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読了

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読んだ本についての感想とか考察とか
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『ばくりや』と才能 #読了

『ばくりや』と才能 #読了

表紙に惹かれて読みました。

作者の乾ルカさんは、幽霊や怪異的なホラーをよく描く(wikiより)らしい。
その評に違わぬ、じつに「奇妙でゾッとする」短編集だった。

”もしも、他人の「才能」を交換できたら…
あなたは、代わりに何をさし渡すだろうか?”

『ばくりや』(乾ルカ.2011)は、とある人間だけがたどり着ける、不思議な店の話。
そこに訪れた客の、その後の破局を楽しめる。
ブラックなお話であ

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『ありえないほどうるさいオルゴール店』と悩み #読了

『ありえないほどうるさいオルゴール店』と悩み #読了

悩みはいつやってくるのだろう。

ふと、そんなことを考えたのは、
わたしが、まさにいま悩んでいるからだ。
「悩みのない人間なんて、いない」
そんなありきたりな答えを、求めているからだ。

だれしも、生きていれば、つらいこと、悲しいこと、どうしたらいいかわからなくなってしまうこと。
どんなに余裕ぶっていても、気持ちが一向に晴れなくて、ふさぎ込むこと。
周りの誰かに、ボソッと愚痴をこぼすことも自責する

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『原子力の哲学』と絶望に向けて #読了

『原子力の哲学』と絶望に向けて #読了

今回は、おもしろかった新書をとりあげてみる。

ずばり、『原子力の哲学』(戸谷洋志.2020:集英社新書)である。

映画『オッペンハイマー』の公開から1カ月弱が経ち、やや話題性が過ぎたころに書き起こしています。

注目に至ったのは、筆者である戸谷先生である。

など、小難しい言葉や概念から説き進める哲学書ではなく、すごく身近なキーワード、トピックから「あ~、そう考えられるのか」と、率直に”考える

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『こちらの事情』(森浩美)と不器用#読了

『こちらの事情』(森浩美)と不器用#読了

いつからだったろう。

私は親が大嫌いだった。

だからいうまでもなく、「家族」といる時間がまるまる幸せな時間とはいえなかった。新潟の田舎生まれである私は、父・母・弟のほかに祖母・曾祖母・叔母と暮らす10人家族だった。特に父と母といる時間が辛かったので、必然的におじいちゃん子となっていた。おいしい焼き芋を焼いてくれる“お芋のおじい”とゴルフが好きな“ゴルフのおじい”が大好きだった。

どのくらい嫌

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『狂女たちの舞踏会』(ヴィクトリア・マス)と精神病院 #読了

『狂女たちの舞踏会』(ヴィクトリア・マス)と精神病院 #読了

日々の読書に感想を。そんな気持ちで読了。

本記事で紹介するのは、フランス人作家のヴィクトリア・マスの手がけた有名作。
『狂女たちの舞踏会(原題:The Mad Women's Ball,2019)』。

フランスの「高校生が選ぶルノード賞」を受賞し、若い世代にも読みやすくおもしろいテーマを取り上げている。

ちなみにこの方 ↑ がそうです。フツクシイ....(*^^*)

しかも、これ書いてると

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『ふくわらい』(西加奈子)と他人 #読了

『ふくわらい』(西加奈子)と他人 #読了

日々の読書に感想を。そんな気持ちで読了note。

~人間の存在というものは、狂気なしには理解され得ない~
( J.ラカン / フランスの哲学者、精神科医 )

他人を理解することは難しい。なぜならそれぞれがズレているから。

西加奈子の『ふくわらい』を読了してみての感想は、そんなテーマを起こさせる作品だった。

作品について説明しておくと、作者・西加奈子は『あおい(2004)』『きいろいゾウ(2

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『野菊の墓』で泣こう。少し深く読む。

『野菊の墓』で泣こう。少し深く読む。

「民子さんは野菊の様な人だ」

有名な『野菊の墓』伊藤左千夫 のフレーズです。知ってる?

個人的には夏目漱石の
「今宵は月が綺麗ですね」
に匹敵するエモさがあると思ってる。

15歳の少年と
17歳の少女が恋した。
二人はこれからも一緒にいたかった。
周りはそれを引き離した。

日本版ロミオとジュリエットとでも言おうか。

美しいほど純粋な恋愛と、せつないほど悲しい現実の壁。
ただでさえ涙腺プル

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『刑罰』(F.V.シーラッハ)と刑法の不完全さ   #読了

『刑罰』(F.V.シーラッハ)と刑法の不完全さ #読了

日々の読書に感想を。そんな気持ちで読書感想文

今回は図書館で見つけた禍々しい表紙が目を引いた一冊

本記事は

「作者」「内容」「気になった文章・ポイント」
三点から感想をまとめる

なるべくネタバレしないようにするので
“面白そう!!”
と思ってくれれば幸い

フランス文学コーナーを旅している途中

インパクトのある表紙と
興味をそそるタイトルの二文字が

気になって手にとってしまった

法律

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『回転晩餐会』(一穂ミチ)と優しさ#読了

『回転晩餐会』(一穂ミチ)と優しさ#読了

国語(現代文)を勉強すると、文章馴れは必然。

文学と美術を勉強し直そうと思って、
原田マハ を初購入した。

読まなきゃ。

そんな中で見つけたのが
【回転晩餐会】(一穂ミチ)

同作者の『スモールワールズ』(講談社)刊行記念に発表されたショートストーリー。

短い感想を一つ。

舞台は15階建てのビル。
最上階の展望レストラン。
最高の景色と、最高の食事の場。

特徴は、座席が80分かけて“回

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『村上春樹短編集』とシュール #読了

『村上春樹短編集』とシュール #読了

私は村上春樹を知らない。

正確には、作品名と少しくらいしか知らない。

読破したことも、映画化作品も、エッセイ集も未読だ。
(『海部のカフカ』と『羊をめぐる冒険』は気になっている)

理由はただ一つ

“わからない”からだ

世界観や村上春樹用語集が作られるほどに、難解な姿をして立ちふさがってくるからだ。

なので短編集に挑戦してみた。
そしたらシュールなおもしろさに溢れていた。
やったね。

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