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TANKA

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現代短歌。過去や現在や未来のことを文字にする。漫然とだらだら書きたくなかったので、「素材:キャンバスにアクリル絵具」のような括りを文字の表現にも設けたいと思った。
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#恋愛

現代短歌 《汚れたスニーカー》

現代短歌 《汚れたスニーカー》

その海は誰の涙でできている確かめる前に両足を浸す

ひび割れたグラスにうつるその女(ひと)は時が経つほど美しく光る

溺れても大丈夫ですその波はあなたの心奪えやしない

いつだって優しい言葉をくれるのは傷付けたくないからそれとも

花びらが散る頃にもまだ降り注ぐ紙吹雪のよう気まぐれな言葉

唾を吐き馬鹿野郎などと叫ぶならアスファルトになれ雑草になれ

オーロラに光る眼鏡をかけてみてどうだいこの世も

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現代短歌 《アネモネの花》

現代短歌 《アネモネの花》

夢の中あなたと並んで行く道で同じ地点を見つめていたい

胸の奥ほんとの想いに触れなけりゃ良かったのかと乱され続け

明るさで覆い隠した闇の中覗きたい私見せないあなた

アネモネの花々に添えたメッセージ読むな気付くな読んで気付いて

幸せのバランスがとれた過去は今ぼろぼろと崩れ跡形も無く

その男(ひと)は誰なんだいと聞かれても答えられない憂鬱に飲まれ

星が今ひとつ増えたら照らされた見たくなかった

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現代短歌 《いつかどこかで》

現代短歌 《いつかどこかで》

いつまでも覗ける秘密はつまらない消えてこその夢 幻の華

年表を眺めあなたもそんな時あったのねいつか辿り着く日まで

中身さえわからぬ箱を追い求めどうせ空だと勘付く頃に

10年の時を経てまた巻き戻るその記憶そっと引き出しにしまえ

時既に遅しと思い諦めた心ふわふわ彷徨いながら

寂しさを埋める行為は虚しくも想い溢れてまた浸る過去

遡るあの頃握った幸せは今や溶け出し跡形も無く

戻りたいそんな思

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現代短歌 《太陽が西からのぼる》

現代短歌 《太陽が西からのぼる》

あたたかい夢抱えつつ目の裏に写り込んでる湖の底

銀色に輝く魚横切れば無視した後悔あぶくとなり消え

悪い癖届く届かぬ五分五分のあなたへの手紙したため続けて

裸足でも歩ける君の応援がここまで届く雪の上なら

ヒヤシンスその根はどこに繋がったあなたの足元その道の先

過ぎし日を反芻しても進まないそれでも思い出として生き続け

甘くても苦くてもいい君のそば居られるならば咲き乱れる花

舌の上転がる球

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現代短歌 《灰色の今》

現代短歌 《灰色の今》

じたばたと転げ回って表情を変え続けても驚かぬ君

あなたにはどんな姿に見えている諦めずしがみつく私の影

愛される自信がなくて月影にうつして薄目で見る臆病ゆえ

こわいんだあなたに何処かへ行かれたら居場所持たない寂しさを見る

雨よ降れいつまでも降れこの場所で選択肢奪う口実となれ

ふられれば安心するのかこの心拒否され嫌われるのには慣れたよ

痛くない胸の奥へと突き刺さる棘の大きさ気付きたくない

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現代短歌《どうにもならぬ日々》

現代短歌《どうにもならぬ日々》

「あの時にこうしておけば」と言う人と「あの時」すら無かった己の日々

後悔をしない道選び歩んでも生まれた時代(とき)は変更が効かず

私には普通のことが分からないあなたの邪魔にはなりたくなくて

いつまでも手放すことが出来なくて遂に形にして並べ始め

こんなにもたくさんの想い伝えたらあなたは重さに耐えられるかしら

この気持ち全てを明かす時までに私は幾度も更新(交信)を続け

夜を待ちわざと彷徨う

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現代短歌《空のむこうで》

現代短歌《空のむこうで》

あの女(ひと)もあなたもきっと真ん中でいつか出逢うわ星と瞬き

私にはなんの資格も無いのならせめて静かに願いだけを込め

甘い嘘それでも嬉しかったのさ外に出れない今年の夏が

間違ったことがこれほど嫌なのに根本から歪む己の想い

三角の点が消えたの一つだけ残った二点は繋がらないのに

幻が消えずに寧ろ愛おしくあなたの中に残る虚しさ

私には一体何が出来るでしょう繋がった先空のむこうで

自由まで奪

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現代短歌 《想えば想うほど》

現代短歌 《想えば想うほど》

膨らんだ風船のようなこの想い破裂で届けば後悔もなく

いつだって影が見えればその姿あなたでないと分かっていながら

背の高い茶髪の男(ひと)は来なかった?何処にでもいるそんな野郎は

澄んだ瞳(め)が美化されてゆく脳内でかけ離れてもいいの綺麗なら

現在のことでありつつセピア色いつの日のあなた何処にいるわたし

分からない丁度良いくらいどれくらい加減を知りたい掌の上

サラサラと風に飛ばされ舞い上

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現代短歌 《思うは自由》

現代短歌 《思うは自由》

夜を呼ぶ街の景色は様変わり私は帰る「よい子」ですもの

眠れないこんな時間もまた一興浮かぶ言葉と微睡み戯れ

この場所をいつか乗っ取るつもりなのお前なんかに誰が付いてくか

正気には戻っちゃいけない勝つまでは自分の納得する戦法で

蕁麻疹出てきて教える危険地帯気付かぬふりして渡り歩けば

色の無い日々を過ごすも悪くないあなたを想うだけで鮮やかに

幸せになりたいなんて言う奴はその偶像を追いかけて死

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現代短歌 《気持ち離れず》

現代短歌 《気持ち離れず》

あなただけ置き去りのままの日捲りがプロジェクションされ季節変わりゆく

将来の展望絶望希望などそのどれも聞けぬ明日は何処に

真上には雲の切れ間が今ならばまだ間に合いますあの先を目指せ

高架下ガラス張りの外見つめてはあなたの姿思い浮かべて

ここでなら何を言っても平気だわ列車の通過掻き消す冗談

走りゆく想いを筆にのせ続け消えない過去は塗り潰せないが

アルバムを繰り返し開く今は無駄それでもあの

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現代短歌《日々こぼれ落ちる》

現代短歌《日々こぼれ落ちる》

夢でみた魚になって泳ぐ君水槽の狭さ気になりつつも

時が経ちあなたの色がくすんでも私が汚れりゃ相乗効果で

坂道は上って下って歩くだけ今どの地点か分かりはしないよ

目を閉じて探してもあなた見つからず何処に居るのか雨粒を覗く

宝石のような瞳に映るのはいつも遠くの見知らぬ景色で

「分かり合う」などというのは不自然だ寄り添い互いを理解するのみ

やさしさは何かと問えば分からないやさしくなくても惹き

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現代短歌《一括りにできない想い》

現代短歌《一括りにできない想い》

曖昧なあなたのこころどこにある置いてきたのね遥か遠くへ

あまりにも日常として染み付いたあなたへの想いこすっても消えず

洗剤で幾度も洗えど落ちぬシミ堕ちた証拠として残り続け

本気なの本気じゃないのそんなこと言い争える程若くもなく

何度でも書いては出せず引き出しに入れては溜まってゆく紙切れたち

本当はアナログじゃないデジタルの恋文と呼べる重さも無いメモ

透き通る飴色に魅せられるたび思い出す

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現代短歌 《嘘と本当》

現代短歌 《嘘と本当》

頭髪が多いのは鬱陶しいんです。

「嘘つき」とあだ名が付くほど軽薄なあなたはおそらく正直者です

疑われも問われもしないその人生全てが嘘でできている日々

「ホントウ」を口にするほどその言葉作り物になるなら捨てたい

さっきまでここにリンゴがあったんだ誰が食ったかそうか私か

イヤリング落としたんです探してよ先程自分で捨てたんですが

外側を見てもいつものボブヘアー捲ればわかる当てたバリカン

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