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東京装甲少女 EPISODE0 第20話      【 紅蓮眼 】



秋水は、救聖軍の炊き出しの中に知人が居たので、



当面の間、カミーユとシェイルを北の丸公園公務員宿舎にて

身を寄せさせてくれると言っていたので



2人を残して神田へと戻って来ていた。




空襲に怯え、家族で着の身着のまま、逃げるようにしてその場を
後にした状態だったので、まずは、皆の思い出の残る、


自宅を訪れた。



自宅は、ほぼ外観だけ見ると無傷の状態ではあったのだが、

近くの知り合いの家は跡形もなく吹き飛んでいたので、

いつまた爆撃されるか解らない状況で、


この神田の自宅に家族を連れて戻ることは

もう、出来ないなとは思った。





どちらにしても、一応家は、無事そうなので、忘れ物があれば
2人に持って行ってやろうとい思い玄関を開けると



愕然とした、、、、、、、、、。




明らかに、家の中が物取りに荒らされ、とんでもない状態に

なっていたからだ、、、、、、。




タンスの中や、引き出しの中の物は、無残に放り出され、

父や母の仏壇などもひっくり返されていた、、、、。



そして、仏壇に飾ってあった、2人の遺影が床に転がり、

靴で踏みつけられ割れて汚れたガラスの先でも



写真の2人は笑っていた、、、。



家の中はどこもかしこもそんな状態であった、、、。






義理人情の町で、鍵も掛けない、それが当たり前で、

家族同然のような付き合いをしていたこの町が、

いつのまにか、有事に乗じて自分たちの事しか考えない


賊が跋扈し治安は明らかに悪化していた。




警察では、犯罪があまりにも多くて対応できないというのもあるが、

内部では犯罪者と組んで一儲けしようという

警官が横行し賄賂や犯罪に加担し

組織に収集不可能に近い統治能力の腐敗が起きているという。




また、救聖軍で話した知人によれば、


政治家や国のTOPにいる人物たちも、御身大事と言わんばかりに、

国民よりも我先に海外へと逃亡を図ったり、

極秘裏に作られていた地下の大規模なシェルターへと

誰よりも早く移ったらしいと言っていた、、、、、。





正義とは?国とは?正しさとは?

強さとはなんだ?

あれほどTVを通して散々聞かされていた
国民の為などという



耳心地の良い言葉は、この戦時下に置いて  何処からも聞こえなくなっていた。




そういえば、ずっと長く続いた与党政党が、

不祥事などにより野党にひっくり返され、

元の鞘に同じ政党が戻り、憲法改正が行われた辺りから、

この世界情勢の中、国民は相変わらず無関心で
おかしな方向に向かっているなと言う風潮はあった。




いつしか自衛隊が、紛争や戦闘地域に派遣されるようになると、
流石に初めは反対運動などが起こっていたが、

芸能界のスキャンダルやその他の事件や、事故ばかりが


大きくマスコミやTVで報道され影を潜めた。



昨今も、日本での徴兵を政府が検討という話題が

巷で取り立たされ、時を同じくして、


大物芸能人のスキャンダルというニュースが大きく報道され

世間を騒がせていた矢先にこのような事態が訪れていた。



あの時から軍靴の足音がカツカツと聞こえていたのかもしれない、、、、、。



秋水は自宅の中でそんな、どうしようもない現状とやり場のない怒りの自問自答を繰り返しながら廊下を歩き



自室へと足を踏み入れた




慌てて出て行った自分の部屋の状況はというと、
さして取られる物も無いと判断されたのか出て行った時と、
ほぼ変わらない状況だった。



秋水の部屋の中央には

衣紋掛けには、演武の際や特別な日に着用してきた



九曜紋の法被が飾られていた。



父と初めて共演した際、そして父が亡くなってからも
自分一人で行ってきた演武などに使用した


この法被は演武を行う者だけではなく、

【 錬命新當流 】の門弟すべてのものに与えられていた。





【 錬命新當流 】の源流は


茨城の坂東市となっていた。




平将門生誕の地とされる坂東市では、



新皇として当時君臨した武士の開祖と言われる
平将門公の武芸こそが最強である。

と、将門公の死後、全国に広がり、


沢山の武芸に秀でた者が、昔、坂東の地を訪れていたという。



坂東では、次第に将門公と共に武芸に励んだという人達なども
現れ、将門公の武芸のスタイルを基にした

【 錬命新當流 】が誕生した。




当主を務める者は将門公の強さも継承しなければならないという事で、


代々の当主は、この中で最強の武芸者が継承していくという形で、
真剣を使ったりなどの実践試合の形式で最強を決めていたのだが、


あまりにも、有望な武芸者が命を落としてしまう事が多かった為、
廃止となった。



その後も試行錯誤しながら投票制や指名制等、様々な試みが行われたが、


坂東市という小さな町だけでは、多くの門弟を獲得できないという事で、


縮小の一途を辿っていた錬命新當流は

一念発起し、


江戸初期に武名を上げる為、江戸の神田に拠点を移すと言う、一大プロジェクトが

その時、最強であった塩沢家主導にて
行われた。



一門からは、多く反発もあったが、若い門弟もなく、
高齢化し、人数も増えないのでは、道場主は食い扶持も
ままならず、流派存続も危ぶまれるという事で、

渋々、一門に金子を拝借しながら江戸の神田へと渡った。


また、特に若き門弟もいない為、存続する為には、
自分には幼子が居るので、今後は、塩沢家にて
錬命新當流を末代まで継承していくという世襲制の契りも
交わし旅立ったのであった。 






江戸は華やかで人も多かった。



徳川幕府による天下太平の世が訪れていたこともあり


野蛮で実践的な流派は減っていく中、


武士の間では御前試合などで見栄えのする武芸が非常に

人気を博していた。





【 錬命新當流 】も、


なけなしのかき集めた金で道場を開いたが



人の多い江戸に来たというのに



実戦的かつ、
見栄えも、名前も知られていない、この田舎流派の当主は
門弟を獲得するのにとても苦労していた。




だが、そんな閑古鳥の鳴く道場に

ある日 


神田明神の神主が訪れてきたのである。




神主の話では




徳川幕府が建立した神田明神にて、今度、平将門公の塚が立てられお祀りするとのことで、ゆかりの深い、こちらの流派に、

地鎮も兼ね、年に1度開催される祭りでの

演武をお願いしたいという、願い出があった。





当主は、この人気の無い流派の状況を打破するため、



是非という形で二つ返事で引き受けた
のだが、、、、、。




演武に出し人々の賞賛を受ける為にはやはり何か見栄えのある事をしなければならないと思ったが、中々浮かばなかった。


ところが、塩沢家には代々受け継がれる




不思議な話と能力があることを思い出した。





昔の話だが、かなり前の先代で


弥六という者が居て、


弥六は、腕っぷしが強く、その村1番の槍使いだったという、


ある時、村の近くの山で、燃えるような赤い目をした妖怪が出没して


怖くて山に行けないというので退治して欲しいという事で村の人たちに言われ

向かったという。



弥六は山の辺りを探索したが、妖怪は見つからなかった、


だが、山の中腹辺りで、突然の豪雨に見舞われたので


近くにあったお堂の中に雨宿りの為に扉を開け入ったという。



中は暗がりだったが、雨が止むまでここに留まろうと思い


腰を下ろしたときに、奥の暗がりから、

ガサゴソ




と物音がしたので、何事だと思い振り返ると、暗がりの中、

まるで2つに小さく燃えるギラギラとした

赤い瞳の様な物が

こちらを見つめているのに気づいたという。


初めは猛獣のような生き物が、暗がりから、


こちらを見つめ襲ってくるのではと思い、


槍を持ち身構えたが、その赤いギラギラとした
瞳は只ただ、ずっと動かずに、


こちらを見つめたままだったという。



弥六は暗がりの中、歩を進め生き物を捕まえてやろうと進んだ。


奥に進み、その生き物の近くに行くと、生き物は今度は、

扉の付近に逃げるように移動したので、慌てて、


槍を突き立て追いかけると、扉の前で止まったという。



外から差し込む光で全体が見えると、それは
人間の女性だったという。



人間と言っても、弥六達の村では見たことのない風貌をしていたという。




見慣れない衣服、目の形は、鼻は高く、肌は白く、髪は自分たちとは違う色をしていたという、そして何よりも瞳は真っ赤に燃えるような赤い眼をしていた。


弥六は、なんだおめー?

と言って 槍を向け話かけても、


言葉が通じないのか、話せないのか、

赤い眼で見つめ返すだけで特に襲ってくる様子もないので

いつしか槍を下ろし話掛けたという。




多分こいつが、村のやつらが言っていた
妖怪だろうなとは思ったが、


見た目が違うだけで、危険そうでもないので、



馬鹿らしいなと思い、


ちょうど、腹が減ってきたので腰を下ろし

母が、作ってくれた握り飯を食べたという。


弥六が、ガツガツ!!と握り飯を頬張っていると、


赤眼は物欲しそうにこちらを見ていたので、


食うか?という素振りで前へ突き出すと、




握り飯を奪い取りムシャムシャと食べたので、

弥六はそんなに腹が減ってたかと大笑いした。




赤眼も腹の減りが収まり一気に平らげると、



何も言わず弥六の方を向き、

屈託のない笑顔を見せたという。



弥六はその後も、心配して握り飯を持って、頻繁にお堂を
訪れるようになった。




いつしか、彼女の名前は

【 セイエイ 】

 という事だけはわかったらしいのだが



それ以外は、訳の分からない言葉を喋っていたので理解できなかったらしい。



彼女もいつしか、弥六の言葉を少しづつ理解し覚えていたので2人の
距離は近づいた。


弥六とセイエイは友人のような間柄になり、

その中で彼女には、


自分は遠い国から来て、不思議な力があり、
彼女が槍の達人だという事を
明かされたという。


またこの不思議な力のせいで自分の国から追われている身だというのも


拙い言葉で聞かされたという。


弥六は、友人のセイエイを守る為にと

2人一緒に槍の武芸に励むというその彼の甲斐甲斐しい姿を
見て、彼女も弥六も自分の気持ちに気づき、


2人は時を重ね祝言を上げる関係となった。




村では鬼が来た!!鬼が来た!!と村人には初め揶揄されたが、
いつしか、受け入れられ


2人の間には赤い眼の子が出来たという。




聖嬰は何者かもわからない自分を受け入れてくれたこの村に
常々、感謝をしていたと言う。



そして、村での生計を立てる為、2人は道場を開き槍術を教えた。


平穏な日々は続き何年かしたある日、



近隣の村に、見たこともない国の兵隊が訪れて

荒らし回っているという




そして、その兵隊は、赤い眼の女を探しているという。




弥六と聖嬰は村に迷惑を掛けられないと思い、2人で兵隊を
おびき寄せ戦う決意をするが、



聖嬰は弥六が出かけた隙に作戦を無視して1人で出かけてしまったという。



弥六は必死に彼女に追いつこうとしたが、兵隊が彼女の捕縛の為に立てた、囲いの先には行けず、



彼女は孤軍奮闘、数百人を相手取り一人で
戦っていたという。



彼女が、以前道場で見せてくれたとてつもない威力の
【 火炎槍 】という槍に炎を宿す斬撃を繰り出しながら。



どうして、そんな技が出来るのかと聞くと、




祖父が若い頃、山で雷に打たれた事があったが、
生き永らえた、その時から祖父の目は赤くなり
火を宿す力を扱えるようになったという。

私には火の神がっている。

この赤い眼は神様からの贈り物なのだと言っていたという。




聖嬰は、その槍で沢山の兵隊をなぎ倒したが、
あと少しで大将首という所で弓矢に射られ亡くなった。


そして、兵隊は彼女の亡骸を連れ、村を去っていったという。


弥六は泣きながら兵隊を追いかけ戦おうとも思ったが、


聖嬰にもし自分に万が一があれば、村と子供の事をお願いね!


と言われていたので、村に戻り、遠く離れた坂東の地で
子を連れ静かに暮らしたという。



故に、塩沢家の子らは、


聖嬰の血を継ぎ、全員赤い眼をしているの
だという。



そして、その赤眼をした塩沢家には代々受け継がれる火を宿す力があるという事を江戸に出てきた当主は思い出していた。


演武は真剣を想定しているが、ただ刀を振り回すだけでは、

観衆は興味も引かず他流派と遜色はなく同じだ。



【 錬命新當流 】の技術と、自分の一族が引き継いだ力を
加える事で、演武として刀剣に炎を宿す演武を完成出来れば、
多くの観客を魅了し門弟を増やせるのでは確信していた。



だが、弥六は以降、子が危険にさらされない為にも、道場は開く事はなく

塩沢家には代々受け継がれる火を宿す力というのは、

子々孫々に継承されていなかった。


厳密にいえば皆やり方を知らなかったという
事だ。



火を宿す方法を習得するには聖嬰と道場を行っていた時に
彼女から火を槍に宿す力方法と2人が残した流派の型を研究しなければならなかった。

それは、弥六が残したとされる書き物を、

後の代がある程度まとめた物が頼りだった。



あくまでも、前の代の人間がある程度、興味が沸いたので残そうという程度だったので


2人の槍術の型や、火を宿す方法は書かれていたが、

細かいデティールなどは省かれ大まかな記載であった為、

ほぼ再現するには、

1から手探りの状態であった。




幸い演武は2年後からという事らしく、時間はあったが

【 錬命新當流 】の基本は刀術であった為、試行錯誤の末、

刀術の型にも流用して再構築も行わなければならなかった。


当主は1年以上の歳月を掛け、火を宿す方法を日々の修練の中に見つけその後、刀術の型を構築し、2年の間に演武にまで
昇華させるのには、並々ならぬ努力と鍛錬が必要だった事だろう。



そんな、初演武当日に将門公の家紋と言われる

九曜紋の法被と共に行われた演武は、賞賛を浴び

代々、秋水の代まで引き継がれ

細々とだが門徒を広げ今に至っていた。





秋水は、そんな歴史のある法被を羽織り、必要な物を持ち

何とも言えない表情で自宅を後にした。




そして、その足で



焼け焦げた神田明神に来ていた。



あたり一面は火の海だったのだろうか?

歩くたびに炭となった境内の欠片がジャリジャリという

音を立てた。


荘厳な雰囲気の境内は焼け焦げ辺り一面は黒焦げだった。




結局、また、この町に戻って来たところで、


あの時と同じ誰も何も守れない無力さを味わわなければ、
ならないのだなと、将門公の塚の近くに向かおうとした際に




秋水を呼び止める大きな声が聞こえた、、、、、、。




【 秋水!!! 】





秋水が振り返るとそこには男がたっていた、、、、、、、。









東京装甲少女 EPISODE0  第21話へ続く、、、、、




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現在こちらの物語の初めのストーリーから現在のストーリーまで
【無料公開】中ですので、是非初めからお読み頂ければ幸いです。
今後は有料化を予定しておりますのでよろしくお願いいたします。



ここから、初めのストーリーを読む




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現在こちらで小説を展開している東京装甲少女という作品ですが、
こちらにはお話の基になるデジタルアートNFT作品があります。

そしてその作品が2024年4月にNYCで大規模開催される
https://www.nft.nyc/という展覧会で選出されました🎊

つきましては併せて現在、東京装甲少女デザインのチケットがこちらの展覧会のチケットデザインに選出される投票を下記より行っております
お手数ではございますが、メールアドレスの実の入力で簡単に出来ますので是非、ご投票よろしくお願いいたします🙇

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