シェア
Pino
2024年1月17日 16:12
年末年始の、ちょっと慌ただしくてふわっとした幸福感が好きだ。毎年、もう12月?もうクリスマス?もう大晦日!!!!!?なんてやってしまう。そして、進まない大掃除と束の間の冬休みがやってくる。年越しそばを食べて、紅白を流し見して、23時30分くらいに外出の準備をする。我が家は徒歩圏内に小さな神社があるので、年明けと共に初詣へ行くのが恒例だ。今年は、いつもよりずいぶん暖かい気候だった。手袋
2020年1月21日 20:34
乗客が自分ひとりきりになったバスが、ちょっと好きだ。どこか知らない場所へ、連れて行ってくれるような気がする。まるで、この世とは違う世界に繋がってしまいそうな怪談みがある。だからつい、わくわくしてしまう。実際は、降りたい停留所手前で「とまります」のボタンを押す。そして荷物を持って、止まるのを待つ。バスは私を異界へは連れていってくれない。ただ、私の家の近くで降ろしてくれる。神
2021年5月19日 16:39
なんとなく、『架空のものにしか興味が無い』という時期がある。本当に美しいものとか本当に素晴らしいものとか、どうしようもなく自分とは正反対に思えて全部が嫌になる。それはたぶん、嫉妬や焦燥で。でも、格好をつけて知らんぷりをしたい。そんな、時期。『架空のもの』は、本当のものよりも少しだけ優しい。架空の唄をうたって架空の声を聞き架空の色を見て架空の映画を作り架空の自分が笑って
2021年5月2日 15:32
愛ってなに?それは『幸せってなに?』という質問と、良く似ている。誰かを愛して、誰かに愛されて。家族をつくり、子孫を残す。ひとりではなくて、誰かのそばにいて。そうやって過ごす。そうじゃないと、幸せじゃないみたいな。世の中のそんな雰囲気が、ただひたすらに苦しい。 溢れる人間の中から、たった1人を選ぶ。そして、特別な愛を交わす。そんな事、別にやりたくない。私はそういう人
2021年4月25日 01:17
季節ごとに違う香りがする、夜の香りが好きだ。春は花たちの。夏は緑たちの。秋は果実たちの。冬は枯れ木たちの。夜は人も草木も、何もかもが眠っていて。季節の香りが、一等強い。私が孤独でも、私が役立たずでも、誰も気にしない、夜。暗闇がぜんぶ包んでくれる。だから、夜は優しい。だから、夜は好きだ。いつか夜の香りを纏ってみたい。私は、夜が香る人でありたい。
2021年5月1日 15:03
本を読み終わる時、寂しくて泣いてしまいそうになる。手の中に、大好きな世界があって。私はその物語を追いかけて駆け回り、思い切り息を吸い込んで、そこに居るから。それが、終わってしまう。ずっとこのままでいたい。そんな風に思う事が、何度もある。恋人との、別れ際のような。テーマパークから、帰る時のような。素晴らしい夢から、醒めてしまうような。その寂しさが、たまらなく嫌いで。その寂
2021年4月16日 16:27
眠れない夜。午前4時過ぎ。窓からうっすらと差し込む朝日。夜が逝ってしまったと気付いて、絶望する。その絶望を知って初めて、夜の優しさを知った。特に、真夏の夜。昼の暑さを和らげて、草木の匂いが強く薫る。早々に輝き出す太陽は、希望のような色で私を照らすから。隠してくれる宵闇が、たまらなく好き。あの明るさに絶望した人間は哀しい優しさを知っていて、朝と夜の隙間に絶望がある事を一生忘れ
2021年4月12日 19:54
私は毎年、桜が散るのを楽しみにしている。いつの間にか、満開の桜よりも散っている姿の桜の方が好きだった。満開の桜は愛らしいが、散ってゆく桜は美しい。満開の桜はそっぽを向いているが、散ってゆく桜はこちらを向いている。桜が綻んだのを見て、すぐにその終わりに期待をしてしまう。あたたかくて沢山の花が咲き、良い香りで溢れる春。春が優しいのは、冬を弔っているからだと思う。花が咲く前に訪れた
2021年4月2日 18:51
地元愛ってやつが、私には無い。私は生まれてからずっと同じ家で過ごしている。生まれ育ったこの町は、凄く田舎でもないし凄く都会でもない。倉庫とコンクリート工場、田んぼに畦道が少し。幾つかの川に囲まれていて、幾つかの鉄塔があって、都会に出るのは簡単な、そんな町。残土を運ぶトラックと並んで砂埃の中を学校へ通い、申し訳程度の植物と狭くも広くもない空を見て育った。友人は居るけれど、ほとんど
2021年3月21日 19:41
『私はその日人生に、椅子を失くした。』(「港市の秋」/中原中也)この詩を初めて読んだ日を、よく覚えている。ああ、私もそうだと思って途方に暮れたから。ここ最近は、いつもそうだ。ここに居たいのか居たくないのか、自分でもよく分からない。家族の輪、友人の輪、社会の輪。どこにも、私が安心して座る椅子が無い。核心ではないけれど、そんな気分だ。どの輪の中も、悪くは無い。だけど、椅子
2021年3月19日 13:04
ものが溢れた部屋は安心する。いや、嘘だ。どこかに、得体の知れないものが紛れているかもしれない。必要なものがどこにあるか分からない。何も、ままならない感じ。そう思うと、途端に不安になる。でも、本当に必要なものって?なに?何よりも必要無いのは、自分自身であるような気がする。誤魔化すように、床に鞄を放り投げた。机の上に、時計や指輪やイヤリングを置く。ハンガーに掛け損ねた
2021年3月17日 12:24
髪を切った日は、生まれ変わったような感じがする。鋏が刻む音や、人が動く音を聞くのが好きだ。ドライヤーの風も、適度なお湯の温度も。美容室の音と空気が、好きだ。真っ黒で量が多くて少し癖のある生え方をしている、私の髪。美容室では、その話題でよく美容師さんと盛り上がる。床に散らばる切り離された髪の毛は、ショートカットからショートカットへ切ったのにロング並みの量。絶対ひとり分の量じゃ
2021年3月15日 13:12
形に残るものが好きだ。贈り物の、形に残る部分が好き。食べたり使ったりして無くなってしまうものは、少しだけ寂しい。だからつい、残してしまう。綺麗な包装紙やシール、クッキーの空き缶、花を束ねていたリボン。たぶん、目に見えると安心するから。誰かと繋がるという事は、信じることに似ている。愛するという事も、そうではないだろうか。私は、形に無いものを信じる気があまり無い。だから、目