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短編小説 『ティーンエイジャーの憂鬱』(完)
※前回七 遠い。
朝になっても、夜になっても、変わることない白い天井はどこにも続いていない潔白さだけを私に示した。
"ココがお前の終着点だ"と。
――ピッ。ピッ。
規則正しい無機質な機械音だけがこの部屋を病室たらしめた。この病室には他に何もない。あんなに甲斐甲斐しく世話を焼いてきた看護婦もだんだんと気持ちの悪い笑顔を作るようになり、自分の最後の時が近いことを知った。
いつまでなのだろうか。
短編小説 『ティーンエイジャーの憂鬱』(六)
※前回六 横殴りの雨は容赦なくブラウスにボディ・ブローを浴びせた。エクリュカラーの生地にグレイ色の染みをつける。水も滴るイイ女という格言も残ってはいるがデートには相応しい恰好とは言いづらい。少しでもダメージを減らすために傘 の角度を常々調整しながら歩き出した。
デート。
先ほど頭に浮かんだ言葉が棘のように心をチクッと刺した。自らの罪を自覚させるには十分な痛みだ。棘は仮にこれから行われるだろう
短編小説 『ティーンエイジャーの憂鬱』(五)
※前回五 「若いねえ」
大人になっても絶対に言いたくないと思っていた言葉が当たり前に出るようになったのはいつからだろう。
少なくとも雲行きが怪しくなったからといって喫茶店で時間を潰して外の天気を窺うなんて守りの姿勢ではなかったとは思う。
店に入って三十分程経った頃か。背後の席で何やら騒動が起こっているらしかった。沸々とこみ上がる"おばちゃん魂"はやはり私が年相応に老けたという事なのかもしれな
短編小説 『ティーンエイジャーの憂鬱』(四)
※前回四 「少し歩いたほうがいいかもしれませんね」
男が追ってくる気配はない。ようやく少し気分が落ち着いた。いまさらになって心臓の音が早まっているのを自覚する。ああ、少しは"らしいこと"ができたのかもしれないとよくわからない充足感が全身を巡った。
横目で彼女を見るとコクコクと頷いた。彼女の緊張もまだ解けていないらしい。
駅が近づくにつれ、歩くスピードもゆっくりになってきた。私がそうしている
短編小説 『ティーンエイジャーの憂鬱』(三)
※前回三 鬱陶しい。
目の前のイチャイチャしている学生を見て思った。
ベンチに体を全部預けるくらいには疲労が溜まっている。学生らのやり取りはギリギリのストレス値をまだいけるまだいけるといった具合に押し上げてくる不快さがあった。これは彼ら彼女らの青春を羨ましがっているわけでは決してない。そう思いたい。
やけにイライラするのは何も今日に始まったことではなかった。
社会人になってからずっとそうだ
短編小説 『ティーンエイジャーの憂鬱』(二)
※前回二 「進路希望の紙、出した?」
クラス委員の女子からそう言われたのは帰りのホームルームが終わってからだ。
提出期限までにクラス全員に出すよう知らせて回るのがクラス委員の仕事なのだと云う。うちのクラスは優秀で未提出者は片手で数えられるくらいしかいないらしい。
ああ、と返事にとれるか怪しい反応しかできなかったが彼女はそれで納得してくれたみたいだった。
自分とは正反対のにこやかな笑顔で「第