マガジンのカバー画像

【識者の眼】医療界を読み解く

244
1日1本、医療に関わるトピックを専門家の方々に紹介していただきます。
運営しているクリエイター

2021年7月の記事一覧

【識者の眼】「誕生季節は食物アレルギーの発症だけでなく難治化にも関与の可能性」楠 隆

【識者の眼】「誕生季節は食物アレルギーの発症だけでなく難治化にも関与の可能性」楠 隆

楠 隆 (龍谷大学農学部食品栄養学科小児保健栄養学研究室教授、滋賀県立小児保健医療センター小児科非常勤医師)
Web医事新報登録日: 2021-07-07

食物アレルギー発症の危険因子として、「家族歴」「皮膚バリア機能低下」「環境中の食物アレルゲン」「離乳食開始の遅れ」などが知られていますが、一般にはあまり知られていないもう一つの危険因子として「秋冬生まれ」があります。

我々もかつて京都市で

もっとみる
【識者の眼】「急増するRSウイルス感染症」片岡仁美

【識者の眼】「急増するRSウイルス感染症」片岡仁美

片岡仁美 (岡山大学病院ダイバーシティ推進センター教授、総合内科・総合診療科)
Web医事新報登録日: 2021-07-13

RSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)感染症が現在、例年にない勢いで増加している。国立感染症研究所週報「注目すべき感染症」(2021年7月2日)では、「直近の新型コロナウイルス感染症およびRSウイルス感染症の状況」として注意を喚起

もっとみる
【識者の眼】「新型コロナウイルスが子どもに与えている影響」小橋孝介

【識者の眼】「新型コロナウイルスが子どもに与えている影響」小橋孝介

小橋孝介 (松戸市立総合医療センター小児科副部長)
Web医事新報登録日: 2021-07-01

長期にわたる新型コロナウイルス感染症の流行は着実に子ども達に影響を与え続けている。2021年5月に国立成育医療研究センターコロナ×こども本部の行った第5回アンケート調査の結果が公開された。この中で、子ども達のからだの健康は第1回調査から経時的に低下傾向にあり、こころの健康も小学生では不良のまま大き

もっとみる
【識者の眼】「新型コロナウイルスの今後あり得る見通しと必要な対応」和田耕治

【識者の眼】「新型コロナウイルスの今後あり得る見通しと必要な対応」和田耕治

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
Web医事新報登録日: 2021-07-12

今後の、例えば年内にあり得る新型コロナウイルスの見通しと必要な対応について今こそ考えていきたい。

(1)成人へのワクチン接種
ワクチン接種完了者数の増加と、社会活動の再開や正常化の速度のバランスにもよるが、想定しなければならないのは、青壮年層における感染者数のこれまで以上の増加である。

高齢者

もっとみる
【識者の眼】「医師の有給休暇取得率は?」小林利彦

【識者の眼】「医師の有給休暇取得率は?」小林利彦

小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)
Web医事新報登録日: 2021-06-30

医師の時間外労働規制の実施(2024年4月)を待つことなく、2019年4月の労働基準法改正によって、医療機関においても年10日以上の有給休暇が付与された職員には本人の希望どおり5日間取得させることが義務付けられている。その背景には、日本人の有給休暇取得率が国際的にも極めて低いとい

もっとみる
【識者の眼】「外傷のFASTな超音波検査」今 明秀

【識者の眼】「外傷のFASTな超音波検査」今 明秀

今 明秀 (八戸市立市民病院院長)
Web医事新報登録日: 2021-07-01

「橋から人が落ちた」の通報でドクターカーが出動した。警察車両で封鎖された橋に近づいた八戸ドクターカーは消防車両の後ろに停車した。患者はバスケット担架に入れられて橋の下からクレーンで吊り上げられるところだった。二人の医師は、患者に接触した。顔色は悪く、体は冷たい。橈骨動脈は触れない。肺の呼吸音は左右とも問題ない。右

もっとみる
【識者の眼】「PMDAの安全対策─新型コロナワクチン接種の裏側で」藤原康弘

【識者の眼】「PMDAの安全対策─新型コロナワクチン接種の裏側で」藤原康弘

藤原康弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)
Web医事新報登録日: 2021-06-21

これまで本欄で、PMDAにおける審査、健康被害救済業務について取り上げた(「新型コロナ治療薬・治療機器・診断キットの承認審査の実務を担っているPMDAとは何者?」,「コロナ禍での医療機器・体外診断用医薬品のPMDAによる承認審査」,「日本の医薬品開発はこれからどうなる?」)。今回は

もっとみる
【識者の眼】「隔離が必要な外国人感染者の通訳」南谷かおり

【識者の眼】「隔離が必要な外国人感染者の通訳」南谷かおり

南谷かおり (りんくう総合医療センター国際診療科部長)
Web医事新報登録日: 2021-07-06

新型コロナウイルス感染症で1年延期となったオリンピックが、いよいよ7月に開催される。だが、来日したウガンダ選手団の一人が成田空港にて感染者だと判り、さらにもう一人がホストタウンであり当院が所在する泉佐野市に移動してから陽性となった。彼らはワクチンを2回摂取しており渡航前のPCR検査は陰性だった

もっとみる
【識者の眼】「居宅介護従事者等のワクチン優先接種」川越正平

【識者の眼】「居宅介護従事者等のワクチン優先接種」川越正平

川越正平 (あおぞら診療所院長)
Web医事新報登録日: 2021-06-30

国が示す優先順位に基づき、ワクチン接種が進められている。ただし、居宅介護従事者等の接種は順風満帆に進んでいるわけではない。国は2021年3月に「自宅療養中の患者等に直接接し、サービス提供等を行う意思を有する場合」という条件付きで居宅介護従事者等を優先接種に位置づけることを認め、その詳細は市町村に委ねた。重症化リスク

もっとみる
【識者の眼】「巧妙化する広告:最新技術を用いたフェイク画像の実態」大野 智

【識者の眼】「巧妙化する広告:最新技術を用いたフェイク画像の実態」大野 智

大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)
Web医事新報登録日: 2021-06-30

先日、衝撃的なニュースを目にした【1】。健康食品の広告サイト等で「お客様の声」として商品を勧めている人物の画像が、AI(人工知能)で作り出された架空のものだというのだ。実際に新聞記事に掲載されていたAIで作られたという人物の画像は、筆者が見る限り人工的なものと感じとることは全くできなかった。

もっとみる
【識者の眼】「パワハラ予防に怒りのコントロールを」山本晴義

【識者の眼】「パワハラ予防に怒りのコントロールを」山本晴義

山本晴義 (労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)
Web医事新報登録日: 2021-06-29

厚生労働省が6月に公表した2020年度労災補償状況によると、仕事の強いストレスに伴う精神障害の労災認定は前年度比99件増の608件だった。2年連続の増加で過去最多を更新しており、2020年6月から精神障害の原因として明確に認められたパワーハラスメント労災認定が急増している。

もっとみる
【識者の眼】「コロナクラスター抑制のための自己による頻回抗原検査利用への期待」岡田政久

【識者の眼】「コロナクラスター抑制のための自己による頻回抗原検査利用への期待」岡田政久

岡田政久 (東京バイオマーカー・イノベーション技術研究組合専務理事)
Web医事新報登録日: 2021-06-16

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的パンデミックの中、頻用されている遺伝子検査のPCR測定【1】に比べ、ウイルス抗原測定検査はPCRより感度が劣るという理由で普及が遅れている。抗原検査法は、ウイルス核蛋白ヌクレオカプシド抗原(rN-Ag)に対するモノクローナル抗体を

もっとみる
【識者の眼】「コロナワクチンの真実という野狐禅」早川 智

【識者の眼】「コロナワクチンの真実という野狐禅」早川 智

早川 智 (日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授)
Web医事新報登録日: 2021-06-25

あまり一般的ではないが、禅の言葉で「野狐禅」(やこぜん)というのがある。未熟な修行者が陥りがちな独り善がりの境地(魔禅)のことである。昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックではコロナウイルスやワクチンについて「真実に目覚めてしまった」人が気になる。各国政府機関の啓発活動

もっとみる
【識者の眼】「高齢者施設や医療機関でのワクチン接種が完了した方の面会について」和田耕治

【識者の眼】「高齢者施設や医療機関でのワクチン接種が完了した方の面会について」和田耕治

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
Web医事新報登録日: 2021-06-29

高齢者への新型コロナウイルスワクチン接種が進んでいます。65歳以上においては2回接種した方は全体の22.5%となりました(6月27日)。国内で用いられているワクチンでは、2回の接種を終えた後に2週間が過ぎると期待される免疫が確保され、感染しても発症する可能性を下げることができます。

高齢者施設や医

もっとみる