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ぴぴぷる
2021年6月5日 11:13
田んぼに映る空へ 風船がとんでいったあの紐に まだすこし 体温が残っているからすこしだけ わたしもいなくなるアメンボも 蛙も 空を泳いでいるのにそれに気づかないまま冷たい風のなかの 幼い夏だけが雲をおいかけていくさよならと 言わないせいでなにもおわりに なっていないわたしの風船 ずっとむこうへ 消えてった。
2020年6月28日 00:50
紫陽花が濡れている。蒸した森やコンクリ、それらが溶けた空気が佇んでいて、たまにふく風がそれを遠くへ広げていく。・・・梅雨の声が聞こえる。傘にあたる雨音に混じって、離れたり近づいたりしている。けれど、追いかけはしない。熟してきた夜。冷えた湿気が肌に触れ、体温をすこしさらっていく。そしてゆっくりと染み込んでくる、思い出。いま、心は何色だろう。この花は鮮やかに滴って、どこか泣いているようだけ
2020年1月31日 22:07
枯れた花が燃えている死んだ後で こんなに鮮やかな色をはなつのは幸せだろうか照らされた頬が染まっても 中まで暖まるわけじゃない枯れた花が燃えている とっくに消えてもおかしくないのに 火はまだそこにいる 幸せだろうか照らされた瞳が染まっても 中まで輝くわけじゃないこれがほんとの最後なのに
2020年1月3日 00:40
甘い夢の裏側で削られる肌はまだ 若さを保っているしんしんと雪は降り手招きする嘘と 遠ざける本当に温度のないものしか残らない目の中の小鬼がデタラメばかりを叫んでいる「遠く 遠くに 救いがある」頷けるわけもなく、ただ明ける年。
2019年12月2日 01:42
蛾が口のなかにいる頬の内側で ピタリと動かずわたしが悲しんだり 喜んだりした時だけ すこし羽ばたくこの乾いた不気味が 何度でも心を止めて巣から 離してくれない鱗粉が舌におちてくる言いようのない苦味が 唾液と共に溶けて侵食してくるだというのに 蛾を食べられずにいる頬の内側で ピタリと動かずわたしが憎んだり 嫉妬した時でも やはり羽ばたくこの乾いた不気味
2019年8月18日 00:20
まあるい月から 雫が垂れたと思ったら それは涙でいや、それも見間違いで ただ網から油が 炭に落ちただけだった重く蒸発するようなその音は 一瞬のドラムのように静寂の中に響き また、虫の声が広がっていく僕の目の前には 愛しい人が ハンモックで寝ていて いつものように イビキをかいている音楽とも言えない音の重なりが 心に沁みてきて また、僕は酒を呑む幸せは 移ろうものと知りつ
2019年7月16日 22:28
私のなかの とても美しい絵画は現実には ラクガキにしかならない 私のなかの とても美しい映画も 現実には 学芸会のようなものだ感性という麻薬が イタズラに心をみだしてくる あの夕陽も 温もりも 涙も すべてはまぼろしなのに 私はなぜか 駆け出したくなってしまう真っ白のキャンパスにぶつかって トマトのように潰れてしまえば芸術になれるだろうか。
2019年6月22日 17:35
わたしからなにかを 引き算したらのこったこたえは 奇数だろうか白いノートに まるをつけてもあんまりきれいな かたちじゃないやべつのなにかを足したってわたしは浮き足 たったままだれかがまるを くれたってわりきれないと ここを出れない。
2019年3月31日 23:57
安いワインを グラスに注いで喉をならして 汚い幸せを流し込むスカスカの魂から 垂れる涙を知っている者にしか 分からない苦しみがある埃まみれの誇り傷の少ない人生足踏みしすぎて 窪んだ場所から離れられずにいる自分が腐るのを 対岸から眺めてそれをつまみに ビールを流し込むスカスカの魂の 薄い悲鳴を聞いた者にしか 分からない苦しみがある。
2019年3月7日 02:14
遥か彼方から 浮遊するように落ちてきた石が 砕ける瞬間を見た一筋の光に照らされて 細かく 細かく 自分も光であるように 粒子になって 砕けていった粉々になった石 何だったのだろう胸に灯った熱は あの煌めきによく似ている知っているこれは燻り ただの感情の燻りだ燃え上がることなく 心のなかで死んでいくだけなのに 輝きがこれを照らすまるで 手を差しのべるように
2019年1月27日 00:34
熱さの無いマグマがやってくるいつかの飲み込めていない思い出が「嘘つき」と無言でみつめてくるようで絵が 忘れられない置いた感情傘でしのぐことは出来ないから今日はもう人形だ首を吊った 人の形 けち臭い墓場 こんな ブサイクな自由は 寒いだけなのに知らなかった傷が疼く澄んだ空気と一緒に迫ってくる素知らぬ顔の景色たんじゅんだ たんじゅんだ って
2019年1月17日 01:39
置いた筆が転がってゆくころころ ころころ知らぬ間に 泉に落ちてぽちゃんとろうと思った筆はなく跡をたどれば 水溜まりここに落ちたはずなのにわたしの筆。
2018年12月16日 03:23
雪だるまが死ぬのは いつだろう頭が溶けてしまったときか降り積もり 埋もれたときか子供達の置いていった スコップやバケツももうすでに 姿を隠しつつある忘れものは これだけなのか遠い雲から白い細胞が降ってきて雪だるまの息を ゆっくりと奪ってゆく。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーりょーさけさんとの詩交換朗読企画!第2弾です!りょーさけさんの詩はこちら。
2018年12月7日 19:22
人形を焼いた灰をふりかけに混ぜてしまおう炊きたてのご飯にかけて 一気にかきこんだら愛情を思い出せるだろうか焚き火をじっと見ていると恐ろしさと 懐かしさとが 浮かんでくる 全く他人の顔の 母親のような 奇妙が焚き火の向こうに立っているようだ自分のなかにある なまの部分を人形に重ねて 焼いてしまおう その灰を ふりかけに混ぜて食べたら自分が分かるだろうか。