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詩集
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#現代詩

花と火

花と火

枯れた花が燃えている

死んだ後で こんなに鮮やかな色をはなつのは

幸せだろうか

照らされた頬が染まっても 中まで暖まるわけじゃない

枯れた花が燃えている

とっくに消えてもおかしくないのに 火はまだそこにいる

幸せだろうか

照らされた瞳が染まっても 中まで輝くわけじゃない

これがほんとの最後なのに

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ひとつの絵

ひとつの絵

まあるい月から 雫が垂れたと思ったら それは涙で

いや、それも見間違いで ただ網から油が 炭に落ちただけだった

重く蒸発するようなその音は 一瞬のドラムのように静寂の中に響き また、虫の声が広がっていく

僕の目の前には 愛しい人が ハンモックで寝ていて 

いつものように イビキをかいている

音楽とも言えない音の重なりが 心に沁みてきて

また、僕は酒を呑む

幸せは 移ろうものと知りつ

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感性という麻薬

感性という麻薬

私のなかの とても美しい絵画は

現実には ラクガキにしかならない

私のなかの とても美しい映画も

現実には 学芸会のようなものだ

感性という麻薬が イタズラに心をみだしてくる

あの夕陽も 温もりも 涙も すべてはまぼろしなのに

私はなぜか 駆け出したくなってしまう

真っ白のキャンパスにぶつかって トマトのように潰れてしまえば

芸術になれるだろうか。

教室

教室

わたしからなにかを 引き算したら

のこったこたえは 奇数だろうか

白いノートに まるをつけても

あんまりきれいな かたちじゃないや

べつのなにかを足したって

わたしは浮き足 たったまま

だれかがまるを くれたって

わりきれないと ここを出れない。

ネズミの涙

ネズミの涙

安いワインを グラスに注いで

喉をならして 汚い幸せを流し込む

スカスカの魂から 垂れる涙を

知っている者にしか 

分からない苦しみがある

埃まみれの誇り

傷の少ない人生

足踏みしすぎて 窪んだ場所から

離れられずにいる

自分が腐るのを 対岸から眺めて

それをつまみに ビールを流し込む

スカスカの魂の 薄い悲鳴を

聞いた者にしか 

分からない苦しみがある。

憧れに照らされて(詩)

憧れに照らされて(詩)

遥か彼方から 浮遊するように落ちてきた

石が 砕ける瞬間を見た

一筋の光に照らされて 細かく 細かく

自分も光であるように 粒子になって

砕けていった

粉々になった石 何だったのだろう

胸に灯った熱は あの煌めきによく似ている

知っている

これは燻り ただの感情の燻りだ

燃え上がることなく 心のなかで死んでいくだけ

なのに 輝きがこれを照らす

まるで 手を差しのべるように

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和音

和音

熱さの無いマグマがやってくる

いつかの飲み込めていない思い出が

「嘘つき」と無言でみつめてくるようで

絵が 忘れられない

置いた感情

傘でしのぐことは出来ないから

今日はもう人形だ

首を吊った 人の形

けち臭い墓場

こんな ブサイクな自由は

寒いだけなのに

知らなかった傷が疼く

澄んだ空気と一緒に

迫ってくる

素知らぬ顔の景色

たんじゅんだ たんじゅんだ って

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消えた筆

消えた筆

置いた筆が転がってゆく

ころころ ころころ

知らぬ間に 泉に落ちて

ぽちゃん

とろうと思った筆はなく

跡をたどれば 水溜まり

ここに落ちたはずなのに

わたしの筆。

白い忘れ物

雪だるまが死ぬのは いつだろう

頭が溶けてしまったときか

降り積もり 埋もれたときか

子供達の置いていった スコップやバケツも

もうすでに 姿を隠しつつある

忘れものは これだけなのか

遠い雲から

白い細胞が降ってきて

雪だるまの息を ゆっくりと奪ってゆく。

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りょーさけさんとの詩交換朗読企画!第2弾です!

りょーさけさんの詩はこちら。

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人形の灰

人形の灰

人形を焼いた灰を

ふりかけに混ぜてしまおう

炊きたてのご飯にかけて 一気にかきこんだら

愛情を思い出せるだろうか

焚き火をじっと見ていると

恐ろしさと 懐かしさとが 浮かんでくる 

全く他人の顔の 母親のような 奇妙が

焚き火の向こうに立っているようだ

自分のなかにある なまの部分を

人形に重ねて 焼いてしまおう 

その灰を ふりかけに混ぜて食べたら

自分が分かるだろうか。

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別れのグラスに何浮かべるだろ

君と僕との最後のグラスに

酒を浮かべて笑みを映して

これでよかったと飲み干すだろか




出会った喜び語るときには

間逆に別れを考えていて

沈思黙考したフリをして

「どうでもよいか」とまた飲む僕さ



顔も知らずに挨拶するとは

ハローたぬきさん どうしたことだろ

こちらは今々雲が晴れゆく

君の空は何色だろうか?



顔も知らずに別れ思うとは

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君と乾杯

君と乾杯

君の好きな酒で乾杯しよう。せっかくだから。

寿司屋じゃちょっと、落ち着かないね。やっぱり居酒屋がいいかな。

魚がおいしいお店、どうかな。焼き鳥なんかもいいかもね。寒いときなら、おでんもあるね。

おいしいものつまみながら、はなしをしよう。

君のカサブタと、僕のカサブタ。見せあったなら、酒もすすむだろ。
そんでベロベロになっても、次の店にいこう。

僕の好きな酒で乾杯しよう。せっかくだから。

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夕焼けのカクテル

夕焼けのカクテル

夕焼けのカクテル 作ってくれよ

俺はそれを飲み干して 空へ溶けるから

夕焼けのカクテル 作ってくれよ

菫の心を彩った 海の向こうの誰かのように

枯れた空気 冷えた耳 心の奥で切れる粘膜

夕焼けのカクテル 作ってくれ

俺は空を飲み干して それに溶けるから。

帰路

帰路

そして踏切が開いた。もはや向こうへ行ってしまった電車を横切るようにして、車はゆっくりと加速していく。
山から流れてくる暗闇。どこか抗うようなヘッドライトと、共に流れていく。
田んぼ。青信号。気持ち。霞。
お墓。赤信号。疲れ。未来。
まだ、終わりかけの1日。