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架空のもの

なんとなく、『架空のものにしか興味が無い』という時期がある。

本当に美しいものとか本当に素晴らしいものとか、どうしようもなく自分とは正反対に思えて全部が嫌になる。

それはたぶん、嫉妬や焦燥で。
でも、格好をつけて知らんぷりをしたい。

そんな、時期。

『架空のもの』は、本当のものよりも少しだけ優しい。

架空の唄をうたって
架空の声を聞き
架空の色を見て
架空の映画を作り
架空の自分が笑っている

間違っていても美しくなくても面白くなくても、何もかもが許される。

これがもし現実だとしたら、そんなものは詰まらない。
本当に成った瞬間、それは魅力を失うから。

それが「架空」の素敵なところ。

どんなに良い出来でも、本当にはいらない。

架空でいい。
架空がいい。
本当なんて、いらない。

そうやって不毛な夜を明かし、朝を吸い込み、昼をどうにか生きている。

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