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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2022年5月の記事一覧

管見妄語 大いなる暗愚 (藤原 正彦)

管見妄語 大いなる暗愚 (藤原 正彦)

(注:本記事は2010年に初投稿したものの再録です)

 藤原正彦氏の最近のエッセイ集です。
 週刊新潮のコラムに連載されたものの再録なので、テーマも時事問題から藤原氏の身近なできごとまで多種多彩です。

 特に、昨今の政治ネタを取り上げたコラムは、まさに藤原節が満開ですね。
 そのなかからひとつ、例の「事業仕分け」に関するくだりです。

 藤原氏の意見の開陳は、まだまだ続きます。

 科学研究を

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殿様経営の日本+皇帝経営の韓国=最強企業のつくり方 (金顕哲・野中郁次郎)

殿様経営の日本+皇帝経営の韓国=最強企業のつくり方 (金顕哲・野中郁次郎)

 近年、サムソンを代表格として「韓国企業」の躍進が大きな脚光を浴びています。同じ業界の日本企業の状況と比較すると、残念ながら、その差は歴然です。

 本書は、韓国企業の成功要因を様々な観点から検証し、具体的な実例と平易な文章で分かりやすく解説したものです。

 まずは、広く指摘されている点ですが、韓国が意図的にコントロールしている同業種内の「企業絞込み」についてです。

 有名な例をあげると、自動

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Googleの正体 (牧野 武文)

Googleの正体 (牧野 武文)

 グーグルをテーマにした本はそれこそ数多くありますが、その中でも本書は読みやすいもののひとつでしょう。
 グーグル社の内部レポートのような生々しさはありませんが、外から入手できる情報をベースにグーグルビジネスの概要を分かりやすく紹介しています。

 そういう点では、目新しい情報というより復習として役に立つという感じでしょうか。
 たとえば、最近のグーグルの動きとして注目を集めている「android

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アメリカの高校生が読んでいる世界経済の教科書 (山岡 道男・浅野 忠克)

アメリカの高校生が読んでいる世界経済の教科書 (山岡 道男・浅野 忠克)

 タイトルに惹かれて手に取った本です。アメリカの高校の教科書の翻訳物かと思っていたのですが違っていました。

 アメリカの経済教育を担う非営利団体「ジャンプスタート連合」が高校生向けに作成した経済教育の指導要領「National Standards in Personal Finance」を日本人向けにわかりやすくアレンジした入門書とのこと。早とちりをしてしまい少々ガッカリです。

 ただ、為替を

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松岡正剛の書棚―松丸本舗の挑戦 (松岡 正剛)

松岡正剛の書棚―松丸本舗の挑戦 (松岡 正剛)

 丸の内OAZO内、丸善・丸の内本店4Fに開設されているとてもユニークな書棚「松丸本舗」。
 本書は、そのプロジェクトのコンセプトリーダ松岡正剛氏自らによる「松丸本舗ガイドブック」です。

 まずは、この「松丸本舗」。松岡氏はその生い立ちについてこう語っています。

 「図書街構想」です。この発想が「電子図書街」プロジェクトの発足につながりました。そして、もうひとつリアルな場として「松丸本舗」が登

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手掘り日本史 (司馬 遼太郎)

手掘り日本史 (司馬 遼太郎)

 「竜馬がゆく」が執筆されたころの本ですから、司馬遼太郎氏の著作としては比較的初期のものです。
 会社の書棚にあったので手にとってみました。

 内容は、のべ18時間にもわたるインタビューをベースに、聞き語りという形式で整理したもの。評論家江藤文夫氏による「歴史を見る目」についての問いに対して、司馬遼太郎氏が自らの考えを語っていきます。

 まずは、メインテーマである「歴史を見る目」に言及している

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ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること (ニコラス・G・カー)

ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること (ニコラス・G・カー)

可塑的な脳 タイトルのネーミングはあまりうまいとはいえませんね。しかしながら論じられている内容はしっかりしたものだと思います。

 昨今のインターネットメディアの浸透が私たちの思考スタイルにどんな影響を及ぼしつつあるのかというテーマについて、多面的な観点から考察を進め、興味深い指摘を導いています。

 本書の前半では、脳(神経)の可塑性といった神経科学の話や、文字や本、音声や録音、さらに今日のデジ

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すきやばし次郎 鮨を語る (宇佐美 伸)

すきやばし次郎 鮨を語る (宇佐美 伸)

 江戸前鮨の超有名店「すきやばし次郎」の小野二郎さんへのインタビューを元に、小野さんの半生を紹介した本。
 80歳を越えてなお現役職人であり続ける小野さんの生き様や鮨への想いは、読んでいてとても興味深いものでした。

 全編を通して感じるのは、小野さんのいかにも自然体然とした姿勢です。

 「すきやばし次郎」をひろく一般の人々にも知らしめたミシュラン三ツ星獲得についてもこういった感じです。

 「

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歸國 (倉本 聰)

歸國 (倉本 聰)

 倉本聰氏によるテレビ特別番組『歸國』のシナリオ原作本。たまたま図書館の新着本の棚にあったので読んでみたものです。
 今年(注:2010年)の8月に放映されたとのことですが、私はほとんどテレビを見ないので気づきませんでした。

 あとがきによると、戦後10年ほど経ったころ放送されたラジオドラマ「サイパンから来た列車」という番組がベースになっているとのこと、第二次大戦の英霊たちが、短い時間の間、現代

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天地明察 (冲方 丁)

天地明察 (冲方 丁)

 あまり最近の流行小説は読まないのですが、2010年本屋大賞受賞作品ということでちょっと気になったので手にとってみました。

 時代物ではありますが、主人公は、江戸中期の天文暦学者渋川春海というあまりポピュラーとはいえない人物、さらにストーリーの軸は「改暦」という珍しいイベント。
 小説なのであらすじが分かるような内容のご紹介は控えますが、なかなか斬新な視点の作品だと思います。

 当時「改暦」は

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即答するバカ (梶原 しげる)

即答するバカ (梶原 しげる)

 著者の梶原しげるさんは文化放送のアナウンサーからフリーランスになった「しゃべりのプロ」です。最近は日本語検定審議委員もされているとのこと。

 本書は、そんな梶原さんが「日経ビジネスアソシエオンライン」に連載していたコラムをもとに加筆修正してまとめたものです。
 採り上げられている話題は様々ですが、特に私の興味を惹いたところをいくつかご紹介します。

 まずは、「毒舌」で有名な毒蝮三太夫さん。

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競争と公平感―市場経済の本当のメリット (大竹 文雄)

競争と公平感―市場経済の本当のメリット (大竹 文雄)

 大竹文雄氏の本は、「経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには」に続いてこれで2冊目です。

 労働経済学が専門で「自由競争」「市場経済」を基本とする立場の著者が、日本人の公平感・格差感覚等をいくつもの切り口から解き明かしていきます。

 まずは、「市場経済と国の役割」に関する日本人の特徴的思考スタイルを指摘します。

 日本人がこういった思考に傾く理由について、著者は、そのひとつに「日本の

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拝金 (堀江 貴文)

拝金 (堀江 貴文)

 ツイッターでとても評判がよかったので読んでみました。
 が、私にとっては、いままで読んだ本の中でも際立って・・・なものでした。

 このフレーズは、「欲しいものは金で買える」との考え方がベースにありますし、

 このくだりも、文脈からは「ニンジン=金」。「人は金で動く」という思想です。

 本書のあとがきにはこうあります。

が、私は、何一つその仕掛けには気付きませんでした。
 読んで後悔した本

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プロ野球の一流たち (二宮 清純)

プロ野球の一流たち (二宮 清純)

 いつも行っている図書館でたまたま目に付いた本です。
 著者の二宮清純氏は私と同世代なので、取り上げられている選手も馴染みがあるかと思い借りてきました。

 内容は、過去に雑誌等に掲載された文書の加筆・再録といったもので、正直一冊の本としてのまとまりはないですね。もちろん野球が大好きな方には、興味深いエピソードが語られているのでしょうが、私にはイマイチという印象でした。

 その中でも、一つだけ覚

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