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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2022年1月の記事一覧

一生モノの勉強法―京大理系人気教授の戦略とノウハウ (鎌田 浩毅)

一生モノの勉強法―京大理系人気教授の戦略とノウハウ (鎌田 浩毅)

 鎌田浩毅氏の本は、「世界がわかる理系の名著」に続いて2冊目です。

 本書は、学生や社会人を対象にした「勉強」に取り組むためのHow to本です。

 著者の鎌田氏は、「火山」が専門の科学者ですが、マスコミにも時折登場している京都大学の名物教授です。なかなかユニークな先生なのでちょっと期待していたのですが、特に新たな気づきになるようなヒントは、残念ながらありませんでした。
 それは、考えようによ

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グローバル・マインド 超一流の思考原理―日本人はなぜ正解のない問題に弱いのか (藤井 清孝)

グローバル・マインド 超一流の思考原理―日本人はなぜ正解のない問題に弱いのか (藤井 清孝)

経験からの資産 著者の藤井清孝氏は、マッキンゼーを皮切りにケイデンス、SAP、ルイ・ヴィトンといった外資系企業の日本法人の社長を歴任した経歴をもっています。以前読んだ「外資系トップの仕事力」という本にも登場していました。

 本書は、藤井氏の多彩なビジネス経験をもとに、グローバル化された経営環境における「日本の人材のあり方」に対する著者の提言をまとめたものです。

 まずは、近年の新自由主義の潮流

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李陵・山月記 (中島 敦)

李陵・山月記 (中島 敦)

 以前からずっと気になっていて読もう読もうと思っていたのですが、ようやく読んでみました。

 本書に収録されている4編は、いずれも中国の古典に材料をとったものです。高雅な筆致で、言葉を辿っていくだけでも心地よさを感じる文章でした。

 4編の中で、特にテーマとして興味深かったのが「弟子」という短編でした。師たる孔子とその弟子子路の関係を幹とし、旅を続ける師弟たちの姿を子路の目を通して描き出した物語

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12賢者と語る 和らぐ好奇心 (石黒 和義)

12賢者と語る 和らぐ好奇心 (石黒 和義)

 図書館の新刊書のコーナーで、上品な装丁だったので手に取ったものです。IT関連企業JBCCホールディングス社長の石黒和義氏と12人の多彩なジャンルの著名人との対談集です。

 興味深い話題が多くありましたが、その中からちょっと私の気を惹いたものを以下にご紹介します。

 まずは、「ネットワーク社会における基本ルール」についての神戸大学大学院経営学研究科金井壽宏教授の考えです。

 「恥」の意識の意

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GMの言い分 (ウィリアム・J・ホルスタイン)

GMの言い分 (ウィリアム・J・ホルスタイン)

 現在(注:2009年の本稿投稿時点)、経営再建中のGM(General Motors)。
 朽ちた巨木のイメージがあるGMですが、朽ち果てるまで安穏としていたわけではありません。

 本書は、経営陣・社員等へのインタビューをもとに、そのGMの今に至る道程を明らかにしていきます。彼らの口からは、従来のやり方への反省とともに、GM自らがその対策として数々の企業構造の変革にチャレンジしていたことが紹介

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薩摩スチューデント、西へ (林 望)

薩摩スチューデント、西へ (林 望)

 エッセイでは定評のある林望氏の長編小説です。

 舞台は幕末、薩英戦争敗戦後の薩摩です。攘夷の不可能を痛感した薩摩藩主島津久光は、国禁を犯して薩摩の若人をイギリス留学に旅立たせました。西欧諸国と伍して行くために決断した薩摩藩の先見です。

 ストーリーの大半は、薩摩スチューデントの往路の航海での体験描写です。
 薩摩スチューデントは、最初の寄港地香港で国際社会の現実的序列を思い知ることになります

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城山三郎と久野収の「平和論」 (佐高 信 編集)

城山三郎と久野収の「平和論」 (佐高 信 編集)

 夏は、“戦争” のことを考える季節です。

 本書は、城山三郎氏の「反戦論」、久野収氏の「非戦論」という二部構成で、両氏の主張および編集者である佐高信氏自身の主張を開陳したものです。

 城山氏は、自ら志願して海軍に入隊しました。そこで理不尽この上ない軍隊生活を経験したのです。城山氏の「反戦精神」は、まさにその実地の体験に基づく強靭な思想であるわけです。

 本書には、城山三郎氏・久野収氏の論考

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俺は、中小企業のおやじ (鈴木 修)

俺は、中小企業のおやじ (鈴木 修)

 スズキ会長兼社長の鈴木修氏による “スズキ経営の足跡” を幹にした自伝です。

 鈴木修氏は、1978年48歳で社長に就任して以来、会長職を含めると40年以上もトップをつとめている自他共に認めた?ワンマン経営者です。(注:2021年6月25日の株主総会で会長を退任)本書の表紙の写真から見ても、いかにもという風貌ですね。

 実際に鈴木氏がワンマンかどうかはともかくとして、企業の経営者は自らの責任

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スターリン ― その秘められた生涯 (J.バーナード ハットン)

スターリン ― その秘められた生涯 (J.バーナード ハットン)

 家の本棚にあったので読んでみました。
 原題は「The Private Life of Joseph Stalin」(ヨシフ・スターリンの私生活)で、そのタイトルどおりスターリンの私的生活の面を中心にその一生を紹介した著作です。

 とはいえ、私的生活に止まらず、レーニンやトロツキーといった面々との関係ややりとり、さらにはスターリンが政敵に対して下した公式には確認されていない行為等も記されていま

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今までで一番やさしい経済の教科書 (木暮 太一)

今までで一番やさしい経済の教科書 (木暮 太一)

 タイトルを見て、どんな内容か興味をもったので読んでみました。

 表層的な概説本ですが、「経済的な事象」の基本中の基本をザッと頭に入れるという目的であれば、読みやすく分りやすい本だと思います。

 ただ、説明の構成には論理的なストーリー立ては全くありません。経済的な事象を語るのに登場する「単語」の意味を、極々単純化して説明しているだけです。その点では、「超初級者向け経済基本用語集」といった方がい

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不景気でも大型受注できる営業組織のつくり方 (大西 孝明)

不景気でも大型受注できる営業組織のつくり方 (大西 孝明)

 会社関係の方から頂いたので読んでみました。

 著者の大西孝明氏は現在営業コンサルタントですが、その前は、商社や外資系IT企業で大企業相手に営業業務に携わっていたことのことです。

 本書では、その実地経験を基にした極めて実践的な営業ノウハウを具体的に開陳しています。非常に基本的なことばかりですが、大手企業を顧客とする新人営業担当者にとっては改めて意識し直すべきポイントも多く記されています。

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日本の「安心」はなぜ、消えたのか ― 社会心理学から見た現代日本の問題点 (山岸 俊男)

日本の「安心」はなぜ、消えたのか ― 社会心理学から見た現代日本の問題点 (山岸 俊男)

二つのモラル 私が学生のころは「日本人論」が華やかなりし時代でした。
 ルース・ベネディクトの「菊と刀」をはじめとして、イザヤ・ベンダサンの「日本人とユダヤ人」、中根千枝氏の「タテ社会の人間関係」、土居健郎氏の「甘えの構造」等々の本は必読書でしたね。

 本書は、社会心理学の立場から、興味深い切り口で現在の日本の問題点を論じたものです。

 著者の山岸俊男氏は、まず、「いじめ」等の日本社会の荒廃と

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白洲家の流儀 (白洲 信哉)

白洲家の流儀 (白洲 信哉)

 いつも行く図書館の新刊書の棚で、たまたま目に付いたので手にとってみました。

 著者の白洲信哉氏は、父方の祖父母が白洲次郎・正子夫妻、母方の祖父が小林秀雄氏という強烈な家系の中にいます。

 まずは、白洲正子氏の「サービス精神」に関する信哉氏の記憶です。

 もうひとつ、小林秀雄氏の「知る」ということについての箴言。

 さらに、小林秀雄氏が自らの著作について語る「奥行き」の話です。

 本書で

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雍正帝―中国の独裁君主 (宮崎 市定)

雍正帝―中国の独裁君主 (宮崎 市定)

 会社の方のお勧め本として紹介されていたので読んでみました。

 清の初期の皇帝といえば、康熙帝・乾隆帝が有名ですが、本書は、その両帝に挟まれた第五代皇帝雍正帝(1678~1735)を採り上げた著作です。

 雍正帝は、皇帝としての在位期間は短かったのですが、独創的な施策に精力的に取り組み、清朝の専制君主体制をより強固なものにしました。
 雍正帝の独裁制は、皇帝が直接人民を統治することを目指しまし

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