【識者の眼】「高齢者施設や医療機関でのワクチン接種が完了した方の面会について」和田耕治
和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
Web医事新報登録日: 2021-06-29
高齢者への新型コロナウイルスワクチン接種が進んでいます。65歳以上においては2回接種した方は全体の22.5%となりました(6月27日)。国内で用いられているワクチンでは、2回の接種を終えた後に2週間が過ぎると期待される免疫が確保され、感染しても発症する可能性を下げることができます。
高齢者施設や医療機関では、これまで新型コロナウイルスの院内感染があり、家族などとの面会を制限してきました。しかしながら、ワクチン接種が進む中、高齢者や患者の人権と生活の質を考慮し、今後の面会などのあり方について検討が必要です。
当面の間は、高齢者や入院患者、また、面会に来る家族などにおいてはワクチン接種の有無は様々です。
高齢者や患者を守る観点から、面会において感染リスクが最も低いのは、面会者も含めた双方がワクチン接種を2回行い2週間経た状態です。こうした状態であれば、マスク装着などの基本的な感染対策はまだ念のため必要でしょうが、今までよりは面会が可能となるでしょう。ただ、こうした条件が得られるまでには地域によるワクチン接種の進捗の差もあり、もう少し時間がかかりそうです。
高齢者または患者の側が既にワクチン接種を完了しても、面会者がワクチン接種を完了していない場合にはリスクは残ります。しかしながら、そのリスクは地域の感染の状況によって異なります。面会者の生活圏の感染がある程度落ち着いている(例えばステージ2)などの場合には、基本的な感染対策や体調確認を行った上で面会などを認めることもあるでしょう。一方で、面会者の生活圏で感染が拡大している場合には同様の対応は難しいでしょう。
ワクチン接種の推進とともに、各施設でも可能な対応を検討し、一律の面会制限の継続とならないような対応が期待されます。
なお、大部屋の場合にはお互いに免疫の状況がわからないこともあり、面会場所を別に準備することが考えられます。また、ワクチン接種の有無によって面会の対応を分けるのは差別や不公平ではないかという指摘もあるかもしれませんが、それだけで思考停止にならずに、ある意味ではこの過渡期においても、今を大事にしなければいけない高齢者やその家族、患者のためにできることを考えたいものです。
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