建て
夕陽のことを考えて、戒名と共に暮らす
昨日の事を今日のように話す家畜と
生活の匂いのしない長さと
大小の容れ物に仕舞われた作物と
舌先(のようなもの)と

戻った時にはひとりだった
今度は耐えられるだろう
レンズの裏側に捕らえられた展望のうち
一体どれだけのものを私は相続出来るだろう?
どれだけの足が私の後を追うだろう?

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透明なまま
電車に乗り込む
空いている車内なら
誰かにバレることなく
網棚に寝そべっていられる
長い長い
通勤だからそれがいい
そのうち
満員列車になって
人々の蒸気が立ち込める
もやもやが
透ける体と心を侵してくる
そろそろ降りて
色付き人間に戻らなくては
みなさん
おはようございます

【詩】凱旋門

【詩】凱旋門

もう忘れたかな?
駅までの道が暗くて少し怖かったこと
もう忘れたかな?
ルーズリーフの穴の数が微妙に合わなかったこと
あの角のタコスサンドは閉店間際は大盛りで
もう忘れたかな?
君は大勝利を手にあの門を潜る
堂々と胸を張って
胸を張って

もう忘れたかな?
「ありがとう」と「ごめんね」を毎日繰り返して
もう忘れたかな?
いつまでも好きなままじゃいけないって気付いて
ハイドパークの白鳥に指を噛まれて

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居座る人

知らない人が
代わりばんこに毎日
わたしの部屋で
わたしを待っている

はじめの人には
大層驚いて
尋ねたり諭したり
怒ったり脅したり
などして
実力行使に出たが
うんともすんとも言わず動かず
居座りは解けなかった

警察も呼んだが
物語の紋切型よろしく
他人には見えないようで
気がつけば
わたしは
異常者だということになった

さて
居座る人は
次の人も次の人も
次の人も次の人も
一日で消えてゆ

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現実的非現実

ある昼下がり

大通りに面したオープンカフェでは
憂いを含むジャズが静かに流れ

コーヒーを飲み干し
気だるそうにあくびを噛む男と

その隣に

手鏡を見ながら口を開け
口紅を塗り直す女が座る

少し離れた席では

ラブラドールが
新聞を読み耽る老紳士の足元に
顎を付け穏やかに伏せ寝している

通りに目をやると

ボーダーのカットソーを着た青年が
古い二眼レフカメラの
ファインダーを覗いており

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葉桜の道

視界から最後のバスが消え

残った人影をぬぐい去る

ゆっくりと明日へカーブして

ここに思い描かれたばかり

光をあきらめても

まだ今日は続く

いたずらに撒き散らした日々の

重なり合うところに足を止め

花びらに埋もれた歩道橋

終わりはじめた季節の向こう

白く輝く死を引き裂いて

緑の呼吸が空を縁取る

誰の足音もなく

誰のつぶやきもなく

誰の思い出もなく

誰の空白もなく

裏返

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待ち合せ

待ち合せ

 自販機から、3メートル50センチ離れた、

 カーブミラーの真下が、

 わたしたちの、いつもの座標点だ。

 わたしは、君に「会おう」と云われれば、

 12秒以内に、そのポイントに到達できる。

 だけれども、君もおんなじくらいの速度なので、

 いつも、毎度、重なってしまう。

 そして、視界が真っ暗になる。

 人の中身って、案外黒っぽくて、静かだ。

 その、居心地の良さに、いつも酔っ

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2020/09/08【立ち喰い蕎麦】

2020/09/08【立ち喰い蕎麦】

物語の主人公になれる人ってだいたいさ、昔ながらのナポリタンとか、駅前の安い立ち喰いそばが好きだよね。社会人何年目になっても、東京には染まらず、高級なお店には背伸びしていくよね。

いつまで経ってもそういった安い立ち喰いそばが好きなことが、青春を忘れないための布石になっていて、いつまでも舌が肥えていないことが、あえて、優位になる世界な気がする。
私がそういった物差しでしか物事を図れないのかもしれない

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思考停止。

思考停止。

良い感じで思考停止している。

少しの間

思考停止状態が続く。

その状態が今の自分には

優しい。

停止している時間を

緩やかに楽しんでみる。

それは悲しさも楽しさも悔しさも無い

停止の時間に脳の塵を放り捨てていこう。

脳の疲れも無くなる様に

思考停止。

羽毛

羽毛

 翼が生えた。

 まさに、天使のような、純白で、ふわふわと気持ちの良さそうな、羽毛だ。

 行きたかった場所がたくさんある。

 さっと飛んでいって、さっと帰ってこよう。

 いろいろな場所を、見て回ろう。

 そう思い立って、まさに、立ち上がったのはいいのだけれど、

 翼が重い。

 そう、これが、この世のものでないように、重いのである。

 たしかに、人間に翼が生えるという事態、自体が、

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