【識者の眼】「新型コロナウイルスの今後あり得る見通しと必要な対応」和田耕治
和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
Web医事新報登録日: 2021-07-12
今後の、例えば年内にあり得る新型コロナウイルスの見通しと必要な対応について今こそ考えていきたい。
(1)成人へのワクチン接種
ワクチン接種完了者数の増加と、社会活動の再開や正常化の速度のバランスにもよるが、想定しなければならないのは、青壮年層における感染者数のこれまで以上の増加である。
高齢者のワクチン接種が進んだことにより死亡者や重症者の人数は低下傾向が見られるようになってきたものの、65歳未満のワクチン接種はこれからである。しかしながら、感染対策への関心や対策への納得感が薄れてきている。
冬場に大きな流行が起きることを想定すると、11月末までにはできるだけ多くの成人に対してワクチン接種を進めたい。しかし、どこまで達成できるか。成人では7割程度の接種を目指したいが、5割程度で止まるのではないかという悲観的な見立てもある。
(2)インフルエンザ対策
社会活動が再開してくると、インフルエンザの流行が戻ってくる可能性もある。昨年度はインフルエンザの流行がほとんどなかったことを考えると、子供たちを含め多くの人の免疫は下がっており、これまでより大きな流行になり得る。今年の冬は新型コロナとインフルエンザの流行が混在する状況を想定しておく必要がある。
(3)医療戦略の見直し
第5波を迎えるなかで、青壮年層の感染者に効率よく地域で対応し、自宅で死亡するといったことにならないような医療リソースの配分を含めた戦略の見直しが必要である。宿泊療養とするか自宅での待機とするか、自宅での待機であれば保健所などから電話などで状態確認をし、訪問診療や看護を導入することになる。しかし、流行の波に応じて、高額の税金と人手を必要とする宿泊療養施設の確保や訪問看護の契約も容易ではない。自宅待機とすると家庭内での感染リスクが高まる。
(4)法令の見直しと市民のコンセンサス
感染症法での新型コロナウイルスの扱いについて出口戦略を、という話題が再び出ている。緊急事態宣言では「緊急」という言葉が現状に合わず、特別措置法の適用も1年半が過ぎるなかで見直しが求められる時期である。
対策のあり方の議論において、法的に求められている対策を止める、または緩めるということもありえるが、それによって感染リスクが高まることについて、どのように市民の意識とすりあわせ、コンセンサスを得ていくのかという局面を迎えようとしている。
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