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[短編小説]満月鉄道
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「ねぇ、あの噂知ってる?」
「あー、あれな! あれ絶対嘘だろ」
「え、何? 噂って?」
「もしかして知らないの? ネット発の噂だけど、今巷で話題だよ」
「胡散臭くて、信憑性ないけどな」
「もったいぶらずに早く教えてよぉ」
「満月の夜、空を見上げて夢を描きながら眠るとね、夢が叶うんだって」
「ん、どういうこと?」
「なんかその想いに導かれた鉄道がやって来るらしんだけど、その鉄道に乗れば夢
[短編小説]手紙の行方
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「なに、これ」
届くはずのない手紙が、私がいる家に届いた。宛先も差出人も不明で、この手紙に関する情報は一切分からなかった。
「おばさんさん宛、なのかな……」
小さな田舎町の外れにあるこの家は、元々おばさんのものだ。だから、順当に考えればおばさん宛の手紙だろう。
しかし、おばさんが最後にここを利用していたのは、半年ほど前。病気を発症してしまったため、都内の病院に入
[短編小説]変わるためのミッション
〈挨拶! ことよろです!〉
あけましておめでとうございます!
新年が始まりましたね! 本当は元旦と同時に投稿したかったのですが、まぁまだ三が日の内なのでセーフということで笑
さて、今年はどんな年になるか、すごいワクワクです!
去年は今まで出来なかったことを、たくさんやることが出来ました。
勉強もたくさんして、色んなところに旅行に出掛けたり、たくさん本も読んだし、友達ともめっちゃ美味
[短編小説]Leave the Truth
A案
――虎の子も、また虎だ。
彼以上にこの言葉が相応しい人を、知らない。
誰もが知るような有名企業を最前線で率いていた社長が、ある日辞任した。その後を引き継いだのは、彼の息子だった。
初めての経験というものは、誰だって四苦八苦するものだ。特に大企業の社長という立場になって、多くの従業員の人生を背負うことを考えれば、常人であれば気が触れてもおかしくはない。しかし、彼はまるで日常の
[短編小説]encore -アンコール-
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劇団セカイズは、今最も勢いのある劇団だった。
セカイズが設立されたのは、今から八年ほど前。設立当初は知る人ぞ知る劇団だったのが、今では多くの人が知る劇団と化していた。
人々の琴線に触れるような脚本、生き写しのように鬼気迫る演技を見せる役者、演劇の世界に引き込むような演出、まるで座った瞬間に吸い込まれるようなふかふかとした座席。セカイズのステージは、全て舞台を盛り上げるためにあっ
[短編小説]ベルの訪れ、宴は遠く
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夜の繁華街に、目を閉じてしまいたいくらい眩いイルミネーションが輝いている。その光に吸い寄せられるように集った人々によって、繁華街の音が形作られていく。
そんな町中を、国木田成実先輩と一緒に歩く。
多くの人が酔って千鳥足で歩いているというのに、歩く先輩の後ろ姿はモデルさながらに整っていた。パンプスのヒールがアスファルトにぶつかってカッカッと鳴り響く音が、やけに鮮明に耳に届く。喧騒