こざくら

特許翻訳メインの英日翻訳者です。読書好き、映画好き。

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  • ~カセットボーイを聴きながら~ 昭和の大学生の日記

    大学時代の日記を読み返していたら、ネットもスマホもなかった頃がなんだか懐かしくて、一部noteに掲載してみることにしました。約40年前にタイムスリップ。

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固定された記事

―カセットボーイを聴きながら―昭和の大学生の日記 1983年4月

大学時代の日記を読み返してみたら、スマホもネットもなかった時代がなんだかとても懐かしくて、一部抜粋してみました。突然ですがよろしく。 ・FM大阪に燃えた――当時は…

こざくら
1年前
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【映画エッセイ小説】~夢のミニシアターへようこそ~ 第2話 旅する女

「ええと、悩みを相談できる映画館はこちらですか?」 平日の夜。チケット売り場に立っていると、40歳過ぎくらいの女性からいきなりそう尋ねられた。あれれ、いつからそん…

こざくら
18時間前
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【映画エッセイ小説】心に寄りそう映画館 ~夢のミニシアターへようこそ~

――小さな映画館、「アルケミイ・シネマ」へようこそ。ここはその名のとおり、都会の中の小さなオアシス。映画マニアの私こと光田影一郎(こうだえいいちろう)が、ひとり…

こざくら
2日前
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ラジオでエッセイが読まれました。

J-WAVE他で週末に放送されている「ライフタイムブルース」。リスナーが投稿した「真実の物語」を俳優のオダギリジョーさんが朗読するラジオ番組です。お気に入りの番組で、…

こざくら
1か月前
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翻訳者が観てよかったと思った映画

私は特許翻訳などの産業翻訳をなりわいとしながら、出版翻訳や映像翻訳の勉強をしています。翻訳の仕事には、国際情勢や欧米の文化に関する背景知識も欠かせません。なので…

こざくら
1か月前
3

気がつけばデジタルネイティブ

会社員でよかったことといえば、パソコンスキルをがっつり身につけられたことだろうか。 私がパソコンと初めて出会ったのは新卒で入った会社で、電話回線を使って得意先か…

こざくら
4か月前
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朝のお茶

コーヒーも好きだけれど、朝はやっぱり紅茶がいい。特に、鮮烈な味わいのダージリンが好きだ。 奮発してお茶の専門店で買ってきた茶葉の重さを、キッチンスケールで丁寧に…

こざくら
8か月前
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海が見える喫茶店

大学時代、サークルの仲間たちと海へ遊びに行った。 初めて訪れる日本海側の海はお盆を過ぎるとすでに波が高くて、どこか人を寄せ付けない厳しさを感じさせるようだった。 …

こざくら
1年前
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おじいさん、ありがとう。

土曜日のお昼前、在宅仕事の息抜きに、ふらりと散歩に出かけときのこと。自宅近くで、携帯電話を手にしたおじいさんから突然声をかけられた。 「代わりに電話に出てもらえ…

こざくら
1年前
3

古い映画に魅せられて

「『旅情』っていう映画知ってる? あの映画を観てからずっと、いつかヴェネチアに行ってみたいと思ってた」 「知ってるよ」。母に向かって私は答えた。キャサリン・ヘプ…

こざくら
1年前
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サンドイッチのお弁当

中高年なんて言われる年になると若さが恋しくなることもあるけれど、多くの人にとって、思春期は長く暗いトンネルだったのではないだろうか。 思春期の私は、数年に一度は…

こざくら
1年前
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1983年12月24日 ~ホワイトクリスマス~

1983年12月24日(土)晴のち雪 今日は夕方6時から、サークルの部室でクリスマスパーティ。私は家でおにぎりを作って持って行き、会場に向かう途中、友だちと一緒にスーパ…

こざくら
1年前

1983年12月21日 ~クリスマスプレゼント探しと物騒な年末~

1983年12月21日(水)晴  朝9時半ごろ起きる。午前中は朝ごはんの片付けとビデオ鑑賞。12時から『笑っていいとも!』を見る。これがいつものパターン。  午後1時過ぎ…

こざくら
1年前
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1983年12月12日 -のろけ話と田中角栄-

1983年12月12日(月)晴  3限と4限の授業が両方とも休講になった。友だちと3人で学食で昼食をとったあと、「これからどーしよー」という話になったが、とりあえず3人…

こざくら
1年前
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1983年12月9日 -非リア充はつらいよ-

1983年12月9日(金)晴  昨日のコンパの狂喜乱舞のわりにはみんな元気。つぶれてぶっ倒れていた子もケロッとして1限から来ていた。他のみんなもほとんどそう。強いなあ…

こざくら
1年前

1983年12月8日 -幹部交代コンパ-

1983年12月8日(木)雨のち晴  今日は、学科の幹部交代コンパがあった。私は注ぎに回ったりするのが苦手なため安住の地が得られず、ひたすらウロウロしていた。ほかの友だ…

こざくら
1年前
―カセットボーイを聴きながら―昭和の大学生の日記 1983年4月

―カセットボーイを聴きながら―昭和の大学生の日記 1983年4月

大学時代の日記を読み返してみたら、スマホもネットもなかった時代がなんだかとても懐かしくて、一部抜粋してみました。突然ですがよろしく。

・FM大阪に燃えた――当時は「萌え」という言葉はまだなかった。
・カセットボーイ――AIWA製。ウォークマンのようなもの。たしかウォークマンより安かった。再生のみのものが一般的だが、私はラジオと録音機能がついているものをお年玉で買って持っていた。

・マンガの蔵書

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【映画エッセイ小説】~夢のミニシアターへようこそ~ 第2話 旅する女

【映画エッセイ小説】~夢のミニシアターへようこそ~ 第2話 旅する女

「ええと、悩みを相談できる映画館はこちらですか?」

平日の夜。チケット売り場に立っていると、40歳過ぎくらいの女性からいきなりそう尋ねられた。あれれ、いつからそんな話になったのだろう。でも、わがミニシアター「アルケミイ・シネマ」が評判になるのは喜ばしいことだ、と思い直して、光田影一郎(こうだ・えいいちろう)はこう答えた。

「相談というか、映画が終わった後にお客様と語り合う時間を設けておりますの

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【映画エッセイ小説】心に寄りそう映画館 ~夢のミニシアターへようこそ~

【映画エッセイ小説】心に寄りそう映画館 ~夢のミニシアターへようこそ~

――小さな映画館、「アルケミイ・シネマ」へようこそ。ここはその名のとおり、都会の中の小さなオアシス。映画マニアの私こと光田影一郎(こうだえいいちろう)が、ひとりで経営しているマイクロミニシアターです。

今はデジタル化のおかげで、スクリーンと、プロジェクターと、スピーカーがあれば、まるでカフェを開業するように映画館を開業できる時代になりました。

映画館で『ジョーズ』や『スターウォーズ』を観て、す

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ラジオでエッセイが読まれました。

ラジオでエッセイが読まれました。

J-WAVE他で週末に放送されている「ライフタイムブルース」。リスナーが投稿した「真実の物語」を俳優のオダギリジョーさんが朗読するラジオ番組です。お気に入りの番組で、毎週楽しみに聴いています。

投稿してから約2カ月、てっきりボツになったものと思っていましたが、自分が書いた文章をプロの俳優さんが朗読してくれるなんて、すごく特別な気分になれてとてもうれしかったです。

4つめの話です💛

タイトル

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翻訳者が観てよかったと思った映画

翻訳者が観てよかったと思った映画

私は特許翻訳などの産業翻訳をなりわいとしながら、出版翻訳や映像翻訳の勉強をしています。翻訳の仕事には、国際情勢や欧米の文化に関する背景知識も欠かせません。なので、趣味の洋画鑑賞は楽しいだけでなく、とても勉強にもなっています。

さて先日も、これは観ておいてよかった! と思った映画(というかドキュメンタリードラマ)があったので紹介します。それは、『ザ・フード 巨大アメリカ食品企業』という作品です。

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気がつけばデジタルネイティブ

気がつけばデジタルネイティブ

会社員でよかったことといえば、パソコンスキルをがっつり身につけられたことだろうか。

私がパソコンと初めて出会ったのは新卒で入った会社で、電話回線を使って得意先から伝票が送られてきたときだ。システム室のプリンターから伝票が次々とプリントアウトされるのを不思議な目で見ていた。そのプリンターにつながっているパソコンの画面は黒かった。DOS画面というやつか。そして、モデムという言葉を初めて知った。

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朝のお茶

コーヒーも好きだけれど、朝はやっぱり紅茶がいい。特に、鮮烈な味わいのダージリンが好きだ。

奮発してお茶の専門店で買ってきた茶葉の重さを、キッチンスケールで丁寧に計る。袋に書いてある説明によると、茶葉の滲出時間は3分。これも砂時計をひっくり返してきっちり計る。

丁寧に入れたお茶を透明なティーカップに注ぐと、お茶の良い香りで、寝ぼけた頭もすっきり醒めてくる。

朝からゆっくり紅茶を入れる余裕ができ

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海が見える喫茶店

海が見える喫茶店

大学時代、サークルの仲間たちと海へ遊びに行った。
初めて訪れる日本海側の海はお盆を過ぎるとすでに波が高くて、どこか人を寄せ付けない厳しさを感じさせるようだった。

思った通り、波の高い少し灰色がかった海で遊泳するのは無理だった。それでも若い私たちは、せっかくだからと水着に着替えて、ときおり波しぶきがくだける岩場で一日じゅう遊び回った。

岩場の小高くなっているところに、一軒の店があるのを私たちは見

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おじいさん、ありがとう。

土曜日のお昼前、在宅仕事の息抜きに、ふらりと散歩に出かけときのこと。自宅近くで、携帯電話を手にしたおじいさんから突然声をかけられた。

「代わりに電話に出てもらえませんか?」

えっ、どういうこと!? 突然のことで事情がのみ込めなかったが、切羽詰まったおじいさんの様子を見て、私は思わず電話を手に取った。

「もしもし、お電話代わりました。通りすがりの者ですが――」
電話のむこうの相手は一瞬びっくり

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古い映画に魅せられて

古い映画に魅せられて

「『旅情』っていう映画知ってる? あの映画を観てからずっと、いつかヴェネチアに行ってみたいと思ってた」

「知ってるよ」。母に向かって私は答えた。キャサリン・ヘプバーン主演のロマンス映画の名作。ヴェネチアの運河に落っこちたりするキャサリンのコミカルな演技が楽しくて、恋愛映画はあまり見ない私も、この映画はお気に入りだ。

しかし母は娘の返答なんてもうそっちのけだ。映画で見た水の都が、いま現実の風景と

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サンドイッチのお弁当

サンドイッチのお弁当

中高年なんて言われる年になると若さが恋しくなることもあるけれど、多くの人にとって、思春期は長く暗いトンネルだったのではないだろうか。

思春期の私は、数年に一度は激しい体調不良に襲われ、ぶっ倒れて家族を心配させた。体に力が入らなくなりゲーゲー吐いて、病院に向かうタクシーの中でも吐き気が止まらなくて運転手さんに嫌な顔をされ、病院の待合室でも座っていることができなくて、ベンチにぐったり横たわっていた。

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1983年12月24日 ~ホワイトクリスマス~

1983年12月24日 ~ホワイトクリスマス~

1983年12月24日(土)晴のち雪
今日は夕方6時から、サークルの部室でクリスマスパーティ。私は家でおにぎりを作って持って行き、会場に向かう途中、友だちと一緒にスーパーでお菓子などの買い物もした。

会場に行ってみると、机を寄せ集めて作った大テーブルの真ん中には、ケンタッキーフライドチキンのツリー付きバケツが置いてあった。これを買うために先輩が2時間も並んでくれたらしい。OBの人たちが差し入れて

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1983年12月21日 ~クリスマスプレゼント探しと物騒な年末~

1983年12月21日 ~クリスマスプレゼント探しと物騒な年末~

1983年12月21日(水)晴
 朝9時半ごろ起きる。午前中は朝ごはんの片付けとビデオ鑑賞。12時から『笑っていいとも!』を見る。これがいつものパターン。

 午後1時過ぎから図書館へ行って、レポートを書くのに必要な本を借りた。帰りにジャスコに寄って、クリスマスパーティで交換するプレゼントを探した。さんざ悩んだあげく、おもちゃ屋さんでチョロQ2台を買う。700円。

 家に帰ると郵便受けに私宛の手

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1983年12月12日 -のろけ話と田中角栄-

1983年12月12日 -のろけ話と田中角栄-

1983年12月12日(月)晴
 3限と4限の授業が両方とも休講になった。友だちと3人で学食で昼食をとったあと、「これからどーしよー」という話になったが、とりあえず3人で喫茶店へ。サ店では、彼氏がいる2人ののろけ話ばかり聞かされてしまった。今日のは特に内容が過激で、ついていけなかった。

1983年12月18日(日)晴
 朝、うっすらと雪が積もっていた。
 今日は衆議院議員総選挙の日。私はまだ有権

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1983年12月9日 -非リア充はつらいよ-

1983年12月9日 -非リア充はつらいよ-

1983年12月9日(金)晴
 昨日のコンパの狂喜乱舞のわりにはみんな元気。つぶれてぶっ倒れていた子もケロッとして1限から来ていた。他のみんなもほとんどそう。強いなあ。
 3限が終わってキャンパスで友だちとたたずんでいたら、先輩が通った。さっきパチンコ行ってボロ負けとか。
 なかよしの友だち2人は、これからデートらしい。ほんまにもー。ひとりさびしく歩いていると、ちょっと憧れてる同じ学科の3回生の先

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1983年12月8日 -幹部交代コンパ-

1983年12月8日 -幹部交代コンパ-

1983年12月8日(木)雨のち晴
 今日は、学科の幹部交代コンパがあった。私は注ぎに回ったりするのが苦手なため安住の地が得られず、ひたすらウロウロしていた。ほかの友だちは楽しそうに先生や先輩たちとしゃべっている。
 横目で見ていると、新役員になった人たちはだいぶ飲まされている様子だった。新副会長はぶっ倒れ、新会長はいっぺんつぶれて立ち直り、異様なまでに盛り上がっている先輩がいるかと思えば、泣き上

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